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転生魔王様のゆるふわ保育園経営日記  作者: 櫻木サヱ
園の外からくる波

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魔王、朝を迎える

朝の空気は、少しひんやりしていた。

園舎の鍵を開ける音が、静かな街に響く。


一番早く登園する園児よりも早く、魔王は園に来ていた。

昨夜、ふと目が覚めてしまい、そのまま家にいるのが落ち着かなかったのだ。


園庭に出て、深く息を吸う。

夜の名残と、朝の気配が混ざった匂い。


「今日も、始まるな」


誰に言うでもなく、そう呟く。


砂場を整え、滑り台のネジを確認し、ブランコの鎖に異常がないか確かめる。

どれも、かつての魔王なら考えもしなかった行為だ。


だが今は、それが当然だった。


最初の園児がやってくる。


「えんちょー!おはよー!」


小さな声が、空気を一気に明るくする。


「おはよう」


その一言だけで、園が生き返る気がした。


次々と登園してくる園児たち。

昨日の当番の話、砂山の話、給食の話。

昨日の出来事が、もう思い出になっている。


「えんちょー、きょうもとうばん?」

「今日は見守りだ」


その返事に、少し残念そうな顔と、安心した顔が混ざる。


朝の会が始まり、歌が響く。

音程は合っていないが、それでいい。


魔王は、園児たちの後ろに立ち、その様子を見守った。


かつては、世界の頂点に立っていた。

今は、小さな背中が並ぶこの場所が、自分の世界だ。


それでいい。

いや、それがいい。


歌が終わり、園児たちが遊び始める。


魔王は、園庭の隅でそれを眺めながら、静かに思う。


ここは戦場じゃない。

征服する場所でもない。


守る場所だ。


そう決めた自分を、少しだけ誇らしく思いながら、魔王は今日も園長として一日を始めた。

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