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転生魔王様のゆるふわ保育園経営日記  作者: 櫻木サヱ
夏祭り

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夏祭り本番

日が沈み、空がゆっくりと藍色に染まるころ。

ゆるふわ保育園の夏祭りは、ついに本番を迎えた。


園庭には提灯の明かりが灯り、昼間とはまるで別の場所のようだ。

屋台の前には園児たちと保護者が集まり、笑い声と話し声が重なっていく。


「お祭りはじまるよー!」


その一声で、空気が一気に弾けた。


ヨーヨー釣りには長い列ができ、射的では真剣な顔の園児たちが的を狙っている。

わなげの前では、なぜか応援団が自然発生していた。


マオは園庭を歩きながら、視線を絶やさず巡らせる。

笑顔、足元、手元、全部を見る。

忙しい。だが、不思議と苦ではなかった。


「園長ー!取れた!」

「見て見てー!」


声をかけられるたびに立ち止まり、うなずき、笑う。

その合間に、転びそうな子を支え、迷っている子を屋台へ案内する。


だが、本番はやはり甘くなかった。


提灯の一本が風に揺れ、少し低く下がる。

同時に、射的コーナーで的が倒れすぎて混乱が起きる。

さらに、わなげでは輪が一斉になくなるという謎の事態。


「園長ー!」

あちこちから呼ばれ、マオは一瞬で走り出す。


提灯を直し、的を立て直し、輪を回収する。

走って、しゃがんで、また走る。

魔王としての力を使えば一瞬だが、今日は使わない。


その途中、ひとりの園児が立ち止まっているのが目に入った。

音と光に圧倒され、少し不安そうな顔をしている。


マオはすぐにしゃがみ、目線を合わせる。

「どうした?」


小さく首を振るその子の手を、そっと握る。

「大丈夫だ。ここにいる」


少しして、その子はゆっくりとうなずき、再び笑顔を取り戻した。


夜が深まるにつれ、祭りは最高潮に達する。

笑い声、拍手、足音。

園庭は、あたたかな混沌に包まれていた。


ふと見上げると、提灯の光が風に揺れている。

あの夜、うっかり浮かせてしまった光景が脳裏をよぎる。


「……今は、これでいい」


マオは静かにそう思った。


祭りの終わりが近づき、最後のアナウンスが流れる。

園児たちは名残惜しそうに屋台を振り返り、保護者たちは微笑みながら手を引く。


片付けが始まり、園庭に少しずつ静けさが戻る。

マオは立ち止まり、深く息をついた。


疲れている。

だが、胸の奥は満たされていた。


「……成功、だな」


魔王はそう呟き、夜空を見上げる。

ゆるふわ保育園の夏祭りは、確かに終わった。


だが、この場所での物語は、まだ続いていく。


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