サクラナの弟子
「ユリア君!」
名前を呼ばれたユリアは、自身の首を掴んでいた女竜騎士が何かに弾かれるのと、そっと抱えられて自由落下が止まった。
自身の身体を両手で抱えている存在を目で確認したユリアは、こんな状況にも関わらず、顔が熱くなったのを感じた。
「ガロウ校長!?」
ユリアをお姫様抱っこしていたのは、エルフでありカエルム竜騎士学校の校長である、ガロウだった。
「大丈夫かい?」
「は、はいっ! どうしてここに?」
「部屋でうたた寝していたら、ハク君の咆哮が聞こえたから、急いで来たんだ。 間に合って良かった」
女竜騎士を見るガロウの眼は、普段の眠たそうな雰囲気を全く感じさせないほど、けわしいものだった。
その女竜騎士は弾かれた後、灰色のドラゴンに回収されていた。
灰色のドラゴンと戦っていたハクも、マグニフィカトの元へ戻ってきた。
〔ごめんなさい、ユリア……私、相棒なのに……〕
〔いいのよ、別に〕
〔来るぞ〕
謝り合う二人にマグニフィカトが声をかける。
「ハク君、ユリア君を!」
ガロウは、抱えていたユリアをハクに向かって放り投げた。
空中に投げられたユリアをハクが前脚で器用に掴む。
それを見届けることなく、ガロウは剣を呼び出し、女竜騎士と戦いを始めた。
マグニフィカトと灰色のドラゴンが何度も激しくぶつかり合う中、二人は高速で剣を交えていた。
両手で一本の剣を使うガロウに対して、女竜騎士は二本の短剣と袖の中からでる無数のナイフを使っていた。
女竜騎士が一瞬の間に、短剣を手放し袖から出したナイフを投擲して、再び短剣を掴み剣撃を繰り出す。
ガロウは首に向かって投げられたナイフを、エルフと竜騎士の超人的な速度で回避する。
しかし、ナイフが通過した瞬間、女竜騎士が手を動かすと、ガロウの左肩から血が噴き出した。
それでも冷静に相手を見ていたガロウは、ナイフと女竜騎士の袖の間に光る線があることに気づいた。
(ワイヤーか……やはり、この人は……)
ガロウは女竜騎士の正体の中に、ある人物の姿があった。
そして、先ほどのワイヤーによってそれが確信に変わった。
ガロウの下で、マグニフィカトの蹴りが灰色のドラゴンの胸を切り裂いた。
傷が深いようで、血がぼたぼたと落ちていく。
さすがに危険と感じたのか、灰色のドラゴンが踵を返して、逃げ出した。
〔逃がさんぞ、阿呆め〕
〔追わなくていいよ、マグニ〕
灰色のドラゴンを追撃しようしたマグニフィカトだったがガロウに止められて、渋々諦めた。
「校長、大丈夫ですか!?」
「うん、大丈夫」
「あの竜騎士は誰だったんでしょうか……」
「彼女は——」
ガロウは小さくなった灰色のドラゴンの姿を遠く見つめる。
「——アルマ・ミーレス。 ティタン担当の竜騎士で、サクラナ様……我々竜騎士の長の直属の部下で、弟子だよ」




