荒療治
翌朝、俺は首から下の火傷の痛みに涙目になりながら起きた。
昨日、父さんに連れて言ってもらった温泉は、とても広くて、熱かった。
あまりの広さに浮かれてしまった俺は、早速とばかりに温泉へと飛び込み、全身を焼かれて叫んだ。
火傷の程度は軽いものの、範囲が広すぎる。
椅子に座っているだけで痛みを感じる。
寝返りになんて以ての外だ。
人の不幸を大笑いする父さんに爪で掴まれて館まで運ばれた俺は、早速母さんに治療してもらおうとした所、鼻で笑われた。 温泉が激熱なこと絶対知ってただろ。
結局、魔法治療はしてもらえず、薬を塗られて包帯を巻かれた。 何故か「明日治すから我慢しろ」と言われた。
意味がわからん。
しかも、フロースに大笑いされたし。
これはフロースも知っていたやつだな。
どうにかこうにか朝食を食べた後、レインとアティア、ミセリアは父さんに連れられて山の方に飛んでいった。
俺とフロースは母さんと一緒に館の一部屋にいる。
部屋の壁には黒板があり、勉強用の机もある。 教室のようだ。 それなりの数があるが今は俺とフロースの二人分しか使っていない。
奥の部屋に入った母さんは、赤い液体を持って戻って来た。
薄っすらと漂って来た臭いに、それがなんなのか理解した。
ガンッと、俺の目の前に赤い液体の入った容器が置かれる。
「飲め」
「……これって、父さんの血だよね?」
「そうだが? その程度の火傷なら、飲んだらすぐ治るぞ」
「いや、そうだけれども! 普通に治そうと思わないの?」
「あのなぁ、これもお前の能力を上げるための練習なんだからな。 ほら、さっさと飲め。 さきに進まん」
「クロエ、早く飲んでくれない? 私も困るんだけど」
フロースも急かしてくる。
俺は渋々、父さんの血を一気に飲み干した。
途端に全身が痒くなってくる。
いつもなら一部だけの痒みも、全身となると耐え難い。
どうにか気合いで痒みを抑え込むと。袖をまくって包帯を解いていく。
赤く腫れていた皮膚は、新しい皮膚に覆われてすっかり綺麗になっていた。
「しっかりと竜の血をコントロールできているようだな」
「それなりに使ってるからね。 手足を竜化することならできるよ」
「それだけではダメだ。 お前には夏休みの間に竜化を完璧にしてもらう」
てことは百パーセント、ドラゴンになれと?
「それって戻れるの?」
俺の半竜化は体内のファスタルとドラゴンの血のバランスを偏らせることで可能な技だ。 その偏りを百パーセントにするということは片側の特性が無くなるということではないのか?
「それなら問題無い。 なにもファスタルの細胞は血だけじゃないからな。 身体のどこかには必ず血が残る」
「なら、いいけど」
「そういうことで……」
母さんが教卓の下から大量の容器を取り出す。 その全てに赤い液体が入っている。
「……それ全部飲めと?」
「安心しろ。 保存状態は完璧だ。 この時のために用意したものだからな。 残すなよ?」
「ういっす……」




