シルバード
母さんを先頭に白い館の中を歩いていく。
途中、何度も人化をしたドラゴンとすれ違った。
レイン達と違ってドレスアーマーではなく、使用人の服装をしているあたり、本当にここで働いているのだろう。
「まぁ、少し遅いが昼食にしようか」
そう言って母さんに案内されたのは無駄に大きい食卓のある部屋だった。
俺が不思議に思っていると、
「ここでは、使用人も一緒に食事をするんだよ。 そっちの方が全体的に効率がいい。 ちなみにシルバードの提案だからな」
「ふーん、へぇ」
ドラゴン嫌いの母さんが素直に意見を取り入れる所で、母さんと父さんの仲の良さが見て取れるな。
俺たちが席につくと、丁度のタイミングで食事が運ばれてきた。
食事を運んできた使用人のドラゴンを見た時、その体に違和感を感じた。
メイドの格好をしたドラゴンの左右の腕の色が違う。
右側は人化をした時の普通の肌色だが、左側だけはどこか作り物のような自然ではない色をしていた。
他の使用人もよく見てみれば、必ず、身体のどこかに違和感を感じさせた。
だが、動き自体は特におかしくはない。
どうしようもなく気になった俺は、心の中で母さんに聞くことにした。
〔母さん、彼らの身体はどうなってるの? 何かがおかしいんだ〕
〔……言わなくても、気づいたか。 お前の感覚は正しいぞ。 あいつらは全員、何かが欠けているんだ。 生まれながらに片腕のない者、戦いの中で脚を失った者。 あいつらのほとんどが親に捨てられたか、先立たれた孤独なドラゴン。 あいつらに無いものを私とシルバードは与えた。 自由と居場所をな。 お前が感じた違和感は、あいつらに与えた義部のことだろうな〕
〔あれ? それなら人化を解いた時に、腕とかが取れてしまうんだじゃないの?〕
〔さっき言ったろ。 あいつらは実験台だって。 あいつらが付けているのは特殊な物なんだ。 シルバードの鱗とか髭を材料に、人の姿とドラゴンの姿のどちらでも使える義部を作ってるんだよ。 だいたいは完成してるから、あいつらも普段から付けているが、突然機能しなくなったりすることがあるから侮れない。 ちなみに動力源は装着者の魔力だな〕
〔それは母さんの魔法で治せないの?〕
〔治すのと生やすのは違うからな? そこに無いものはどうしようもない。 千切れた腕を繋げることならすぐにできるがな〕
魔法も万能じゃないってことか。
全ての料理が運ばれると、使用人ドラゴンたちが余った席に座る。
無駄に大きい食卓を囲むドラゴン達を見ていると、端の席と母さんの隣が空いていることに気づいた。
突然立ち上がったメイドさんが母さんに耳打ちする。
「はぁー……」
それを聞いた母さんがため息を吐く。
「また外で寝てたのか……風邪引くだろうが……」
母さんが何か言っている間に、使用人ドラゴンが部屋の大窓を開けていた。
「来たな」
母さんがポツリと言った瞬間、外から高速で飛んで来た銀色の何かが、開いた窓から飛び込んで来た。
「やばい!」
俺は飛来した物が食卓に突っ込むと思った。
しかし、それはいつの間にか移動していた母さんの蹴りによって、進路を壁に変更されていた。
壁にぶつかったそれは、背中に翼のある人型だった。
壁の破片をパラパラと落としながらのっそりと立ち上がったそいつは、俺のよく知っている人だった。
「久しぶり、父さん」
「おかえり、クロエ。 ただいま、サクラナ」




