笑顔の涙
「フフフフ……」
ここまで話した母さんは悲しそうに笑った。
「目が覚めてみれば、バグノートの姿は無く、私は強烈な喉の渇きを感じた。 水を求めて破壊された村の中を彷徨った私は、水瓶を見つけたんだ。 そして、水を飲もうとした時には……」
母さんは自分の赤い髪を掴んで見せた。
「こうなっていたわけだ。元々白かった髪は血を吸って真紅に染まってしまった。 昔は髪をむしり取ったりしたけど、気づけば元どおり。 このままなんだ」
「母さん……俺……」
俺の声に母さんはハッとして、抱きついて来た。
その力はいつもと違って、優しかった。
「ごめんなさい、ダメな母親で。 自分の私怨にあなたとシルバードを巻き込んでしまって。 それでも、もう止まることはできない。 奴の子にトドメをさして、バグノート自体を殺して——」
「いや、そうじゃなくて。 俺って人間じゃないんだ。 いやまぁ、半竜ってことに変わりはないんだけどさ」
俺の言葉に母さんはキョトンとした顔を見せ、笑い出した。
「ごめんね! クロちゃん! そうだね、人間じゃないよ。 でも、ファスタルってほとんど人間だし、いいよね? ウフフ〜」
「うん、そうだよね! ファスタルってほとんど人間だよね!」
「「あははは〜」」
「お楽しみのところ悪りぃがね。 そろそろ話をすすめーや」
ローザさんに声をかけられて俺たちは笑うのをやめる。
ちょっと、恥ずかしかったな。
笑いすぎて、涙が出て来たや。
「そうだな。 私はクロエたちを迎えに来たんだ」
「今すぐ、行くんかぁ?」
「特に用事も無いし、そうしようかと思ってる。 お前の孫も連れて行く予定だが良いか?」
母さんは後ろで話を聞いていたフロースを指差して問いかける。
「かまわんかまわん。 みっちりしごいてくれやあ」
「任せると良い。 夏休みが終わるまでにお前をこえさせてやるさ」
俺はフロースの肩に手を置いて、真剣な顔で見る。
「……なぁ、フロース」
「な、なによ?」
「死ぬなよ」
「え、は!? 意味わからないわよ!」
母さんにしごかれるということは、ボロボロにされること確実だろう。
まぁ、死にさえしなければ母さんが治してくれるけど。




