サクラナメモリー 四
「待つんだ!」
突如走りだしたサクラナにアムが声をかける。
しかし、サクラナはそれで止まることはなく、森を駆けていく。
抱えた薬草を投げたしたアムは、サクラナを止めるため追いかける。
だが、アムはサクラナに追いつくことはできなかった。 それどころか、どんどんと二人の間は広がっていく。
そこでアムは追いかけるのを諦めて、子供たちの所に行くことにした。
アムを振り切ったサクラナは森の外にでた瞬間、目に入った光景に絶句した。
朝見たはずの白い町は、破壊尽くされ、炎に包まれていた。
その中心にいるのは、小高い丘ほどもある巨大な黒い竜だった。
サクラナは黒い竜の周りに動く、白い物が複数あることに気づいた。
「ママ……パパ……!」
サクラナにはそれが白いマントを羽織った両親に見えた。
一縷の望みにすがり、サクラナは再び走りだした。
村の中に入ると、動いていた白い物の正体がわかった。
それは、サクラナの両親を含む、七人の調整者だった。
サクラナは調整者のことをあまり知らない。 彼らが、種族間の戦争を終結させるための、ファスタル最強の戦士だということしか。
それが、たった一頭のドラゴンに苦戦をしいている。
はじめ二十人だった調整者はすでに半分以上が殺されていた。
それだけではなかった。
炎に包まれた白い建物には、赤い鮮血がべったりと張り付き、その下には物言わぬ塊がいくつも転がっている。
呆然とするサクラナの目の前で、ドラゴンの一撃に大量のガレキが嵐のように飛ぶ。
それに巻き込まれた調整者が三人、全身にガレキの雨を受けてこと切れる。
幸いに、サクラナの両親は生きていた。
「ママ! パパ!」
サクラナの声に振り向いた両親は、娘の姿を見つけ、動揺した。
このまま戦えば娘を巻き込んでしまう。 しかし、戦わなければ、ファスタルは滅んでしまうだろう。
考えたのは一瞬だった。
両親はお互いに頷きあうと、別々の方向を見た。
父親はドラゴンに、母親はサクラナに。
「ごめんなさい」
母親は一言呟くと、娘のもとに走る。
父親は振り向くこともなく、ドラゴンへと攻撃をする。 家族を守るために。
それを見ていた他の調整者は何も言わなかった。
そうしなければ種族が滅ぶとわかっているからだ。
サクラナの元についた母親は、サクラナの手を握りしめ、走りだした。
「ママ? パパはどうしたの?」
サクラナの問いに母親は顔を背けるしかなかった。
「ごめんね、サクラナ。 今は、こうするしかないの」
娘には、母親の頰に涙が伝ったように見えた。




