サクラナメモリー 三
森に入って二時間。 サクラナは子供達と離れた場所で一人、黙々と薬草を摘んでいた。 すでに両手は様々な薬草でいっぱいになっている。
切り傷用、毒消し用、風邪用……父親に教えてもらった種類のほとんどだ。
「あれ……火傷用の薬草が……」
サクラナは両手の中に火傷用の薬草が入っていないことに気づいた。
「あれは、日当たりの良い所にあるんだよね……」
先ほどからサクラナが採っていたのは、日陰にあるものばかりだった。
日当目指して森を進むサクラナに、子供達と遊んでいたアムが気づいて、追いかけてくる。
「どこに行くんだい? その両手じゃ歩きづらいだろう? 半分持つよ」
自分の両手を見つめて少し考えたサクラナは、素直に手伝って貰うことにした。 両手が塞がっていては、新しく薬草を摘むことができないと判断したからだ。
「お願いします……」
「うん、任せて」
片手の薬草を渡したサクラナは森の奥へと進んでいく。 その後ろを楽しそうな笑顔で、アムがついていく。
ふらふらと森を歩いていると、木々の隙間から陽の光が差し込む場所を見つけた。
そこには以前見たことのある赤い薬草が生い茂っていた。
サクラナは早速とばかりに、薬草を摘み始める。
アムは倒木に座ってニコニコと空を見つめていた。
サクラナが薬草を摘んでいると、周りが暗くなったのを感じた。
空を見上げれば、空が動いていた。
しかし、動いているのは極一部。 それは何かの形をなぞっている。
何がなんだかわからなかったサクラナはアムの方を見た。 そして、驚く。
いつも笑顔のアムが、険しい顔で空を睨んでいた。
「ドラゴン……」
アムの口から漏れた言葉にサクラナはそれの正体をしった。
空と同じ腹の色をし、漆黒の鎧を纏った破壊の権化がそこにはいた。
ドラゴンはサクラナ達に気づくことも無く、どこかに飛んでいく。
その鉤爪には、赤い染みがついた、なんとなく見覚えのある白い物が引っかかっていた。
ドラゴンが飛んでいく方角に目をやったサクラナは、足が震えるのを感じた。
何故なら、その方角は村がある方だからだ。
「みんなに知らせないと……!」
サクラナは薬草を放り出し、全速力で走り出した。
悲劇の始まり




