悪竜バグノート
「あの、なんの実験をしているんですか? あと幼竜はなんですか?」
俺の質問にローザさんは目を見開いて驚く。
「おめー、サクラナになんも聞いてないん?」
「何故、母さん? 特に思い当たることはありませんが……」
「もとぁ、サクラナから依頼されてんだぁ。 その様子じゃあなんもわかっとらんけぇ。 幼竜はなぁ、二百年前の戦いで儂とサクラナ、シルバードそして大勢のドラゴンによって倒された悪竜バグノートの子供だぁ」
「悪竜バグノート……?」
一度も聞いたことのない名が出てきた。
そもそも、二百年前の戦いは世間的には母さんがドラゴンを殺戮して、最後には父さんと相討ちになったことになっている。
俺が存在しているように、実際は相討ちではなく駆け落ちのようなものだが、ドラゴンが大勢死んでしまったのは事実。
ローザさんの話からすると、二百年前の真実は母さんと父さんが共闘して悪竜バグノートを倒し、そこに参戦したドラゴンが多数死んだということになる。
——母さんは真実を隠すために汚名を被ったのか?
「まーぁ、詳しい話は本人に直接聞くといい」
そういった直後、ローザさんは手に持った金具を、大きなタンスに向かって投げつけた。
金具はタンスの扉に当たり、その反動で扉がゆっくりと開いた。
「何故、バレた? 真夜中にこっそり侵入したんだが」
「母さん!?」
タンスの中には腕組みをして首を傾げる母さんがいた。
作業着をかき分けもそもそとタンスを出た母さんは、気づくと目の前に来て抱きついて来た。
「クロちゃーん! 迎えにきたよ」
「ちょっと、母さん離して……苦しい……」
「あーん、ごめんねクロちゃん」
「サクラナ、話してやりやぁ。 昔話をなぁ」
俺を離した母さんはローザさんと面と向かって睨み合っていた。
まぁ、身長差がありすぎて母さんが見下ろして、ローザさんが見上げているのだが。
「ローザ……お前が余計なことを言ったせいでクロエに秘密がバレたじゃないか。 どうしてくれんだ?」
「そもそも隠す意味がねーべ。 時期が来たらバレるってのに。 第一、クロエがこそが一番幼竜の始末に向いてるだろうが」
「それはそうだが、そうしたく無いからお前に任せたんだろ? 人間以外には攻撃できない、かと言って人間だと力不足でトドメを刺さない。 人間で一番可能性があるのがローザ、お前なんだよ」
「そうはいってかれこれ百五十年はやってんのに一向に死なんぞぇ? 復活前にトドメを刺さないと厄介なことにならぁ」
……話についていけない。
「母さん! 俺にも説明してくれよ!」
「あのっ、私もサクラナさんの話を聞きたいです!」
フロースは困惑気味にローザさんとツバキさんを交互に見つめていた。
「ほーれ、お前の子供があぁ、言っとりゃあ仕方なけ? 諦めて、吐いちまった方がらくだぁ?」
母さんは俺を見て一つため息をつくと、幼竜に向けてけっして小さくはないハンマーを投げた。
しかしそれは、母さんが絶対しないようなミスによって振りかぶりったところで天井に飛んで行った。
「いいよ、話そう。 全てを。 私の昔話を」
しばらくサクラナの過去編になります




