面会
バトラーさんの案内でアマデウス邸の中を進んで行くと、応接室らしき場所で止まった。
バトラーさんが扉を三回ノックして、
「ツバキ様、アスター様、お嬢様とお学友の方々をお連れしました」
と確認する。
「どうぞ」
すぐに女性の声で返事が来る。
「失礼します」
バトラーさんが扉を開け、それに続いて部屋の中へと入る。
部屋の中では、大量の紙束に囲まれながらせっせと机に向かっている男性と、ソファーに座って優雅にティータイム中の女性がいた。
男性の方は細身で茶髪の知的で優しそうな雰囲気で、女性の方も端整な顔立ちのスタイルの良い美人で、目つきなどはフロースに似ている。
真っ直ぐ降ろされた赤い長髪は先端から半分ほどが綺麗に白くなっていた——ちょうどフロースの髪のように。
遺伝なのか?
ティーカップを置いた女性——多分ツバキさんが俺たちを見る。
「お帰りなさい、フロース」
「だだいま、お母様。 お父様は何をしているの?」
「あの人はほっといて良いのよ。 あなたが帰って来ることに浮かれて、仕事を放置した罰です。 それよりもそちらの方々を紹介してくださいな」
ツバキさんは先程から、何故か俺だけを見定めるように見ていた。
背中がむず痒くなってくるからやめて欲しい。
「そうよね! まずは、私の相棒になってくれたミセリア」
「はじめまして、ミセリアです! よろしくね!」
「ええ、よろしくお願いするわ。 相棒ということはあなたはドラゴンなのかしら?」
「そうですよー」
「よろしかったら後で、人化を解いた姿を見せて貰っても良いかしら? 王都にも竜騎士はいるけど中々近くでじっくり見る機会が無いのよ」
ドラゴンが嫌いなのかと思ったら意外と好印象だな。
ドラゴンが嫌いなのはフロースのお祖母さんなのか?
「良いよー」
「ありがとう、ミセリアさん。 それで残りの方々は?」
ミセリアと話を終えたツバキさんが俺たちを手で示す。
「同じ班のクロエ、それと相棒のアティアとレインちゃんです」
「どうも、クロエ・ドラグーンです」
「はじめまして、アミキティアです」
「レイン・インペリアルです。 よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。 あなたが有名なクロエさんね。 ところでフロース、一つ聞いても良いかしら?」
「なんですか?」
「クロエさんとはお付き合いしていて?」
「な、何言ってんの!?」
ほんと、何言ってんの?
俺としてはそんな気微塵も無いが、フロースがあたふたしているせいで変な誤解を招きそうだ。
「フロースは誰にもやらんぞ!」
「あなたは黙ってて」
「はい……」
アスターさん、完全に尻に敷かれてるな。
「クロエさんはどうです? 娘、貰ってくれません?」
「ちょっと、お母様! そんなの、絶対ありえないから! 勝手に縁談みたいにしないで!」
「あら、そうなの?」
首を傾げる動作一つとっても美人だなぁ。 母さんが一番だけども。
そろそろ、助け舟を出すべきかね。
「ええと、ツバキさん。 俺は誰とも結婚するつもりはありませよ。 少なくとも両親の願いが叶うまでは」
「あら、そうなの? サクラナさんのためなら仕方ないわね。 その気になったら教えてね」
「ははは……」
「もう、お母様……!」
怖えよ……アマデウス家の女性、怖いよ。
※アマデウス家は一般家庭です




