ゴートおじさん
アティアとミセリアは街への入り口である門の関所の前に降り立った。
俺たちが背から降りると、人化で人の姿へと変わる。
関所まで歩いて行くと、窓から兵士の手が出てきた。
「身分を証明できるものはありますか?」
「これでいいですか?」
俺とフロースはカエルム竜騎士学校の生徒手帳を取り出して、兵士に渡す。
この生徒手帳は竜騎士とドラゴンのペアに一つ渡されるもので、竜騎士見習いもとい学生である証明書になっている。
生徒手帳を持った兵士は関所の奥に行くと、しばらくして戻ってきた。
「問題無いですね。 通って良いですよ」
「ありがとうございます」
兵士に礼を言って生徒手帳を受け取ると、門をくぐって王都に入る。
「おお、すごい人の量だ。 学校より広いかもな」
通りを埋め尽くす大勢の人や鮮やかな建物が目に入ってきた。
なんか、テンション上がってきた。
あっ、あそこは何の店だろうか?
「はいはい、勝手にどこか行かないの。 とりあえず家に行く前に情報集めましょう」
「わかった、わかったから耳を引っ張らないでくれ」
「仕方ないわねぇ。 昔、私が通ってたお店があるから、そこに行くわよ」
あぁ、俺の初王都が……
◇◆◇◆◇◆◇
人混みをかき分けながら、細い裏道をくねくねと進んで行くと、突然道がひらけてさっきとは違う大通りが現れた。
「ここはなんでしょうか?」
アティアが首を傾げるて、フロースに聞く。
「ここは西街。 王都は東西南北に四本の大通りが通ってて、それぞれ構えてる店が違うの。 さっきまでいたのが北街で、門があって商人の往来が多いから主に食料関係の店があるの。 ここ西街は魔法関係かな」
「ほぉー、良く知ってるな」
「当然よ。 ここに住んでたんだもん」
「そうだな……」
「なによ、しんみりしちゃって」
俺は十歳から一人暮らしで、レインは竜王に学校に預けられたり、ミセリアは親に捨てられてるし。
まともなのはアティアだけなんだよなぁ。
誰も王都みたいな所に普通に住んで無いから。
この、お嬢様めっ!
まぁ、どうでも良いけどさ。
「ほらほら考え事は終わり。 着いたわよ」
フロースが指差したのはいかにも老舗といった感じの古い建物だった。
名前は…………看板の字がカスカスになってるよ。
「さぁ、入るわよ」
「おう」
フロースが木の扉を押し開けると、埃っぽい紙の匂いが漂って来た。
店の中は意外に明るく、左右の壁に本棚が並び、奥にカウンターと扉があった。
「ゴートおじさんいますかー? フロースでーす」
フロースが声をかけてしばらくすると、奥の部屋でガタガタ、バタバタと何かを倒したりするような音が聞こえて来た。
ほどなくして、奥の扉が開いて一人の男が現れた。
肩幅の広いガッチリとした体格に、白髪混じりの赤髪をオールバックにした四十代の男だった。
「フロースちゃんじゃねーか! どうしたんだ? こんな寂れた所に!」
五月蝿い人だった!
「ゴートおじさん、お久しぶりです。 今日は学校の休みで、家に帰る前に王都の事が聞きたかったの」
「なるほどな、そういう事ならゆっくりしてきな。 で、そっちの四人は誰なんだ?」
「あたしはフロースの相棒のミセリアだよ! よろしくね、ゴートおじさん」
ミセリアがフロースに抱きつきながらウィンクする。
「てことは、嬢ちゃんはドラゴンか! フロースちゃんも、ついに竜騎士ってことか!」
「まだ、学生ですよ」
「些細なことだ! 後の三人は学校の友達か?」
「友達と言うか、仲間ですね」
いちいち声がでかいぞこの人。
「どうも、クロエ・ドラグーンです」
「よろしくな、クロエ!」
俺はゴートさんと握手をする。
力強いぞこの人。
まぁ、見た目通りか。
「初めまして、アミキティアと申します。 クロエの相棒をしております」
「レイン・エンペリアルです。 同じく、クロエの相棒です」
レインはゴートさんの迫力に押されたのか、アティアの背中に隠れていた。 可愛い。
「エンペリアル……どっかで聞いた事があるな。 ドラグーンも耳に覚えが……」
この人鋭いぞ!
腕を組んで深く考えていたゴートさんが突然、顔を上げた。
「クロエはもしかして竜帝と竜鬼の息子か! 嬢ちゃんは竜王の娘だな!」
なんで、そのことを知ってるんだ?
俺は怪訝な目をゴートさんに向けた。
ゴートおじさんはゴート族から名前をつけさせて頂きました




