「夏休みって最高ね」
夏休みスタート!(冬だけど)
カエルム竜騎士学校の上空に大量のドラゴンが飛んでいた。 その数、ざっと四百。 戦争を起こせるレベルの戦力だ。
しかし、無差別に飛んでいるわけではない。
一列に並んでいるのだ。 そう、竜歩道にだ。
管理人に許可を得た竜騎士から順次、学校の外へと飛んでいく。 家に帰っているのだ。
カエルム竜騎士学校は全寮制の学校である。
では、何故か——
「夏休みって最高ね」
ミセリアの背に乗っているフロースが嬉しそうに伸びをする。
——そう、夏休みだ!
年に一度、恐ろしく厳しい教員の下から解放され、憩いの我が家に帰還することが許される長期休暇!
あぁ、素晴らしい。
だと言うのに……
「いつまで待てば良いんだよ」
俺たちが並んでいるのは列の後方、もとい最後尾だった。
これも全部、奴等のせいだ。
せっかく意気揚々と学校を出ようとしたのに、何故か拝まれた。
それも連続で。
好き勝手に拝んだかと思うと、嬉しそうにドラゴンに乗って行くのだ。
同じクラスの生徒だけならまだしも、上級生まで来るとは……気づけば最後尾になっていたと。
嬉しくないと言えば嘘になるがさすがにウザかったな。
とまぁ、そんな感じで炎天下で待っているわけだ。
あまりの暑さに全身の力を抜いてアティアの首にもたれかかる。
〔暑苦しいので離れてください〕
「良いじゃん。 なんとなくドラゴンの鱗って冷んやりしてるんだよね」
「えいっ!」
「どらっ!?」
可愛らしい声と共に頭上から小さい氷が落ちて来た。
「どぉ? 涼しくなった?」
ぐるっと首を回して後ろを見る。
そこでは夏用の涼しげなスカイブルーのドレスアーマーを着たレインが楽しそうに笑っていた。
レインがやったなら仕方ないよな。 うん。
「ありがとう、レイン。 めっちゃ涼しいよ」
「えへへ〜」
「レインちゃん、嬉しそうね。 何かあった?」
「クロエのお家に行けるんだよ? 竜帝様がいるんだよ!? 凄いことだよ!!」
「そ、そうね。 私もサクラナさんに会えるから嬉しい」
レインのテンションにフロースが引いていた。
ドラゴンにとって強さは何よりも優先されることなんだよなぁ……よりによってレインが父さんに憧れているとは。
「ねえ、クロエ。 竜帝ってじっさいどんなドラゴンなの?」
〔私もそれ、きになる〜〕
〔興味深いですね。 話してください〕
「そんなに気になる?」
「すっごい気になるよぉ〜! 教えて、クロエ!」
「そうだなぁ……父さんは——」
銀色の綺麗な鱗で、母さんと一緒に敵をぶっ飛ばしてなぁ。 家では……朝はゴロゴロして、昼は近くの小川で尻尾を使って釣りをして、夜は酒を樽飲みしてたなぁ……
くっそ! ただのおっさんじゃないか。
確か、干し肉をバリバリ食ってたなぁ。
爪で畑を耕していたような……
「やっぱ、会うまでの秘密な。 その方が良い」
「ええ〜、仕方ないなぁー」
レインは怒っているようで、顔は嬉しそうだった。
絶対幻滅するぞ、これ。




