小さな声援
とりあえず宿舎まで移動しようとした時、遠くで戦っているのが見えた。
おそらく四組と五組だと思う。
空中での激しいぶつかり合いは拮抗しているた。
時々発光して見えるのは魔法の光だろう。
なんども攻防を続けるうちに一匹のドラゴンがやられて、ブレスレットが壊れて消えていった。
ドラゴンが消えたと言うことはそこに乗っていた騎士の方は足場を失うというわけだ。
悲鳴とともに落ちていった生徒は地面にぶつかる瞬間ブレスレットが壊れていなくなった。
これが実戦だったら確実に死んでいた。 あれだけの高さから落ちたし、心に傷を負っていてもおかしくない。
その後もしばらく見ていたがお互い二組ずつやられたところで離れていった。
あの状態で他の組に襲われたらひとたまりもないだろう。 こちらとしては勝手に潰しあってくれるのが一番ありがたい。
太陽が高く昇り昼前の時刻になって、それぞれの宿舎から生徒達が現れ始めた。
今日は日曜日。 普通なら休みで、一日中寝ていてもなにも言われない日だ。
それなのに俺たちはなにをやっているんだろうか……
多数の生徒達が俺たちを興味深そうに見ていた。
「もしかして、他の生徒には今日のことは伝わってないのかもね」
「あぁ、なるほどね」
フロースに言われて、その通りだと思った。
今でさえ自由に生徒が歩いているのだから、事前に知らせでもしたら、なにをされるかわかったもんじゃない。
好奇の視線を受けつつ六組の宿舎に到着した。
食堂でパンでも貰おうかと中に入ろうとして、一人の男子生徒と鉢合わせた。
見た記憶はあるけど名前の知らないその生徒は、俺たち——もとい、俺の腕を見てギョッとすると慌てて中に戻っていった。
俺はがっくりと項垂れる。
ちょっと、ちょっとだけど傷ついた気がする。
気を取り直して中に入ろうとすると、こんどはドゥクスがでてきた。
「やぁ、クロエ君にフロースさん。 見た所怪我はしていないようだけど、順調かい?」
「残念ながら腕が折れたぞ」
ドゥクスは俺の腕をちらとみると、愉快そうに笑った。
「やっぱり、君って面白いね。 戦いが始まっている以上、僕たちは手を出せない。 君達には是非とも勝ってもらわないとね。 六組のためにね」
「六組のために戦うわけじゃないけど勝つには勝つから、下から見とけよ」
「もちろん。 コロナと一緒に楽しませて貰うよ」
人の戦いで楽しむなよ。
こいつなりの声援だと思っておこう。
ふと、腹が減ったことに気づく。
「はやく、食べて戻りましょ?」
「それもそうだ。 そういうことだからドゥクス、期待してろよ」
「頑張ってね」




