不思議な飴 青
一組の奴らの襲撃の後、夜明けまで何事も無かった。
一度、大きな音が聞こえたが気のせいかもしれない。
真っ暗闇だった森も日の明かりですっかり見通しが良くなっている。
「日が昇ったからここにいるメリットが無くなったけどどうする?」
「うーん、こっちから攻撃するのもアリだけど、迂闊に動くのも……」
二人でウンウン唸っているとアティアが、
〔とりあえず朝食にしませんか?〕と、言ってきた。
言われて気づけば、腹が減ってきた。
普段のおこないを忘れてしまうとは、実戦形式や恐ろし。
「腹が減っては戦はできんってね。 アティアちゃんにお願いするわ」
〔はい、喜んで〕
フロースに頼まれたアティアが上機嫌で人化をする。
その時、一粒の水滴が頰を濡らした。
「まさか、これって……」
恐る恐る上を見上げる。
そこには濁った灰色の雲が佇んでいた。
ズガンッ! ダダダダダッ
一発の雷鳴を皮切りに大量の水が俺たちに降り注ぐ。
重たい水はあっという間に制服の許容量を超え、たっぷりと染み込む。
灰色の怪物は、一分ほど経つと蜘蛛の巣を散らすようにバラバラになって消えていった。
「クソ野郎! 俺がなにしたってんだぁ!? いっつもいっつも、水水水! ふざけんなぁ!」
俺の怒号が森に響く。
「ドウドウ、落ち着いて落ち着いて。 服なら乾かせばいいでしょ、ね?」
人化したレインが俺を鎮めようとする。
その天使な困り顔に心が浄化されていくようだ。
「よし、大丈夫。 俺の穢れは消え去った」
クチュンッ
可愛らしい音がした方を見ればびしょ濡れフロースがガクガクしていた。 その服は透けている。
「見ないでよ」
「大丈夫、気にしてないから」
「そういう問題じゃないっ!」
なぜ怒るんだろうか? 微塵も気にならないんだが。 減るものでもあるまいし。
「へいへい、あっちに行ってますよ」
渋々、その場を離れようと足を踏み出した時、
「ぬりゃっ!?」
雨のせいでぬかるんだ地面に足を取られて滑った。
咄嗟に手を突き出してバランスを取ろうとしたのが悪かった。
ポキッっと折れる音がした。
枝じゃない。 腕が。 俺の。
「いっ——!?」
声にならない悲鳴がでる。
陸揚げされた魚のようにのたうちまわる。
「あっ、なっ、腕! 腕がぁっ!」
「クロエなにやってんの!?」
毛布を羽織ったフロースが駆け寄ってくる。
「腕逝った」
「こんな時に限ってバカクロエ!」
〔あの飴食べればいいんじゃない?〕
レインに言われてハッとする。
仕方がない……!
ポケットから取り出した青い飴を口に放り込む。
爽やかなミントの味がひろがる。
相変わらずアティアの職人技は冴え渡ってやがる。
すぐに飴を砕き血を取り入れる。
ポキッっと逝った右腕が青い宝石に包まれる。
と、同時に腕の痛みが引いていく。
「ふぅ……」
一息ついて服の泥を落とす。 と言っても、すでにびしょ濡れだから意味ないが。
「お腹空いたし、ビッショリだし最悪」
「最悪の中で見つけたのは小さな幸せでした」
「うっさい!」
言ってみただけなのに……




