黒の親子
俺は不思議な飴 緑と赤を口に入れた。
そして————吐き出した。
「うぇっ!? なんじゃこりゃあ!!」
不味い! とにかく不味い!
とてもじゃないが、そのまま体内に取り入れたくない味をしていた。
「どうかしました? 完璧な仕上がりのはずですが?」
飴を吐き出した俺にアティアが不思議そうに聞いてきた。
「どうもこうもねーよ! なんで赤いのは生肉的な味がするんだ! 血生臭くて無理だ! 緑の方はちょっとベジタブルな苦さがしてるよ? 何これ、知らない味だよ?」
俺の怒声が部屋に響く。
「あなたが半分ドラゴンだと言うから新鮮な生肉の味をつけてみましたが、味覚は普通のようですね」
アティアは怒声を気にしていないかのように冷静な分析をしてやがる。
「それで緑の飴はなんの味だ?」
「あー、それはですね。 野草です」
「んなぁ!?」
危うくずっこけそうになった。
野菜じゃなく野草! とんでもなく斜め上を突いてきたな。
確かにドラゴンは野草を食って牙を綺麗にしたり生肉の血生臭くささを抑えたりする。
さっきの発言からするに、アティアは俺の味覚がドラゴンと同じだと思っていたからこうなったのだろう。
青い飴が魚の味だったのもドラゴン視点からすれば頷ける。
「はぁーもうわかったから、作り直してくれないか? 今度は変な味付けは無しでいいからさ」
「むぅー。 わかりました。 今度は普通にですね」
アティアがいかにも渋々といった感じで残りの飴を持って部屋の奥に行こうとした時、
「ねぇ、君たち。 僕のことを忘れてないよね? 罰はしっかり受けてもらうよ」
リガートゥル先生いましたねっ!
別に忘れてたわけじゃないよ?
たまたま記憶が奥底まで沈んだだけだしぃー?
「壁はしっかり治すんで、そっちの方は無しにできませんか?」
一回目なんだしそこは厳重注意とかね、そこらへんで納めてください。
「嫌だね。 僕はルールを守るだけ。 これを曲げられのは校長か僕の父さんだけさ」
校長ヘールプッ!
あんたの父さんなんか知るかいっ!
と、俺が心の声を叫んだ時、意外な救世主が足元に現れた。
〔やめんかリガートゥル。 竜鬼の子に手を出したらどうなるかわからんぞ?〕
このちょっと渋めのおっさんボイスに黒い毛並み。
「マグニフィカト!?」
全長五十センチの救世主は俺の方をチラッと見るとリガートゥル先生に向き直る。
マグニフィカトはガロウ校長の相棒。 つまり、リガートゥル先生を止められる!
希望の眼差しでリガートゥル先生を見れば、そうとうなムスッと顏で舌打ちをしながら腕を組んでいた。
むっちゃイラついていらっしゃるー!
〔我はこやつらに用があるのだ。 ゆえに連れて行くぞ。 お前も巡回に戻ると良い〕
「用が何かは知りませんが罰は受けさせるべきですよ——父さん」
………………はい?
父さん? マグニフィカトが? リガートゥル先生の?
「えっ、マジかよ!」
〔何を騒いどるんだ、ボケ半竜〕
「いや、だって今『父さん』って……お前、子供いたのか」
〔もう昔のことだ。 リガートゥルはとっくに百を越しとるぞ〕
驚きだ。 まさかマグニフィカトの子供だったとは。
確かに二人とも黒いな。
〔とにかくこやつらは連れて行くからな〕
「いずれこの埋め合わせはするからね」
リガートゥル先生はご丁寧に扉を直してから行ってしまった。
〔相変わらず厳しい奴だ。 ほれ、付いて来い〕
「ちょ、ちょい! 用ってなんよ?」
さっさと行こうとするマグニフィカトを慌てて止める。
〔やっぱり聞いてなかったか。 お前はなんだ?〕
俺は——
「半竜?」
〔そっちじゃない! クラス代表だろうが!〕
あぁ、そっちか。
「それで何用で?」
〔一年クラス代表の招集だ〕




