ルールドラゴン
「…………やっべ、やりすぎた」
地味に大きな音がしたから誰か来るかもしれん。
外には壁に使われていたレンガが吹っ飛んだし。
「や、やばいよ! クロエ、逃げないと!」
珍しくレインが慌てふためいている。
それどころかアティアとミセリアも。
「はい? 逃げるってどういうことだよ。 そもそもここに隠れているんだから外に出たら本末転倒だろ」
「そういうことではありません! あの方が来るのです!」
「そうだよ! あいつがくるよ!」
「アティアとミセリアまでなにいってんだ? いったい誰がくるんだ?」
「竜舎管理長官リガートゥルだよ!」
聞くだけでも偉い奴だってわかるな。
「異名は『法律』。 竜舎を取り仕切る最恐のドラゴンです」
アティアがそう言った瞬間、爆音と共にドアが吹き飛び何かが現れた。
「誰だい? ルールを破る愚か者は」
声を発したのは黒髪の両手に黒いガントレットを付けた細身の黒スーツ男だった。
鋭い眼光を放つ眼はさながら恐ろしい獣だ。
「誰だお前は!」
俺はレインの血で形態・半竜となった右腕を男に対して構える。
「違うよクロエ。 あの人がリガートゥルなんだよ」
「マジかよ……」
レインの言葉に絶句する。
最恐っていうからもっとゴリゴリの奴かと思ったら案外普通だったな。
「その腕。 君が問題児クロエ・ドラグーンだね。 父さんからよく話を聞くよ。 なんでも竜鬼の息子だとか」
……こいつも一応教師なんだよな。
「あなたの父親が誰かはわかりませんが、俺は問題児じゃないので。 むしろ問題が自分からやってくる」
「そう。 でも今は関係ないや。 僕が来たのは竜舎のルールが乱れたから。 あの爆音と抉れた壁はなんだい?」
「えっと、これはちょっとした実験といいますか……」
俺たちはつい口ごもる。
「そもそもなんのルールを破ったのかわかりません」
フロースの質問にリガートゥルが笑みを浮かべる。
「そんなの簡単さ。 公共物破損」
そう言い終わると同時にリガートゥルが走り出す。
瞬く間に間を詰めたリガートゥルがガントレットをはめた手を振るう。
「ぐあっ!?」
とっさに拳を受け止めた右腕に衝撃が走る。
「ちょっとクロエ!」
フロースが駆け寄ってくる。
なんだ今のは……
確かにパンチ自体もかなり痛かったがその後だ。
内側からダメージが入った気がする。
「この程度壊れて貰っては困るよ。 まだルールを破った罰が足りないから」
そう言って構えをとるリガートゥル。
これじゃあ、許可された暴力同然だな。
教師のくせに問答無用か。
「クロエ! これを!」
アティアが何かを投げた。
投げられたそれを掴み見た。
「これは……!」
不思議な飴(アティア命名)赤と緑!
「それはなにかな? もしかしてルール違反の物かな?」
「まったく違うぜ、法律さんよ」
飴を二つ同時に飲み込む。
さぁて、どうなるかな?
黒髪ドラゴン……




