モード・ハーフ
「ああ、もう! 鬱陶しい!」
五つに増えたコロナの攻撃は速度こそあまり無いが、その一撃一撃は空気を伝って熱波を放っている。 白く上等だった制服は織り込まれた耐熱魔法が切れて、黒い煤汚れた物になってしまった。
「避けてばかりじゃ、君も炭になってしまうよ?」
見下すようなドゥクスの態度にイラつきながら、必死に打開策を考える。
コロナは炎を纏っていた。 ならばあれは、炎で作った幻影? いや、炎の塊そのものか? どっちかわかればやりようがあるのに……
〔ちょっと! なんで増えてるの!?〕
〔しらん。 こっちが聞きたい〕
〔たぶんだけど、魔力で固めた炎の塊じゃないかなぁ? それぞれが周りに魔力を発してる気がする〕
意外にもレインがそう言った。
そういうのわかったりするんだなぁ。
〔それさえわかればこっちの番だ。 ありがと、レイン〕
〔えへへ〜褒められた〜〕
コロナに向き直ると、右手で持っていたシルバードを左手に持ち替える。
——魔力で固めているならその魔力を崩せばいい。
「竜鬼直伝! 『嵐魔』!」
右手に纏った魔力の渦を、向かってきたコロナの胸に当てる。 渦はコロナの中に入り込み、内側から魔力を乱し破裂させた。
うーむ、これは偽物か。
少し火傷をした右手を摩りながら残りの四体を見比べる。
さっぱり見分けがつかないな。 一体ずつ殴ってくか。
何やらこちらを警戒しているのか向かってこないので、空気板をつくりその上を走り、一番近くのコロナの頭部を殴りつける。
そいつは最後に反撃しようとしたのか口をガバッと開き、煙を吐いたがすぐに破裂した。
残りは三体……アレ? 一体いない。 どこにいった?
周りを見わたそうとした瞬間、背後に違和感を感じた。
「ぐっ!?」
咄嗟に振り向こうとすると、左の脇腹に刺すような痛みが走った。
横を見れば透明だったのか、徐々に姿を現していく俺に噛み付いたコロナがいた。
こいつが本物か……!
無理矢理口を開こうとするが、変なところを噛まれたのか力が入らない。
「ああああぁぁ!」
瞬く間に地面に到達し、左肩から引きずられる。
コロナの牙から解放された俺は受け身を取ることもできずに壁へと激突した。
「はぁ……はぁ……クソっ!」
〔クロエ! すぐ! 行くから!〕
フロースはそう言っているが、手の空いたコロナ達の攻撃も加わりそうもいかない状態だった。
〔私が行くから!〕
レインは——クズイムに邪魔をされていた。 落ちてなかったのかよ……
〔今、行くから……待ってろ〕
ズタズタになった左腕を支えながら立ち上がろうとして、右足の痛みに倒れてしまう。 ——右足が折れてるな。
〔もう良いよ、クロエ。 諦めましょう。 これ以上やったらあなたが壊れるわ〕
〔ダメだ! 俺は大丈夫だから!〕
〔大丈夫じゃない! ボロボロのあんたは見たくない!〕
……そんなことしたら今までの努力が無駄になるじゃないか。
なんでそうなるんだよ……!
俺が正体を隠すために全力を出せていないから?
いや、俺がフロース達を騙していたからだ。
半竜がなんだよ……どうせいつかはバレるんだ。
今だっていいだろ?
〔フロース……お前に隠してたことがあるんだ〕
〔知ってるわよ〕
〔うぇ!?〕
フロースの反応は実に予想外だった。
〔やたらと魔力操作が苦手だったり、目の前で無詠唱で魔法を使ったりされたら何かあるって思うわよ〕
そう……だよねー
〔だからさ、これが終わったら全部話す。 だから諦めるなんて言わないでくれ〕
〔本当に話してくれる? ミセリアとレインちゃんとアティアにも? 竜鬼に誓って?〕
竜鬼って! 知らずに言ってるんだろうけど、約束を破ったら竜鬼に喰われるて? マジでありそうだから怖い。
〔もちろん。 だから一分で良いから耐えてくれないか? 後はなんとかするから〕
〔うん!〕
フロースの返事を確認して、胸のポケットを探る。
「……よし、確かここに……あった」
手に取ったのは赤い液の入った小さな瓶だ。
中身はもちろん竜帝の血。
俺はそれをぐっと飲む。
「うっ……ぐっ……!」
刹那、全身の血が煮えたぎるように熱くなる。 そして、傷口からの出血と痛みが止まった代わりに出たのが銀色の宝石だった。 それは徐々に広がると左腕と右足の全てを覆う。
銀色の宝石に包まれた左腕を思い切り壁に叩きつける。
衝撃で砕けた宝石の中から出たのは鋭利な爪と白銀の鱗を纏った竜の腕だった。
代表を決めるだけでなんでガチになってるかって?
彼らにとっては死活問題なんですよ




