竜鬼の秘密
「ふむふむ、どこにも傷は残って無いね。 さすが、サクラナちゃん!」
母さんはレイン、アティア、ミセリアの全身をチェックすると満足そうに頷いた。
〔ねぇ、クロエ。 古傷から新しい傷まで全部治ってるんだけど……どんな魔法を使ったらこんな凄いことできるの?〕
ハキハキ動き回るレインにそう聞かれた。
実は呼ばれてきた三匹のドラゴンを見た母さんが突然、治療を始めたのがことの始まりだった。
レイン達に残っていた傷はカエルム竜騎士学校の誇る、治療魔法の使い手でも完全に消すことのできなかったものだ。
それをものの数秒で治されたら驚かずにはいられないだろう。
この事実を知ったら保険の先生達が発狂しそうな気がする。 今までの努力はなんだったのかと、ね。
ちなみに、母さんが使ったのは魔法ではないんだなぁ、コレが。
覚えているだろうか? 『傷喰』と言う治療の概念を。
これは母さん曰く、『魔法の元になった物』だとか。
それを母さんはレイン達に使ったのだ。
じゃあ、『傷喰』で受け持った傷は? ってなるのは当たり前だろうね。
ここで竜鬼の秘密を一つ。
①ドラゴン以外から受けた傷には驚異的な回復力がある。
これは体質と言うよりは呪いに入るらしい。
それに加え母さんは、普通に治癒魔法を最上級まで使えてしまうハイスペックぶりだ。
それ故に竜鬼なんて呼ばれているのだが。
「話聞いてるのー? クロエー?」
いつ間にか人化していたレインにポコポコ殴られた。
「いや、聞いてなかった。 なんだって?」
「クロエのお母さん、行っちゃうって」
言われて母さんを見てみれば、見覚えのあるマントを羽織っていた。
「もう行くの? 母さん。 夜までまだ時間はあるけど……」
「そんな暗い顔をするな。 五年なんて短いものだったろ? 次はもっと早く逢えるさ。 そうだなぁ……夏休みに一度帰って来るといい。 それまでにはかたをつけるから」
「レインとアティアも一緒に?」
母さんはにっと笑うと俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「もちろん、一緒に。 アマデウスのも連れてくると良い。 まだ話していないことがたくさんあるからね」
「それじゃあ今度は家で! 父さんも!」
母さんは何も言わずにフードを被ると、フロースの方を見る。
「教えたことはしっかり守るんだよ?」
「はい! もちろんです!」
「フフッ、元気な子は好きだよぉ〜。 そろそろ行くね〜クロちゃん」
「頑張ってね、母さん」
瞬間、強烈な風に目を瞑ると既に母さんはいなくなっていた。
サクラナの話を別に書こうか迷ってる今日この頃




