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学生竜騎士  作者: 雨後吹雪
一学期
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44/284

閃光

「はぁー……」

 国王ケルタ・アルボス・ランスソードは何度目になるかわからないため息を吐いた。

 〔いいかげんシャキッとしたらどうだ?〕

 ランスソードを背に乗せ悠々と空を飛ぶ黄金のドラゴンルドベックは昨日の夜からずっと凹んでいる相棒パートナーに呆れていた。

 とはいえ、ルドベックも一度切断されて繋ぎ合わされた前脚に多少の違和感を感じていた。

 すぐに魔法を使ったため——切断面があまりに綺麗だったのもあるが——大事には至らなかったが、かと言って喜べることでも無い。

「サクラナ様、絶対怒ってたよね?」

 ランスソードの声は国王としての威厳ある物ではなく、今にも泣き出しそうな震え声だった。

 しかし、ルドベックはこっちが素だと知っている。

 サクラナに脅されてこうなったかと思いきや——あながち間違ってもいないが——元々、ランスソードは兄の背に隠れているような気の小さい子供だった。

 父である先代国王が亡くなった時、ランスソードは兄であるアックスシールドが国王になると思っていた。 家臣も国民もそうなのだと思っていた時、現れたのがサクラナだった。

 ランスソードとアックスシールドを闘わせたサクラナは勝利した方を国王にすると言ったのだ。

 そしてランスソードは勝ってしまった(・・・・・・・)

 幼い時から武術を教えられていた二人の実力はほぼ同じだった。 それでもその日勝ったのはランスソードだった。

 負けてしまったアックスシールドは激怒し、その日の夜に行方不明になってしまった。

 誰もが不信に思う中、国王になったランスソードはサクラナの言うとおりに事を起こしていった。

 疫病や魔物の大量発生など、サクラナが言ったことは全て当たり、被害が広がる前に防いでいった。

 そんなことを知る由も無い国民はランスソードが優秀な国王だと思うようになり、今日までやってきた。

 しかし、それも終わりになるのではとランスソードは考えていた。

「サクラナ様の指示が無くなったら国を守る自信が無いんだ……」

 〔あの人が喜ぶような事をすれば良いんだよ。 例えば、あのゴブリンの群れを潰すとか〕

 ルドベックに言われて下を見たランスソードは森の中を進んでいく二百あまりのゴブリンを見つけた。

「……ゴブリンはしばらく見たく無いんだけど。 昨日もここら辺でゴブリンの巣を潰したばっかりだし」

 〔おおかたここの巣が無くなったことで移動してきた他の群れだろうな。 どうする? どうせ潰すなら早い方がいいと思うぞ?〕

「んぅー……あの人の機嫌が直るかはわらかないけどっときますか」

 ランスソードがそう言い終わると同時にルドベックがゴブリンに向かって急降下する。

 地面が近くなると足の止め具を外したランスソードはルドベックの背から飛び降りた。

 そこそこの高さだが竜騎士であるランスソードは空中で一回転すると、ゴブリン達の眼前に降り立った。

 ルドベックはゴブリン達の背後へと周り、咆哮をする。

『ギャッギャッ!』

 突然の敵の襲来にゴブリン達は奇声にも似た声を発すると、ランスソード達に攻撃を仕掛けていく。

「よっ、ほっ、とっ」

 自身の背の半分ほどのゴブリン達の攻撃をひらひらと躱しながらランスソードは黄金の剣で首を的確に跳ね飛ばしていった。

 向こう側ではルドベックが爪や尻尾でゴブリンを薙ぎ払いながら進んでいく。

 〔面倒くさいな……〕

 そう思ったルドベックは轟音と共に輝く炎を口から吹いた。 木々に燃え移らないように火力は抑えてある。

 それでもゴブリン達にとっては灼熱に変わりはなかった。

 全身を焼かれたゴブリンは痛みに呻きながら次々に死んでいく。

 そうやって二人が着実に数を減らしていると、群れの中からひときわ大きなゴブリンが現れた。

『ブモオォォー!』

「ボスのおでましってとこかな」

 向かってきたゴブリンの首を回し蹴りでへし折ったランスソードはボスゴブリンに向かって走り出す。

 そんなランスソードに向かってボスゴブリンは斧を振り下ろすが、一直線な攻撃は簡単に躱され両腕を斬り飛ばされる。

お終い(チェックメイト)

 ランスソードは呆然とするボスゴブリンの胸に剣を突き刺し止めをさす。

 ボスゴブリンが倒れると同時に残っていたゴブリン達は散り散りになって森の奥へと逃げていった。

 〔爪が汚れてしまった〕

 そう言うルドベックは木の幹で爪を研いでいた。

「はは、そうだな。 早く熱い風呂に入りたいよ。 ん? 骨に刺さったか?」

 ボスゴブリンの胸に刺さった剣を抜こうとしたランスソードは予想以上の硬さに悪戦苦闘していた。

 〔早くしないと剣が臭くなるぞ。 ゴブリンは汚いからな〕

「わかってるよ!」

 笑われたことに怒ったランスソードは無理矢理剣を抜こうとした時、死んだはずのボスゴブリンが起き上がった。

「こいつ、死んでなかったのか!」

 ランスソードは突然のことに剣から手を離すかどうか迷ってしまった。

 その一瞬がボスゴブリンに動く時間を与えてしまった。

「ぐっ!」

 ボスゴブリンはランスソードの右肩に噛み付くと同時に倒れ込み、ランスソードの右腕をその巨体の下敷きにしてしまった。

 〔ランスソード! 今いく!〕

 ルドベックが走り出そうとした時、ランスソードはボスゴブリンの背に不自然にある魔石が赤く光ったのを見た。

「ルドベック! 来るなっ!」

 咄嗟にランスソードが叫んだ瞬間、ボスゴブリンの体が閃光と共に弾け飛んだ。

 〔ランスソード!!〕

 ルドベックの叫びが森の中に響いた。



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