血塗れの夜
『——ねぇ』
誰かの声が聞こえる。
『——起きてよ』
まだ、寝ていたい。
もぞもぞと寝返りをうつが、まだ何か言っている。
『——起きないなら、えいっ!』
「ぬおおおおっ!?」
突如左腕に走った痛みに絶叫する。
痛みの元を見ればスカイブルーのドレスアーマーを着た少女が腕をギシギシと捻っていた。
「ちょっ、レインやめて! 腕が折れちゃう!」
「あっ、起きたんだクロエ。 おはよー」
「おはよーって、外暗いんですけどー?」
窓から差し込む光は太陽では無く月のものだった。
「何も覚えてないの? クロエ、戦闘中に倒れたんだよ?」
「えっ? んー、あっ! そういえばそうだな」
言われてみればそうでした。
出血が酷すぎて貧血になったんだな。
そう戦闘中に——あっ!
「結局、試合はどうなったんだ?」
俺の問いにレインの表情が曇る。
まさか、負けたのか……?
だとしたら俺の責任じゃ……
しばらくの沈黙の後レインが口を開く。
「それがね……」
「…………」
「勝ちました!」
ニッコリ、ピース。
「………………へ?」
ついつい素っ頓狂な声を出してしまった。
勝ったんかい!
なら、最初からそう言えよ!
負けたかと思ったわ!
わざわざ暗い顔しやがって。
まぁ、言わないけど。
「どう勝ったんだ? 正直言って、もうダメだと思ってたんだが」
「うん、一瞬の出来事だったよ。 クロエが不思議な魔法を使った時に赤いのがぽわーんってなったでしょ? それにみんなが釘付けになってね、そこをアティアお姉ちゃんとミセリアお姉ちゃんがズバーン! ってね?」
ちょっと擬音が多いけどつまり、
「俺のお陰?」
「んー、そうなるのかな?」
そこ断言できないのかな? うん。
「そういえば件の三人は?」
だだっ広い保健室には大量のベッドと俺たち二人しかいない。
他の人は怪我をしていないのだろうか。
「ねぇ、外見てわかんない? 夜だよ夜。 みんな帰っちゃったよ。 クロエ起きるの遅いもん」
「そりゃ面目無い。 てことは、レインは待っててくれたのか?」
だとしたらむっちゃ嬉しいけど。
「本当は待ってるつもりだったけど、途中で眠くなってね。 さっき起きたの」
くそっ!
すぐそばにレインの寝顔があっただと!?
なんで起きなかったんだ俺よ!
と、そこで俺の腹がゴロロロと音を立てた。
「腹減ってきたな。 レインもお腹空いたろ? 一緒に行こうぜ。 まだ何か残ってるかもしれない」
「うん、行こっ! ほら、早く早く!」
「はいはい、今行くって」
レインに急かされベッドから降りて靴を履いた時、自分の今の姿に顔をしかめた。
白色の綺麗な制服は大量の血で真っ赤に染まっていた。
血が固まって袖がパリパリしている。
これは先に着替えないといけなさそうだ。




