過去の技から
先に動いたのはフロースだった。
左手にラディウスを持ち右手で魔法を使おうとしながら走ってくる。
途中、魔法が完成し火の槍が飛んできた。
俺はそれをサクラナで払いのける。
その隙にラディウスでの突きが飛んでくるが、体をひねりかわす。
しばらくそんな攻防が続き、俺の大振りな一撃にフロースが後ろに飛ぶ。
少しずつ思い出してきた。
鎌は思っているよりもリーチがある。
しかし、刃が内側についているから相手に斬りかかろうとすると、かなり近づかなければならない。
そんなわけで俺はほとんど防御しかしていない。
一度でも刃が当たれば、剣よりは深く傷つけられると思う。
そのためにはまず、相手の武器を落とさなければ。
槍も剣とやり方は変わらんよな?
「どうしたの? 攻めないとやられちゃうよ?」
そう言われましてもね。
「なら武器を離してくれや。 じゃないとキツイ」
「それは、無理かなっ!」
そう言いながらまっすぐにラディウスを突いてきた。
待ってました!
「そうだと思ったよ!」
横に飛びそれを避けると、フロースが動くよりも早く鎌に槍を引っ掛けるとそれを引くようにひねった。
「あっ……!」
その勢いで、フロースの手からラディウスが離れた。
飛んでいくラディウスを見届けずに俺はフロースに向かって加速する。
サクラナが届く距離まで後二歩……一歩……そこで俺は、魔法を使っていた。
意識したわけじゃない。
体が勝手に反応したのだ。
右足のかかとのあたりの土が盛り上がり、出っ張る。
俺はそこに右足を引っ掛け重心をかけながら、左足を前にやり一気に近づく。
同時にサクラナを左下から右上に振り上げた。
刃はフロースの首に寸止めの形で止める。
「……えっと?」
フロースはしばらく呆然としていた。
今のは時間にして五秒にも満たなかっただろう。
〔そこまでだ。 お前もやればできるじゃないか〕
マグニフィカトの言葉で俺は勝ったことに気づいた。
「あっ、勝った……鎌って以外と良いかも」
全部思い出した。
母さんに教わった技がここに来て役に立つとは。
無駄にならなくてよかった。
トントン
肩を叩かれたので振り返る。
そこにはラディウスを手に持ったフロースがいた。
フロースが無言で拳を突き出してくる。
しかし、その顔は笑顔だ。
俺もつられて笑うと拳を当てた。
「やるじゃんクロエ。 まさか負けるとは思わなかったよ」
「あれはほとんど感覚って感じだ。 実際にはどうなるかわからんさ」
〔お前魔法使えたんだな〕
「あっ?」
唐突なマグニフィカトの言葉に一瞬思考が停止する。
…………ほんまやっ!
アティアとレインの補助無しで魔法使ったわ!
あれ? どうやったんだ?
「確かに使ったね魔法。 最後のアレでしょ? 足元の出っ張り」
「ん? ああ、アレだな。 確かアレは母さんに教わったやり方のはず……」
〔つまり、意識せずに昔やった通りに魔法を使えば成功すると〕
マグニフィカトの解説でハッとする。
「てことは俺ってば実は強い?」
〔うぬぼれは身を滅ぼすぞ。 我がいい例だ〕
どこがだよ。 ピンピンしてんじゃねーか。
「クロエでも鎌を使えば魔法が使えるってことで良いのよね?」
「一応な」
フロースの疑問に肯定しておく。
おそらく高確率で魔法が使えるはずだ。
「そういえば黒猫。 俺の動きになんか直すところあるか?」
これを聞かねば本末転倒だ。
少し間を空けて、
〔……特には無い。 強いて言うなれば防御の動きに無駄が多いな〕
「だろうな。 あいにく母さんには殲滅の方法しか教えて貰った記憶が無い」
あの人は『殺られる前に殺れって』感じだから防御とか必要無いんだよなぁ。
〔まだ時間はある。 我が完璧に仕上げてやろう。 感謝しろよ?〕
「頼むぜ監督!」




