アレスタントの対竜格闘術
あぁ、身体が重い。
ふざけやがって黒猫野郎。
俺の魔力がフロースに取られた時に、悪ノリしてごっそり持っていきやがった。
まだ何もしてないのに全力疾走した気分だわ。
「おいマグニフィカト。 次は誰だ?」
フロースの特訓はあれで終わりのようだったので聞いてみる。
時刻はまだ五時を過ぎたあたりで、日没まではまだ余裕がある。
てか日没までに宿舎に戻らなければ今度こそユリアさんに殺られる。
〔次はミセリアだ。 特に移動する必要も無いからここで良い。 とりあえず人化を解け〕
「りょーかい」
先ほどまで暇そうにしていたミセリアが間延びした返事をしながら中に飛ぶ。
直後に全身から赤い光をだして、ドラゴンの姿に変わった。
——あ!
また、俺の番じゃねぇ!
いや、確かにフロースの次は相棒であるミセリアってのも納得だけどもー!
「マグニフィカト! 俺の番はいつだよ! まさか、最後じゃないよな?」
〔そのまさかだ〕
「アアアァァ!」
マグニフィカトは俺に背を向けて尻尾をふらふらさせている。
とりあえず思いっきり握っておいた。
〔ほれ、さっさと始めるぞ! ミセリア、お前のあの技術を我は知らない。 アレはなんだ?〕
「お前も知らないことがあったのか」
素直に驚き。
てことはミセリアの投げ技ってなに?
〔やっぱ知られてないんだね〜。 いいよ、教えてあげる! マグニフィカトはアレスタントって人しってる?〕
〔知らぬ〕
〔そっか。 アレスタントは私の育ての親なんだ。 私の両親は生まれてすぐに病で死んじゃってさ、森の中で途方に暮れていた私をアレスタントが拾ってくれたの〕
「ミセリア……あなた……」
フロースの呟きが聞こえた。
レインとアティアは静かに話を聞いている。
〔アレスタントは私に対竜格闘術ってのを教えてくれたんだ。 アレスタントは凄いよ! 人間なのにドラゴンの弱点を知り尽くしていてどうすれば動きを止められるのか、どうすれば相手を無力化出来るか日々研究してたんだよ!〕
ミセリアの口調が珍しくヒートアップしている。
それだけ、凄い人物なのだろう。
〔アレスタント……対竜格闘術……。 どちらも聞いたことの無い名だ。 ガロウなら知っているかもしれぬが、その者はいまどこに?〕
〔わかんない。 私をここに預けてからはどこかに行っちゃった。
〔そうか。 まぁ良い。 とりあえずその対竜格闘術の基本を教えてくれ。 特訓はその後だ〕
〔りょーかい! 対竜格闘術ってのはねぇ——〕
……話について行けませーん。
要するに、ミセリアの師匠がそのアレスタントとか言う人で、ミセリアの謎技術は対竜格闘術っていう偉くカッコイイ名前の技ですと。
ミセリアとマグニフィカトは二人の世界に入り込んでるし。
フロースですらやれやれと手を振っている。
「フロース、さっきのおさらいでもしようか? レインも俺の魔力使っていいから魔法の練習しよう。 ……暇だから」
「そ、そうね。 さすがにあの間に入ろうとは思わないしね」
「わ、私も無理かな。 二人の話が終わるまで練習しよっ! 練習!」
二人とも、暇なようだ。 退屈な時間って最高。
「アティアはどうする? 一緒になんかするか?」
先ほどから目を閉じて何かを考えているアティアに声をかける。
「……私はいいです。 三人でどうぞ」
「おっけ」
さてさて、話が終わるまでどれくらい時間がかかるかね。




