ある日の出来事
逃げ出したのはいいけどユリアさんの授業が終わるまでどこで時間を潰そうか考えた結果、屋上に行くことにした。
教室に近いし今日は天気が良いから、昼寝にはもってこいだろう。
さっそく屋上に行こうと階段に行こうとして足を止める。
「そういや俺逃げてたんだ……」
階段に行ことすれば巡回の教師がいるわけで、見つかったら無理矢理教室に連れていかれるわけで、結局ユリアさんにボコられると。
……壁、登るか。
壁を見渡すとちょうど良いでっぱりを見つけた。
そこに手をかけ、足を使いながらガシガシと壁を登っていく。
側から見れば壁登竜に見えるかもしれない。
しばらく登っていくと屋上に柵が見えた。
それを掴み一気に体を引き上げると空中に飛び一回転して着地する。
なかなか綺麗な着地だったな、今のは。
着地に満足しながら屋上唯一のベンチに向かおうとして俺は目を疑った。
何か黒くて丸いものがベンチの上でモゾモゾと動いているのだ。
スライムか? いや、スライムはもっと気持ち悪い動きをしていたか。
シルバードを呼び出すと恐る恐る黒い物体に近づいていく。
剣がギリギリ届くところまで行くと、先で突いてみる。
〔ニャギャ!〕
「うおっ!?」
突いた瞬間、頭の中に猫の鳴き声が特大の強さで響いた。
慌てて黒い物体に目をやるとそれは猫の形になっていた。
いや、もともと猫だったのだろう。
むっちゃ威嚇されてる。 まぁ、痛かっただろうな。
この黒猫なんか見覚えがあるな。 というか、あいつで確定だろ。
〔おい、マグニフィカト。 何やってんだお前?〕
〔剣で突いておきながら何を言っとる! そもそも、なんでお前がここにおるのだ! 授業中だろうが!〕
〔あー……逃げてきた。 身の危険を感じてね〕
〔わけがわからん!〕
そんなシャーシャーやっても怖くないっての。
俺はシルバードをしまうとマグニフィカトの横にどかっと座る。
なんか余計に疲れた気がする。
〔そういや、なんでここに?〕
〔ふん、お前たちの特訓メニューを考えていたのだ〕
おお、案外まともだった。
〔……何か失礼なこと考えていただろ?〕
〔いや、なんも。 俺今から昼寝するから授業が終わったら起こしてくれ〕
マグニフィカトをポンポン叩きながらベンチに横になる。
〔おいぃ、寝るな! ……おい!〕
あーあーなにも聞こえないー。
マグニフィカトを無視しつつ再び睡魔先輩の慈悲にすがると俺は眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇
授業後、校長室ではユリアとガロウが話をしていた。
「六組の代表は何班になりそうだい?」
ガロウは穏やかな口調で喋りつつもその手は机の上に山と積まれた本のページを次々とめくっている。
「今のところは一班が代表になりそうです。 他の班も頑張ってはいますが少し厳しいかと」
「うん、わかったよ」
そう言いつつもやはりその手は止まる様子がない。
何を読んでいるのか気になったユリアがちらと本の題名を読むと驚いた。
その本の全てが無詠唱に関係のある本だったのだ。
「あの校長? 何をなさっているのですか?」
「いやね、研究の終わりが見えそうなんだ」
「それはついに?」
やたら上機嫌なガロウの姿にユリアは首をかしげる。
それもそうだろう。
無詠唱の研究のことは知っていたがいつも『また失敗か……』と呟くガロウの姿を見ていたからだ。
そして、クロエが無詠唱を使った事も知らないのだ。
「そういえば、クロエ君が授業中にどこかに行ってしまったんですよ。 すこし注意だけなのに……まったく、親の顔が見てみたいですよ」
そう言ってやれやれと手を振るユリア。
その言葉にガロウは手を止める。
「親か……実は私もよくわかってないんだ。 私より強いのは確実なんだけど名前も住所も知らないし。 今頃どこにいるのやら」
「校長より強いのに情報がほとんどないと。 一体どんな化け物なんですかね」
「あはは、確かに化け物かもね。 ……ほんと強いからね」
最後の方は小声でユリアは聞き取ることができなかったが、その人が恐ろしく強いということは伝わった。
「一度会ってみたいですね」
ユリアはそう言うと校長室を後にした。
その後、銀色の鳥がガロウの元に一通の手紙を運んできたのは誰にも知られていない。
キリが悪くてすいません




