逃走
あの後、二人からの説教をどうにか止めて教室に辿り着けたが、身体中が痛すぎて授業の内容が頭に入ってこない。
隣ではフロースが何事もなかったかのようにノートにペンを走らせている。
まぁ、一方的にボコられたんでそうなりますわ。
あっ、今大事なこと言ってた気がする。
完全に聞いてなかった。
……はぁ、もう無理。
こういう時は寝るに限る。
ということで、
「後で起こしてくれ」
フロースに小声でそう告げると目を閉じる。
「え、ちょっと、起きなさいよ!」
べしべし叩かれるが早速、睡魔先輩がやってきましたよ。
無〜理〜。
あー、何も聞こえないー。
おやすみなさいー。
ドスッ!
あと少しで意識が持ってかれるというところで不思議な音が聞こえた。
重たい瞼を開けると最初に目に映ったのは机に突き刺さった剣だった。
「……剣……って、剣!?」
一瞬の思考から驚きで立ち上がってしまった。
クラス中の視線が俺に集まってくる。
いや、俺の後ろに集まっている。
俺もみんなに習い後ろを振り向くと、笑顔で腕を組むユリアさんがいた。
「あ、えと、こ、こんにちは」
つい、挨拶をしてしまった。
「こんにちは、クロエ君」
それにユリアさんがニッコリ笑顔で返してくれる。
「あははは」
「うふふふ」
怖い。 笑顔がむしろ怖い。
状況から察するに机に剣を突き刺したのはユリアさんだろう。
寝ていた俺を起こそうとしたのか。
何かを言わなければいけない気がするのに何も思いつかない。
ちらりとフロースを見るがその顔には『どうするの? なんとかしなさいよ』とかかれているのが見える。
「と、とりあえず授業の続きをどうぞ」
ナイス俺! ナイスヒラメキ!
大切な授業を潰すわけにはいけないはずだからこれでおしまいだ。
「それもそうですが、その前に」
ビュン!
そう言い終わらないうちに俺めがけて手による突きがおこなわれた。
それを間一髪で避ける。
「えっと、これは?」
笑顔で次を構えるユリアさんに引きつった笑みで聞く。
「授業ですよ? 集中力を鍛える」
「いえ、普通の授業をお願いします」
「普通の授業ですよ?」
ダメだこれは。 逃げなければ。
教室には前と後ろに一つずつ扉がある。
しかし、目の前にはユリアさん。 俺の席は一番後ろ。
……前の扉しかないな。
いや、全力で走っても追いつかれるだろう。
それに予想もされているだろう。
走って間に合い予想もされていない場所……あそこしか無いですね。
よし、逃げるぞ。
繰り出される突きをかわしながら少しずつ移動する。
もう少しもう少し……今だ!
突きをかわした瞬間、攻撃するように見せかける。
案の定防御しようとユリアさんの手が止まる。
そこを見逃さずに俺は窓に手をかけ外に飛び出す。
ここは三階。
普通の竜騎士なら危ないだろうが半竜である俺には大した高さでもない。
飛び降りる瞬間フロースの呆れたような顔が見えた。
すいませんね。 ユリアさんに捕まったら無傷では済まないんで。
ちゃんと戻ってくるんで後はよろしく。
久々にユリアさん登場




