マグニフィカトの過去
私はマグニフィカト。
ここ、カエルム竜騎士学校の校長であるガロウと契約したドラゴンだ。
鱗の色は漆黒で、闇夜での隠密行動が得意だ。
産まれてから二百年近く生きたおかげで翼を広げた全長は三十メートル近く。
ドラゴン族でも相当な大きさだという自負がある。
しかし、私の右の翼は過去の戦いで受けた炎でズタズタになっている。
人の作り出した炎ならば後で治療できたかもしれないがドラゴンの吐く炎は私の翼を飛べないようにしてしまった。
そこに現れたのがガロウだった。
当時飛べないことに絶望していた私はガロウを邪険に扱っていたが、ある日ガロウのだした案に私は歓喜した。
その案とは、私の右の翼に風の魔法陣を描くことだった。
魔法陣に魔力を流し風を起こすことで羽ばたくのと同じようにしたのだ。
この時は私は喜びと同時に驚きを感じた。
私は人間もエルフもドラゴンの足元にも及ばない生物だと思っていたがそれは間違っていたのだ。
彼らはドラゴンには無い奇抜なアイディアを持っていたのだ。
ドラゴンは長命ゆえに過去の知識にとらわれやすいのだから無理も無い。
そこで契約を結んで今に至るのだが、今日久しぶりにあの時以来の驚きを感じた。
目の前で半竜が無詠唱で魔法を使ったのだ。
無詠唱は竜帝しかやり方を知らない秘儀だった。
それを他の者が使ったのだ。
聞けばガロウの部屋で無詠唱に関する本を読んだそうだ。
それもそうだろう。
ガロウの長年の夢は無詠唱を使うことなのだ。
それを練習したら使えた?
そんな簡単にできるならガロウの努力はなんだったのか。
このことをどうやって話せば良いのだろうか。
はぁー。
めんどくさいわー。
校長室の前まで来たが中に入ることを躊躇ってしまう。
…………
しばらくそのまま丸くなっていたがキリが無いので中に入るとしよう。
取手に飛びつき捻ると中に入る。
部屋の中ではガロウが紅茶を飲んでいた。
……こういう時こそ寝とけよ。
「あ、戻ったんだ。 どうだった?」
先に話しかけられた。
〔ま、まぁ、基礎はできていたからすぐに強くなれるだろうな〕
どうやって話せばいいかわからん。
「それは良かった。 ところでなんで焦ってるの?」
無駄に観察力のあるエルフめ。
しかし、これは好都合だ。
〔なんだ、そのな、クロエがな、さっきな〕
「うんうん、クロエ君が?」
〔…………無詠唱で魔法を使った〕
ガシャン!
ガロウの手からティーカップが落ちた。
「あははは、マグニはジョークのセンスがないなぁ」
無理に笑っているがその声は震えている。
〔いや、本気で〕
「………………」
あっ、寝てる。
現実逃避したか。
まぁそっちの方が楽だから良い。
さて、あいつらの特訓メニューでも考えるか。
ここでは考えないぞ?
ガロウが起きたらめんどいからな。
屋上にでも行くとしようか。
ガロウに対して〔我〕ではなく〔私〕と言っているのはなんだかんだでガロウを尊敬してたりしてなかったり




