対決 二
俺はシルバードを左手に持ち替えながらフロースに向かって走り出した。
そして空いた右手に魔力を集中させる。
すると、魔力が溢れるのがわかった。
——これじゃ失敗する。
〔アティア、魔力制御を〕
ミセリアと組み合っていたアティアに魔力制御を頼む。
返事は無かったが、右手の魔力がまとまっていくのが感じられる。
右手をフロースに向ける。
狙うはフロースではなくその少し後ろ。 一歩下がったあたりだ。
フロースの注意は俺に向いている。だから気づかれないように狙った場所を凍らせていく。
おまけに水の槍を飛ばして、凍らせているのを隠す。
フロースが最後の水の槍を弾いた瞬間、シルバードで正面から斬りつけた。
「えっ!?」
とっさに後ろに下がったフロースは俺が凍らせた場所に足をつき、滑って倒れた。
(ここだ!)
俺はフロースにシルバードを振り下ろそうとしたができなかった。 左腕を見れば、鎖が巻きついている。
……この鎖はフロースの十八番か。
素早くシルバードを右手に持ち替え、鎖を叩き斬る。
その間にフロースは十分な距離を取っていた。
さらに、魔法陣がいくつも展開されている。
それを見た俺はフロースへと駆け出す。
もう、魔法は使わせない。 遠距離攻撃はまっぴらごめんだ。
フロースの魔法より早く接近すると、フロースの右腕を切り上げる。
「痛っ……」
剣は闘技場の魔法による謎バリアによって傷をつけることは叶わなかったが、確実にダメージは与えられた。
フロースの竜装ラディウスはドラゴンに騎乗しても扱えるよう、柄の部分が長めになっている。
そのせいで両手じゃないとまともに扱えない。
だから、フロースの利き腕である右腕を狙った。
槍を封じれば後は魔法しか残っていないが、使わせなければないも同然。
完璧だ。 圧倒的戦略だ。
「さぁ、降参しろフロース」
我ながらよく考えたわ。ほんと。
「誰が降参するものですか」
フロースはまだやる気だった。 それどころか、少し笑ってやがる。
「いやいや、状況的に無理だろ」
「残念だけど、墜落した時点であなたたちの負けは決まっていたのよ。 ミセリア!」
「は?」
突然の物言いに間抜けな声を出してしまった。
とうの本人はミセリアの名前を呼び、俺の背後を見ている。
俺はつられて後ろを向き、驚いた。
何故か8メートルはあろうアティアが宙を舞っていたのだ。
翼を使って飛ぶのではなく、物理的に投げ飛ばされて飛んでいる。
その時俺は大事なことを思い出した。
ミセリアは何故か接近戦が滅茶苦茶強いってことを。
何をどうやっているのかはわからないがいつも相手のドラゴンを格闘家のように投げ飛ばしていた。
俺は飛んできたアティアの尻尾にぶち当たった。
よくしなる尻尾は鞭打ちのごとく俺を吹き飛ばす。
「がはぁっ!」
肺の空気が一気に吐き出される。
そのまま、壁に衝突する。
恥ずかしいわぁ。あんな大口叩いておいてこんな結果とか恥ずかしいわぁ。
俺はヨロヨロ立ち上がるとアティアのいるところまで歩いていく。
〔アティア、大丈夫か?〕
アティアに聞く。
〔……恥ずかしい……あんなこと言ったのにこの結果とは……恥ずかしい……〕
〔……そうだな〕
俺は頭を撫でてやりながら治療魔法をかけてやる。
〔ストープッ! そこまで!〕
そこでマグニフィカトの合図がかかった。
〔お前たちやりすぎだ! ちっとは加減を知らんのか!〕
「そう言われても」
理不尽っすよそれは。
「まぁ、勝負は私たちの勝ちってことで良いわよね?」
フロースにそう聞かれる。
今回は負けたな。
あまく見すぎてた。
〔勝敗など、決めてどうするのだ? 我はどれくらいできるか見たかっただけだ〕
「「〔〔え……〕〕」」
二人と二頭がハモった。
「なんだったんだあの頑張りは……」
〔無駄ですか……〕
「意味がわからないわ」
〔え? え? どういうことなの?〕
全員マグニフィカトを見つめる。
シャーッ!っとマグニフィカトが威嚇のポーズをとる。
〔とにかくこれで終わりだ。 授業が終わり次第また集まれ。 それまでにメニュー考えておこう〕
「はいはい、わかりましたよ」
ほんとなんだったんだ。
無駄に意地はって恥ずかしいわぁ。




