対決
マグニフィカトの合図と同時にアティアは四本の強靭な足で地面を踏みしめ空中に飛び上がる。
そして、体長の二倍はある翼を力強く動かし旋回を始める。
しかし、フロース達は飛ぼうとしない。
そのかわりにフロースの周りには手のひらほどの魔法陣がいくつも展開されていた。
魔法の同時使用は制御が難しく意識が散漫になりがちでけっこう難しいが、フロースはテキパキと魔法陣を展開し続けている。 相当な集中力だな。
あの量ならかなりの魔力を消費するはずだが、ミセリアから魔力供給されているのか疲れが全く見られない。
だが、あの大きさの魔法陣では大した威力の魔法は放てないはずだ。
〔何してるかわかるか?〕
アティアの考えを聞いてみる。
〔さあ? あの程度ならいくら当たってもかすり傷すらできませんし、あなたに当たってもかすり傷がいいところでしょう〕
〔だろうな。おっ、飛んできた〕
魔法陣から矢が放たれた。 その全てが炎の矢だ。
炎の矢はありえない軌道を描きながら俺たちに向かってくる。
普通の矢と違い魔法で作られた矢は風や重力の影響を受けずに術者の意図した通りに飛ぶからだ。
ほとんどの矢がアティアの硬い鱗に当たり消滅していた。 稀に俺の方に飛んでくるが服を焦がしたり、頰をかすめる程度だ。
〔どうするよ? 攻撃するか?〕
〔とりあえずフロースの魔法が止むまで様子を見ましょう。 何もしないようならこちらから突っ込みます〕
〔あい、わかった〕
アティアの言う通りなので、注意深くフロースを見る。
すると、さっきとは違う魔法陣が展開されていることに気づいた。
さっきの炎の矢の魔法陣は赤だったが、今度は青だ。
多分、水の魔法だろう。
ほんと、なにがしたいのやら。
しばらくすると、水の矢が一斉に放たれた。
今回はアティアの翼を集中して狙ってきた。
ドラゴンの翼の飛膜は他の部位に比べると薄い方だ。
しかし、フロースの水の矢は貫くこともできずに濡らすだけで消滅している。
またも俺に当たる矢があったが、服をびしょ濡れにするだけだった。
——昨日といい今日といい、水難でもあるのかねぇ。
フロースが矢を打ち終わったところで合図をする。
〔よし、反撃だ〕
アティアからは返事が無かったが、何をしようとしているのかはわかった。
アティアが翼を大きく羽ばたかせフロースたちに向かって急降下を始めた。
「錬成、竜装」
ぐんぐん近づいていく中俺は、一撃を与えるため竜装シルバードを呼び出す。
いつも思うが、この竜装たちはどこから出てくるのだろうか。 呪語を唱えるだけで手元に現れる。 不思議だ。
後でマグニフィカトに聞いとこ。
気づくとフロースたちはすぐそこだった。
俺は右手でシルバードを構える。 左手は手綱を握っているからどうしても片手になる。
その時、アティアの胸から炎が燃え上がるような音が聞こえた。
ドラゴンの得意技といえば?
そう、火炎放射だ。
アティアの口からところどころ緑の混じった高熱の炎が吐き出される。
しかし、炎が当たる直前ミセリアが後方に大きく飛んだ。
炎が地面を焦がし、慌てて振ったシルバードが虚しくも空を切る。
すぐにフロースの方を見ると、その手に黄の魔法陣があることに気づいた。
赤の魔法陣は炎、青の魔法陣が水なら黄は?
あれは雷の魔法陣だ。
その時、俺はやっとフロースの考えていることがわかった。
〔アティア、避けろ!〕
〔え?〕
すぐにアティアは俺の言っていることの意味を理解し、避けようとするが焦ってバランスを崩す。
急降下をして炎を吐いていた状態からでは無理もないか。
そこに、フロースの手から雷が放たれた。
矢ならまだ避けれたかもしれないが、雷は一瞬で俺たちに当たった。
「ぐああああ!」
「グラアアアァァ!」
俺とアティアが苦悶の叫びをあげる。
水は電気を良く通す。
それは俺たちが授業で習ったことだ。
こんなところで活かしてくるとは。
アティアは翼が痙攣して飛べなくなり、墜落した。
俺は素早く足の止め具を外すと、怪我をしていないか確認する。
〔大丈夫か? 目立った傷は見えないけど、骨とか折れてないか?〕
〔……地面との距離が近かったから……ダメージはそんなに。……でも翼が痺れていて、しばらくは飛べそうにない〕
〔わかった。 まだ、やれそうか?〕
これ以上無理はさせたくないがアティア無しではあの二人に勝てそうもない。
〔多分……ミセリアの注意を引くくらいなら〕
そうだけでもかなり、ありがたい。
俺が、フロースを倒してアティアに加勢すれば良い話だ。
シルバードを構えフロースに目をやる。
フロースもミセリアから降りて竜装ラディウスを構えていた。
「どうよ、クロエ?」
フロースが笑顔で問いかけてくる。
その笑顔は悪魔の微笑みに見えた。
相棒の分までキッチリやってやる。
「——さぁ、反撃の時間だ」
今日は4年に一度の2月29日ですね
4年後にはどうなっているのやら




