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学生竜騎士  作者: 雨後吹雪
一学期
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15/284

弱みを握って

ブックマークありがとうございます!

 俺は校長室の前で立ちすくんでいた。

 なぜかって?

 散々レイン達を重労働させたのに結局見つかりませんでしたなんてことになったらマズイだろ?

 レインは落ち込みそうだし、アティアは絶対殴ってくるだろうし。フロースはしばらく口聞いてくれなさそうだし。

 ミセリア? あいつは多分大丈夫。 明日には忘れてるだろうさ。

 後ろからの視線が痛い。

「早く入って確認してよ」

 フロースがあきらかにイライラしてる。

 仕方ないですねぇ。

 大きく深呼吸してから扉を三回ノックする。

「…………」

 反応がない。 いないのかな?

 もう一度ノックしてみるがやはり、反応がない。

「どうするの?」

 レインにそう聞かれるが、どうしようか。

「とりあえず中の確認だけでもしていこう」

 俺はそーっと扉を開けて中に入る。

「……失礼します」

 後ろを見るとレイン達は廊下で待っているようだ。

 ——一人で確認してきますよ。

 本棚を避けながら奥に行くと、マグニフィカトが猫の姿のままソファで、ぐでーっとしながら寝ているのを見つけた。

 さらにそのソファの横の立派な机でガロウ校長がペンを握ったまま居眠りをしているのも見つけた。

 ——お昼寝ですかねー。 もう六時過ぎだけど。

 ガロウ校長は書類仕事をしてたら、例の呪い? のせいで寝てしまったんだろうな。

 マグニフィカトは朝から寝てんのか?

 いい加減起きろよ。

 俺らは五時起きだってのによ。

 尻尾を思いっきり握ってやる。

 マグニフィカトの尻尾に手を伸ばそうとした時、俺はガロウ校長の腕が、ガクッとなり黒いインクの入った容器に倒れていこうとしているのに気づいた。

 ——マズイ! おそらく大事な書類がっ!

 俺は一瞬の思考を経てガロウ校長の腕に飛びつこうとした。

 あと少し。 もうちょっと。

「せいっ!」

 俺は限界まで腕を伸ばすことでなんとかガロウ校長の腕を掴むことに成功した。

 ——危なかった。

「……ん? おぉ、クロエ君じゃないか。 何やってるの?」

 今の騒音で目が覚めたみたいだ。

「いやー、これはですねー、ちょっと入ってみたらインクの容器が倒れそうだったので」

 手でインクの容器を差しながら頭の後ろをかく。

「それは助かったよ。 この書類は決定戦を見に来るお偉いさんに関係してるものだからインク塗れにでもしたらどうなっていたことか」

「あはははは、それは良かったです」

「そういえば、なんでここにクロエ君が?」

 そうだった、俺はマグニフィカトに用があったんだ。

「ちょっとマグニフィカトと話しても?」

 ガロウ校長は不思議そうな顔をしながらもうなづいてくれた。

 俺はマグニフィカトに手招きをして部屋の隅に移動する。

 〔なんだ、半竜。 我の睡眠も邪魔するとは〕

 〔すまんすまん。 今日はお願いがあって来たんだ〕

 マグニフィカトはゴロゴロの喉から音を鳴らす。

 〔何を言っている? お願いだと?〕

 〔来週決定戦があることは知ってるよね?〕

 〔当たり前であろう〕

 〔そこでだな、俺たちはそこで優勝したいんだよ。 ついでにクズイヌをぶん殴りたい〕

 俺はお願いの内容を説明した。

 〔うーん、クズイムの奴を殴り飛ばすことには賛成だが、優勝となるとなぁ〕

 〔そこをなんとか〕

 顔の前で両手を合わせる。

 〔第一我はガキの教育などに興味は無いのだ〕

 そう言うと思いましたよ。

 〔あんた確か前に森で鳥を捕まえて無かったか?〕

 俺の問いにマグニフィカトがビクッとする。

 〔……そ、それがどうした? まさか誰かに話したんじゃなかろうな?〕

 〔まだ誰にも言って無いけど……まさかあれってダメなことなのか?〕

 俺は一緒にクズイヌをボコしてやろうと説得するためにいったのだが、なんか弱みを握ったみたいだな。

 〔とりあえずガロウ校長に相談しようか〕

 〔う、うーむ〕

 尻尾がしおれている。

 ——これはいけるな。

「ガロウ校長、来週の決定戦までマグニフィカトを借りてもいいですか? 特訓をつけてもらいたいのですが」

 ガロウ校長はニコニコと笑顔を向けてくる。

「マグニがいいなら好きにすると良いよ。 どうなんだいマグニ?」

 〔我は嫌だぞ。 なんでガキのお守りなど第一我は——〕

「実はですねぇ、この前マグニフィカトが森で」

 俺はマグニフィカトの言葉にかぶせるように言った。

 いったん区切ってマグニフィカトをみる。

「なんだい? 何か悪いことでもしてた?」

 ニコニコ笑っているガロウ校長がなんか怖い。

「それがですねぇ、鳥を——」

 〔わかった! わかったから、勘弁してかれ〕

 マグニフィカトはニャーニャー言いながら俺の言葉を遮るとしぶしぶ了承してくれた。

「どうやら決まったみたいだね。 何かするなら第三闘技場を使うといいよ。 あそこはしばらく誰も使わないから」

「ありがとうございます。 明日からよろしくな、マグニ先生?」

 俺はニヤリとマグニフィカトを見る。

 シャーッ! と威嚇されたが気にしないでおこう。


 こうして俺は、マグニフィカトの協力と、練習場所の確保に成功した。

 これで、あいつらに殴られずにすむ。

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