クロエの提案
クロエは頭を抱えていた。
時刻は九時を過ぎ、授業も始まっていたがほとんどを聞き流している。
さっきからクロエの思考を埋め尽くしているのはクラス代表決定戦のことだった。
今回の決定戦は一学期の期末試験も兼ねているとユリア先生から伝えられている。
ここ、カエルム竜騎士学校はそれぞれの学期に二度、試験をおこない成績を決定する。最終的な成績が悪い班は夏休みが無くなり、補習を受けなければならない。
すでにおこなわれた中間試験でのクロエ達八班の成績は最下位。
跡が無いのだ。
〔どうするの、クロエ?〕
同じく頭を抱えていたフロースがクロエの意識に話しかけてくる。
ドラゴンと意識で会話できるように他の生き物とも会話できるのだ。
フロースの席はクロエの右隣だが、今は授業中ということもあり、会話を聞かれたくないという気持ちもあった。
〔どうするっていっても、どうしようもないよな〕
二人は揃ってため息をつく。
〔少なくとも最下位だけは避けないとね〕
〔それはそーだけどさ、なんか……えーっと……クズイヌが言ってたじゃん? 『代表は一班が貰うから』的な事をさ〕
〔言ってたわね。それがどうかしたの? 一班が優秀なのは事実だもの。 クズイヌは例外だけど〕
クロエはフロースの方を向くと、
〔俺たちが代表になろうぜ〕
〔えっ?……ええ!?〕
ガタンと椅子が倒れる。
フロースはあまりのことに机をバシッと叩きながら立ち上がった。
「なにいってるかわか——イタっ!」
大声を出したフロースの額にユリア先生の持っていたチョークがヒットする。
「そこ! 静かにしなさい!」
「す、すみません……」
チョークが当たった部分は赤く腫れている。
いくらチョークといえど竜騎士が手にすれば武器へと変わるのだ。
〔クゥ〜! なにやってんのフロース〕
クロエは意識の中で爆笑していた。
〔なにじゃないわよ! クロエが変なかというからじゃない!なによ、『俺たちが代表になろうぜ』って! 無理に決まってるじゃない!〕
顔は赤くなっているが、意識の中では激怒している。
〔いやね、なんかイライラするんだよねクズイヌ。だからさ、代表決定戦にかこつけてぶん殴ってやろうってわけ。ついでに代表の座も奪う〕
怒られたことでノートを取りながら訳を話すクロエ。
〔それが無理って言ってるのよ! 私たち弱いのよ!? なにか秘策があるっていうの?〕
そう聞かれたクロエはフロースを見て、
〔ある〕
そう告げる。
クロエの目を見たフロースはそこに不思議な安心感を覚えた。
そして、
〔……はぁー、わかったわよ。でも、ミセリア達の意見も聞いてからしか決められないからね?〕
〔わかってるって。 いやーまさか乗り気になるとは思わなかった〕
ペンをクルクルと回しながらボソっと考える。
〔やっぱり、そうだと思った。 でも、私もクズイヌはぶん殴りたかったから良しとするわ〕
〔だよね〜、あいつうざい顔してんのにうざいことしか言わないからな〕
〔それで秘策ってなによ? 返答しだいでは殴るわよ?〕
一拍おいてクロエが答える。
〔——マグニフィカトを探して訓練をつけてもらう〕
自信満々に答えるクロエをフロースは思いっきり殴るのであった。




