何時間戦いますか?
確かにレベル4になったことで魔王の腕を余裕を持って対応出来た文哉であったが、未だ深海の魔王に直接攻撃する事は適わないでいた。
深海の魔王も無数の腕での攻撃は無意味と判断したのか、太く強靭な腕に切り替え、計6本の巨大な鞭のような腕が文哉に襲いかかっていた。
<矛盾再設定 右矛10 左盾15>
攻撃回数が少なくなったものの攻撃速度が上がり、尚且つ一撃で斬り飛ばせなくなったことから文哉も左を盾にすることを余儀なくされていた。
文哉を越えて後ろに回り込もうとする腕も数本ある為、誠司達の為にも攻撃に対する手数も減らし防御に専念せざるを得ないでいた。
盾で受け止めた瞬間右の大剣で切り上げるも傷をつけることは出来るが、斬り飛ばすことは適わないでいた。先ほどの衝撃を撒き散らす攻撃も設定レベルが足りないのか出来ないでいた。変わりに盾は受け止めた瞬間腕を吹き飛ばすことが出来るようにはなっていたが。
攻撃を防げるとはいえ、これでは先ほどとさほど変わっていない。しかし文哉はそのことに焦ったりはしなかった。
「誠司」
「なんだい文哉?」
文哉の動きを察した誠司達は文哉のすぐ後ろまで来ていた。文哉のインカムが仮面によって外れていた為近づいていたのは文哉にとっても都合が良かった。
後ろを見ずとも仮面の力なのか誠司達の位置も不思議と把握出来ていたのだ。どうもこの仮面、情報収集能力があるのか、先ほどから攻撃予測や互いの位置関係、さらには簡易的な地図表示でもされているのか、それぞれの位置関係が把握できるようになっていた。
「は、話す程の余裕があるの文哉?」
絵美は目の前で凄まじい攻防を文哉に震える声で聞くが、それに対し文哉は肩越しに振り返る余裕を持って安心させるように声をかける。
「あぁ問題ない、頭がスッキリしているんだ、目を瞑っても防げると思うよ」
「そ、そうなの?い、いいから!前を向いてよ!」
尚も不安そうな絵美の声を聞いて身体ごと向けようとする文哉の頭を叩いて前を向かせる。それを見た誠司と優子は余裕そうだなこの二人と白い目を向けるのであった。
「で、文哉なんだい?」
「あぁそうだった、今の所こちらが優勢になっているから安心していいぞと言いたかったんだ」
「そうなのかい?」
誠司が見るところ先ほどと状況が変わってないように見えた。深海の魔王の腕は6本になったが、どちらかというと撒き散らされる余波で岩が吹き飛んでるのを見るに、攻撃力という点ではこちらの方が危ないようにみえる。とはいえ、文哉はそれを余裕を持って防いでいるというのも確かな話だ。
とはいえ
「優勢・・・というと何か根拠があるのかい?」
先ほどはこの状況に焦れた文哉が焦った結果ピンチに陥ったのだ。強くなったとはいえ、さっきの今でその発現は所謂死亡フラグというやつではないだろうかと。
「あぁ、今俺がつけている仮面・・・何か相手の・・・HPというのか?ライフバーでもいいけど、そういうのが見えるわけじゃないんだが・・・」
文哉が説明を始める。魔王の攻撃をいなしながら。
「この仮面のおかげでいいのか?もしかしたら俺の能力かもしれんが、ともかく、今の俺は誠司達の位置情報やら魔王の攻撃予測まで出来るようになっている、それに魔王の生命力というのか?」
文哉曰く、魔王の生命の輝きが見えると。それが腕を斬るごとに微々たるものだが弱くなってきていると言う。
そう言う文哉に黙って聞いていた誠司は疑問をぶつける。
「それが事実だとして、文哉の感覚では後何分程この状態を続ければいいと思うんだい?」
「そうだな・・・」
文哉に言われ、自信の観察能力を集中して発揮する文哉。そして文哉はしばらくしてポツリともらす。
「ざっと・・・1週間くらいか?」
「「「おい!?」」」
何を馬鹿なことをいっているんだと3人の総突っ込みが入る。実際に絵美は後ろから文哉の尻に蹴りを入れて誠司に怒られる程だった。
「文哉?1週間かかるというのは冗談だよな?いくら余裕があるとはいえ相手は魔王だぞ?」
人間の三大欲求の内、性欲はなくても生きてはいけるが、睡眠と食事はしなかったら死ぬのだ。1週間も不眠不休無補給で戦えば、魔王はどうかはしらないが、人間である文哉が耐えられる訳がない。
しかしとある一つの考えが誠司の頭を過ぎる。
「もしかして文哉・・・」
「あぁそのまさかだ」
誠司から見える文哉の背中は飛びかかりたくなるくらい逞しく頼もしく見えた。その背中が無言で語っているのが誠司にはわかる。
つまり、文哉は大丈夫なのだ。1週間戦えるのだ。さすがだ文哉と。
「1週間どころか1時間も戦ってたら体力が切れるだろうな」
「「「おい!?」」」
再度の突っ込み今度は誠司と絵美が同時に文哉の頭を叩く。
「あいたた・・・それでだ、どうしようか誠司」
どうしようかと聞かれても、文哉以外には戦闘能力がないこのパーティ、文哉頼みなのだ。それをどうしようと言われても困る誠司である。
ともあれ、どうにかする手段を考えないと壊滅する未来しかない。誠司は必死に自分達の手札で切れる手段を模索する。
―一瞬でもいいから、攻撃に全振り出来れば、一撃で倒せるとは思うんだがな。
防ぐのは無意識でこなせるようになってきた文哉は誠司に期待しつつ防ぎ続けるのであった。
誠司が誠司の頭を叩いていた。(2017/1/15訂正)
「ギャグかな?」




