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歯車の行方

 機構から落ちた歯車は、しかし地面に落ちることはなかった。

 回転しながら落ちる歯車は途中複雑に絡み合った歯車軍の中に落ちる。

 文哉自身とわかる歯車はぶつかりあって弾かれることもなく、斜めに歪な形で機構に収まった。


――ギチ、ギチ


 たかが一つでも歯車が歪な形で繋がったせいか正常とは言い難い音が漏れる。


――キリキリキリ


 されど、機構は止まることなく回り続ける


――カリカリカリ


 不思議なことに機構の回転速度は上がっている。


――ギギギギギギギギ


 ガタガタと不安定ではあるが、それでも力強さは増し、回転は止まらない。







 俯いたままだった顔を文哉は上げる。視界の端にレベル4の文字を捉えたが、それよりも誠司と魔王の方が気になった。


「ふ、文哉?」


 心配というよりは訝しげな目で見てくる誠司の肩に手を置く文哉。


「大丈夫だ、それより下がっていてくれ」

「あ、あぁ」


 改めて深海の魔王と対峙する文哉。身体に受けた傷は致命傷とはいえないが、軽くは無い。至る所から血が出ている。しかし気分は良かった。知らず知らずの内に押さえ込んでいたのだろうか、そんなつもりはなかったが、頭がすっきりしているのが感じられた。


 深海の魔王は動きを止めていたわけではない、確実に殺せるように力を貯めていただけだ。けれど、心なしか起き上がった文哉を見て警戒しているように見える。


<矛盾起動 右矛10 左盾10>


 そんな奇妙な待機時間も文哉が能力を発動させた為に破られた。

 文哉が右に矛、左に盾を出現させる。顔には白い仮面が装着される。矛も盾も仮面もどこか骨を思わせる質感があり、光を反射するような白さではなく、病的な白さ・・・暗い印象を持っていた。


 文哉が能力を発動した直後魔王の口から先ほどの、いや、貯めたことにより先ほどとは比べ物にならない威力で液体が放出される。しかも今度は狙いが正確だった。


<矛盾再設定 右盾10 左盾10>


 文哉はこれに両方を盾にし、両手を合わせることで、後ろの誠司達を守れるように防ぐ。

 先ほどは衝撃の威力だけでも吹っ飛んだのに対し、今度は後ずさることもなく、魔王の攻撃を防ぎ切る。


<矛盾再設定 右矛14 左矛11>


 そのまま、魔王との距離を縮めながら、効き手の右の方を斧に、左手を刀状にし魔王に斬りかかる。

 

 それを見た魔王も先ほどと同じように夥しい量の腕を出現させ、文哉を向かえ撃つ。


 一撃は文哉から、巨大な斧を軽々しく枝を振るうかのように叩きつける、されど重量は見た目同等なのか、掠るだけで腕が千切れ、叩きつけられた地面の余波だけで腕が弾き飛ばされる。

 左手の刀は撃ち漏らした腕を薙ぎ、払い、刺して消し飛ばして行く。刀身自体に何か細工がされているようで、ただ突き刺しただけで、腕が弾け飛んでいく。







「ねぇ、誠司?されって前に見たあの小娘の現象と同じかしら?」


 絵美に言われて、感じていた既視感の正体に思い当たる誠司であった。思い出すのは周囲の子供からこと姉と呼ばれる少女、行き違いから戦闘になり、文哉が追い詰めたものの、突如覚醒したかのように進化した少女に叩きのめされた記憶を。

 複数のグループによる乱戦だったので、戦力差に気づいた誠司達は早々に逃走したが、あの時の少女の様子は――


「小娘は落ち続けてたけど、文哉は何か変なのが見えたわよね?」


 記憶にある少女は、落ち続けていた。最初浮いているのかとも思ったが、そうではなかった。髪が逆立ったわけでも服の動きがあったわけでもないが、浮かんだ少女のことを全員が、落ち続けていると認識したのだ。

 あれが少女の能力ではないことは、何となくだが理解できた。


「つまり絵美は文哉もレベルが上がったと思うのかい?」

「どうなのかしら?矛盾の見た目も大分変わってるし、力も前と全然違うみたいだけど、文哉に聞いて見ないとわからないんじゃない?」


 早合点するのは早いという絵美だが、内心では見学している3人共、気づいていた。文哉はレベル4になったのだと。


「でも、文哉君の感じ見てると、彼は大分前からレベル4だったと思うんだけど」

「・・・そうだね、文哉には悪いけど、彼よりは恐ろしさもおぞましさも感じないね」


 優子が言った懸念に誠司もそうだねと頷く。

 落ちる少女よりも先にレベル4になっていただろう彼・・・今はどれほどの強さになっているのかわからないが、自分と絵美の精神支配を防いだ彼のことを考えると憂鬱になる・・・と同時に喜悦が止まらなくなる。

 本来なら味方に、文哉が騎士なら、彼には将軍になってもらおうかと思っていたが、お守りのせいで御破算になってしまった。

 あの3人の娘がいなかったらまだどうにかなったものを・・・と誠司が考えていると、優子が言った。


「というか、変な現象も幻視もないのに、あの威圧感って達也君は一体なんなの?」


 文哉が進化したからこそわかることもある。

 誠司が今でも固執する如月達也の能力について、彼を手に入れることが当面の目的であり、魔王の核はその手段と語る誠司、悔しそうに顔を歪めるも了承した文哉、無理じゃない?と両断する絵美、何も言わなかったが内心そうなったら嬉しい優子、伊藤グループの目的は達也の入手だった。











「はっくしょん!」

「わわ?たつくんどうしたの?」


 前兆もないくしゃみをする達也に優奈と


「ん、たつ風邪?」


 志乃は心配そうに達也を見上げる。


「いや、いきなりでたな・・・し、志乃?」

「ん、温める」


 案の定風邪と心配した志乃は即効でカイロを取り出し、達也の服を捲り上げ潜り込んでいく。


「あー!志乃ちゃんずるい!私も入る!」

「ん、一人専用」

「な、なにおー!?」


 揉みくちゃにされる達也は諦めたように天を見上げる。その後、気づいた千那や雪、葵が突撃し、最後に冬華が押し潰すまでこの騒動は続いた。


 伊藤グループの目的は達也の身体だった!?

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