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#38 砕けた心



 「『重力操作』」


 「何故貴様がそれを!」



 ジェルナはそう呟くと突然勢いよく膝をつく。

 俺は重力に適応した。

 ジェルナは地面に引き寄せられるかのように跪いた。



 「なかなか、強いなこの固有スキル」



 と、呟きながら、ジンはさらにジェルナに重力をかける。

 ジェルナは足を震わせながらなんとか立ち上がる。



 「忌々しいこの能力……うっ」



 ジンはさらにさらに重力を強めていき、ついに部屋の床が一気に崩れ、そこが更地になった。

 顔を真っ赤にして、ジェルナは一歩も動けず立っている。

 すると、突然ジェルナが飛び出してくる。

 それもそのはず、ジェルナにかけた重力を外したからだ。

 向かってくるジェルナに対し、ジンは自らにかかる重力を軽くして、ヒョイっと飛び上がり、ジェルナが足下に来た時に重力を強くし、ジェルナを踏み潰した。


 何となく使いこなせている気がする。

 

 俺の足はジェルナの頭を捉えている。そしてジェルナは吐き出すように言う。



 「このままでは私の命も危うい、やはり私自ら向かい終わらせてやる! 『魂ノ讃歌』

」



 するとジェルナから発行する火の粉が無数に飛び出し、あまりの眩しさに目を眩ませる。


 光の収まる頃にはジンの足にはジェルナはいなく、遠くへ飛び出した最中だった。


 やってしまった! そこまでして破壊したい国なのか?


 この距離では俺の知るどんな魔法でも届かない。なので、自らの重力を軽くし、屋根を飛び越えるジェルナの跡を追う。



◆◆◆◆



 雑草を揺する、緑の庭で。洗濯物を取り込んでいた。

 もうこれからは使うことのない、今は亡きジェイズの洋服を畳み、意味もなく涙をこぼしていた。

 何やら外は騒がしく、逃げろやらなんやら訴えられている。

 私は娘をおぶりながら、すっかり慣れたように洗濯物を取り出す。

 今はもう逃げる気力すらない。逃げたところで彼が帰ってくることはないから。もういっそ死にたいと思ってしまう。

 彼と愛し合い産んだこの子に申し訳ないと思い、強く抱きしめた。そして娘は今起こっていることが何一つ理解できていないはずなのに私を慰めているように感じた。

 

 突然、家の奥の方で崩れる音が聞こえる。

 何故かはわからないが、きっとわたしたちの家が崩れたのだろう。

 彼との思い出は狙ったように失っていく気がする。

 

 扉を開き中を確認する。

 やはり家が半壊している。


 そしてそこには恐ろしい雰囲気を漂わせる、女が一人立っていた。

 私は感じた、私はコイツに殺されるんだ、何となくそう感じた。

 でも私は何も感じなかった、彼を失い放心状態の私は今は何も怖くはなかった。



 「随分とあっさりとした顔だな」


 「…………」


 「それもそうか、最愛の夫を失ったんだってな。同情するよ」


 

 何故かはわからないが私は心が軽くなっていく気がする。



 「私は貴方の理解者だ。貴方の夫さんを生き返らせて見せましょう」


 

 ジェルナは優しく微笑んだ。

 すると、私は思い上がるほど心臓の鼓動を速めた。



 「……ほんとですか?」


 「ええ、ほんとですよ。ただ実は殺して欲しい相手がいまして。そいつの名は……」



 何となく、混乱の原因はコイツだと分かった。ところどころ破れた衣服、乱れた髪。



 「ジンという青年なのですが」



 女性は台所から包丁を取り出して、私の胸に押し付けた。

 ジンという青年は知っている。今朝私に会いにきた青年だ。


 彼は確か……ジェイズの死んだ理由は自分だと話していなかったっけ……。


 そう思うと身体の奥底から怒りと憎しみが飛び出してきた。














はばたいーたあらー

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