#39 似ている
すると突然、ジェルナが地面に叩き潰される。
私はハッとした。この空間、重力を操る力、これはまさかあの勇者アサキのものなのではないかと。
私の憧れでもある勇者アサキ、そんな人がいると思うと心がやんわりと軽くなる。
そしてジェルナは「期待していますよ」と一言私にかけて、飛び去って行った。
彼の憧れ、そして私の憧れである勇者アサキ、そんな人の顔を一度は拝んでおきたいと、小さい頃からのもう一つの夢でもあった。きっと優しくて、勇敢で真っ直ぐな目をしているんだろう。
そんな心の中に浮かぶアサキの姿に辛い想いと共に寄りかかる。
「大丈夫ですか?」
外からそんな言葉が聞こえてきて、そいつが顔を出した。
私は咄嗟にナイフと殺意を背後にしまった。
その人物の顔は想像通り、優しそうで勇敢そうであった。しかしただ一つ言い切れるのは間違いなく勇者アサキではないと言う事。
そう、その人物はジンという男だった。
「は、はい」
「そっかよかったです」
彼はなんの警戒もせず、私に背中を向けた。
……今ならやれる。
溢れる殺意とそれを抑えようとするまた別の意思が喧嘩になる。
よく見れば、彼は全身に傷をつくっている。それはもちろん出来立てのもあったが中には古傷が混ざっている。
あの時、血が上っていて、冷静な判断をする事はできなかったが、この人も苦労して生きてきているようだ。
よく考えて見れば真偽も定かではない戯言を鵜呑みにしていた自分がバカに思えた。
明らかに目の前の青年は正義でジェルナは悪だ。
ジェイズは人を1人でも助けたいと、言っていた。
それなのに私はそのジェイズの守った命を失おうとしていた。
私ってバカだ。
ぐさっ。という音がなり調理用ナイフは胸を貫いた。
青年は青ざめた顔でこちらに振り向く、残念ながら青年の胸にはナイフが刺さっていない。
私の胸から血がドロドロ流れ、痛みより気持ち悪さが勝ってしまう。
そして地面に倒れる。
涙を溢す。
すぐに行くよ。
しかし私の目にはジェイズは天にいるようには見えない、すぐ目の前の青年はジェイズによく似ていた。
「絶対に死なせない」
青年の必死めいた言葉が聞こえてくる。
私は精気を失った声で返答する。
「も……もう……いいん……です」
青年はそんな言葉に聞く耳を持たず、流れ出る血を抑える。
やっぱり似ている。
「『ヒーリング』っ!」
俺は未修得である回復魔法を一か八かで口ずさんだ。
すると、女性の傷と共に俺の傷も治っていく。
女性は不思議そうなかおを浮かべた。
「じゃあ俺は急いでいるんで」
女性をポカンとさせたまま、ナイフを遠くに投げ捨てた。
「似ている」
水も滴るいいおとこ。風邪をひく




