#27 やる気のない引き籠りは一生出れない
ジンは足を止め、老人に振り向く。
「ジィさん、なぜ俺を勇者だって知ってる?」
「ほほほ、何でじゃろうな」
俺はこのジィさんを知らない、今までに会ったことも見たこともない。俺は今までに自分は勇者だと話したことはない。そもそも話すほどこの世界に来てから人間と会っていない。俺が勇者だと知っているのはミリエルとミミィだけだ。しかし、俺はミリエルに話したわけではなくて、ミリエルが勝手に見抜いただけだ。
「お前の店はこれか?」
「そうじゃ」
老人の背後には植物の蔓で覆われた、小汚い、いかにも怪しい店がある。
ミミィに「ここに行こう」と告げ店のドアノブに手を掛ける。
キュイィと不気味な音を立てながらドアが開いた。
ドアの先の店内では薄暗く寒気がする。
売り物には見慣れないツボや何かの牙などが置かれており、怪しげな骨董品屋って感じだ。
そして何よりも店の大きさだった、入り口から見た時よりも一回りも二回りも大きく感じ、奥行きがしっかりしている。
「なんだが、広くないか?」
思わずジンの口から疑問が飛び出す。
「おっほほ、気づきましたかね? これは仮想領域と言いましてね、言ってしまえばここはワシの想像する世界なのじゃ。が、もちろん売り物は本物じゃよ?」
「そうか……」
ジンは老人を警戒をしつつ、商品を見てみる。
すると老人があるものを手に取り親しげにジンに話しかけた。
ミミィはそんなのには見向きもせず興味津々で店中を探索している。
「これなんてどうじゃ? 封魔石と言うもんでな、持ち主の一存で生き物を封印したり封印を解いたりできるのじゃ。だから例えば……封印!」
老人は石をアカネに当ててそう言った。
するとアカネはなすすべなく石に吸い込まれて行ってしまった。
「ちょっ、お前なにしてんだよ!」
「大丈夫じゃよ、この程度であれば数秒もすれば……」
アカネが碧い光沢を放つ封魔石から飛び出した。
「ほら、この封魔石は出たいという意思さえあれば誰でも抜け出せるのじゃ、ただしグレードが高いものになってくると抜け出すのが困難になってくる、まあ封印主が解除と唱えればそれで解決なのじゃがな」
「どうだ、この石を買って見ないかい?」
出たいという意思があれば抜け出せる、裏を返せばそれは出たいという意思さえなければそこに留まっていられるということ。
つまりアカネがデカくなり置き場所に困ったときそこにしまっておけるということだ。
「じゃあ2つくれ、予備に一つで」
「金貨2枚じゃ」
金貨2枚なんてかなり高いなと思いながら、そのくらいの価値はあるかと自分にいい聞かせて老人に手渡した。
「ではさようなら」
扉を開けて名残り惜しそうな顔をするミミィの手を引き外に出た。
ガチャっという音を立ててドアが閉まったのを確認すると、一度店を振り返って見た。
しかしそこに、店はなく更地となっていた。
……何これ、怖いんですけど! あれ、さっきまで店あったよね? あれ、封魔石もちゃんとあるし、あれ、怖いんですけど!
もうすぐ日が落ちそうなのを感じ、慌てて防具屋に入る。
……何となく日が落ちるの早いような。いや、気にしないのが仏だよな。
初めて着る防具は重くて、動き辛かったのでチェストガードだけ購入して装備した。
ちなみにお釣りはめっちゃあった。
部屋があったかくて外に出たくない。




