#26 不気味な老人
「こちらが我が国の誇る商店街ですございます」
「おぉ!!」
そこには異世界感を感じさせる商店街がずらりと立ち並んでおり、そこら中が多種多様な人型の生物たちで栄えていた。
異世界転移系の主人公であればこういうところに転移したかった。と今更実感するのだった。
そして、ミミィとミリエルは俺の後を追うようについてくる。
「八百屋に武器屋に小道具屋。やっと異世界を実感した気がする」
ジンは感嘆の声を漏らした。
野生育ちのミミィも見慣れない世界を見ているように目をキラキラさせ、あちこちを指差す。
「とりあえず八百屋に行ってみないか?」
「うん!」
ミミィの宝石が黄色に光り、尻尾を激しく振った。
一方ミリエルはあまり元気はなくそれどころか、ぐったりとしている。
「ミリエル、調子でも悪いのか?」
「悪くはないのだがのお、この国に張られる神聖結界がワシの身体に毒なのじゃ」
そういえばさっき、ジェルナさんが神聖結界がどうとか、そんなこと言っていた気がする。まあ、何言ってんのか全然わからなかったが。
「並の悪魔ならばすぐにくたばってしまうのだが、これでもワシは上位悪魔。体調が悪くなるだけで済むのじゃよ」
「へぇー」
「興味なさそうじゃな」
「いや、そんなことないよ」
「まあ、そういうことじゃ。ヌシの身体で休ませてもらう」
そういうとミリエルは俺の身体に慣れたようにズルズルと入って行く。
素直に喜べない話だが、すっかりミリエルが鼻に入る痛みに慣れてしまった。鼻の奥で何かが詰まるような違和感を感じつつ、気にせず進む。
すぐ近くにあった彩豊かな野菜や果物が並ぶ八百屋を見つけた。その店の店主は活気よく「安いよ、安いよ」と叫んでいる。
一旦ということで、3人は八百屋の前に立ってみる。
「お! いらっしゃい!」
店主はジンを見るや否や慣れた口調でそう呟いた。
そしてジンは視界に入るカラフルな見慣れない果実をじっくりと見つめる。
しばらくカエルしか食べていなかったので、こういう野菜や果物は喉から手が出るほど食べたい。
ミミィもよだれを垂らし、ボォーとしている。
チュウサはゾンビによって経済はだいぶ打撃を受けていると聞いたがこの品揃えを見るからにしばらくは大丈夫そうだ。
何となく、目の前にあった紫色に表面が渦巻いている果実を取ってみる。
この果実にどこか懐かしさを感じ、頭の中でなんだろうと記憶を辿ってみる。
「お、にいちゃんお目が高いね。それは世にも珍しい果実でな。何でもその実を食ったやつはみな手足が伸び縮みするようになってしまうらしくてな」
このままでは海賊になってしまうという思いを感じ、すぐにもとあった場所に実を戻す。
こんな代償が海に入ると金槌になってしまう実なんていらない(そんなこと言われていない)とにかく美味しくて腹に溜まるものが欲しいのだ。
「すいません、おいしい実が食べたいんですが、なんかありますか?」
「んー。それならねぇ、これなんてどうだ」
店主が手に取ったのは、他の果実とは違い特に派手な色もせず普通の実のような感じ、まさにりんごのような見た目をしたやつだった。
そしてすぐにその果実を思い出した。この果実は過去に食べたことがあり、かなり美味かったのを今でも印象深く残っている。
その時は野生動物の乱入によりしっかりと食べれなかったが、いまここにある。食べない手はないといえる。
「それじゃあ、これ10個ください」
「結構奮発するねぇ。それじゃあ銅貨20枚ね」
この世界のお金の価値基準はよくわからないが、チュウサに渡された黄金の輝きを放ち、中には王と見られる人が彫られている金貨1枚を差し出してみた。
しかし店主は呆気に取られた顔をして、目をぱちくりさせる。
ジンはなんか通貨が違うのか一旦それを自分の方に向け、上下左右確認する。
「金貨なんて初めて見たぜい、そんな平気な顔で金貨を差し出すなんて、さてはにいちゃんどっかの上級貴族のボンボンだな?」
小声で肘でジンを突きながら、そう呟く。
よくわからないが金貨にはとんでもない価値があることだけはわかった。これは一般市民が持っていてはいけないものだと。
「ただ、それじゃあ料金が高すぎてお釣りが払えねぇや」
店主は残念そうな顔をして、ジンも落胆してしまう。
せっかく食べれると思ったのに、お金がありすぎて払えないなんて……。
それと同時にチュウサは物凄い大金持ちなのだということを知った。
「そうですか……」
「果物食べれないの?」
ジンとミミィはあからさまに下を向き肩を落とした。
「まあ、待てよにいちゃん、これは金貨を見せてくれたお礼だ、持ってけ」
店主はとぼとぼとその場を去ろうとするジンの肩を掴み呼び止める。そして木の実の入った紙袋を差し出した。
「「えっ! いいんですか!」」
二人の揃った声に、店主は表情ニコッとさせ返事をした。
ジンにはそれが、微笑む神に映った。
「ありがとうございました!!」
上機嫌になった二人は、一斉に紙袋に手を入れ、赤い果実を齧り次々に平らげて、あっという間になくなってしまった。
二人は満足そうな笑みを浮かべお腹を摩る。
「おーい、そこのお兄さんやい」
長杖に身体を任せ、腰まで蓄えた白髭をもつ、老人がジンに向けて声をかける。
しかし、見るからに怪しいる老人と店があるのでジンは見向きもせず退場しようとした。しかし
「ちょっと、待ってくださいよ、”勇者さん”や」
そう呟く、それは冗談めかしたいいようだったのだが、深く不気味さを感じさせとても冗談で言ったとは思えなかった。
やっふぅぅ!!??




