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Scene12 -4-

 ガンバトラーが接収されてから2ヶ月が経過していた。その間に機械虫の被害はなく、初期の頃に現れていたF級以下の小型機械虫がウロウロするだけ。そのことに慣れてしまった人々は手さえ出さなければ特に害がないのだと理解し、これと言って騒ぐようなことはなく、各国の守備隊が粛々と退治していた。


 そんな本来平穏な日常とは言えない日々を平穏と感じてしまっていたある日、久々にA国領土に機械虫が現れた。現れたのはB級が3体。これはA国軍が機械虫を対処するまでに大きな被害が出る規模の戦力だ。


 「A国のW州に機械虫が出現しました。現在エリア132に向けて進行中。というより何かを追いかけているようです」


 ガーディアンズ基地に機械虫の情報が入ってきた頃、GOT本部研究所に出勤していたアクトにも別の情報が届いていた。


 「長谷川さん!」


 時刻はAM10:10。その情報を受けたアクトは、モーターカーを爆走させて重機技総の長谷川の元にやってきた。


 「おはようございます、天瀬本部課長代理」


 という恒例の挨拶に対するいつものツッコミは入れず、アクトは長谷川の座るデスクを叩く。その行動にビックリして身を引く長谷川にアクトは満面の笑みでこう告げた。


 「ついに返還されることが決定しました!」


 「返還? それって」


 「そうです、ガンバトラーの返還です」


 仕事で疲れ切った表情が見る見る生気を帯びてくる。その目には薄っすらと涙が溢れていた。


 「いつだ、いつ返還されるんだ」


 「今日です、もう準備を進めているって連絡が」


 「本当か?!」


 長谷川は破顔して涙を流した。


 「良かったですね」


 アクトもぶるりと体を震わせ目頭を熱くする。


 「向こうはもう日が暮れる頃だろうに」


 「ですね。理由はわかりませんが、早いにこしたことはないですから、嬉しい限りです」


 長谷川はハンカチで涙をぬぐいながらうんうんと同意した。


 「夕刻には東京のYベースに到着予定ということですから一緒に迎えに行きましょう。それまでに仕事終らせとかなきゃ」


 「そうだな、感動の体面に仕事に後ろ髪を引かれるようじゃ台無しだ」


 そう喜び話すふたりの腰を折るように機械虫警報が鳴り響いた。


 「こんなときに!」


 同時にアクトのブレスにもガーディアンズからの呼び出しが届いた。


 「じゃぁオレは本部に戻ります」


 「わかった」


 アクトは急ぎ足で部屋を飛び出して再びモーターカーを爆走させる。


 少しばかり嫌な予感を感じながらもガンバトラーの返還という快事に心を躍らせ、本部研究所に戻りその地下深くにあるガーディアンズ基地に帰った。


 呼び出しから十一分で作戦司令室に飛び込むと、そこには作戦関係者が揃っていた。


 「遅くなりまし」


 「……下手をすればまたエリア132での戦闘になる」


 入るなり聞こえた『エリア132』という言葉がアクトの胸を締め付けた。なぜならそこは、ガイファルドにとって強敵であるセガロイドとの苦闘があったと共に、そのセガロイドによってガンバトラーが行動不能のダメージを負ったあげくにA国軍に接収されてしまった場所だからだ。


 とは言え、セガロイドには辛勝し、2ヶ月ものあいだ捕らわれの身だったガンバトラーも今日返還される。トラウマというようなことはない。


 現在は出撃準備をしつつ、リアルタイムで現状を確認し、救援に向かうかどうかが話し合われていた。何せA国のエリア132に対する秘匿具合はGOT並み。機械虫が侵攻しなければそこまでとは気づかなかったであろうが、外部からの干渉に対して友軍の助力であろうとも拒絶するほどだ。


 救援に向かったGOTの機動重機ガンバトラーをスパイ容疑で拘束したことからもその一端が伺える。


 数分という短い時間の協議の結果、救援には向かうがエリア132には不干渉とし、あとは臨機応変に対応することになった。臨機応変とはセガロイドが現れた場合を想定してのことである。


 ガイファルドたちは一足先に超速機動揚陸艦イカロスへと乗り込んでおり、発進の準備を済ませ、話をしていた。


 「B級3体なら私たちの出る幕はないかもしれないよ」


 ノエルの言う通り現在の世界軍事同盟の戦力ですべての火力を振るえる地形であれば討伐可能だろう。A国という雄大な国土ならそういった場所は多い。


 「本来ならGOTの機動重機部隊が出ていくのだろうけど、稼働できるのがガードロンだけだから今回は出動を見送ることになった。だから彼らの代わりに私たちが頑張らなければ」


 「一緒に戦えなくてさみしいけど、もうすぐ新しい機動重機が生まれてくるって博士が言ってたよ。楽しみだね」


 ノエルはニコリと笑うのだが、その隣でレオンは仏頂面で黙っている。


 「どうしたんだレオン?」


 セイバーの問いにレオンは苛立いらだちのこもった言葉を返した。


 「機械虫なんざどうでもいい。俺はあのセガロイドともう一度戦いたいんだ。今度こそ俺の手で叩きのめしてやる」


 2度の戦いは敗北と認識しているのだろう。レオンはその悔しさを思い出して機械虫ではなくセガロイドとの再戦を望んでいた。

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