Scene12 -3-
無機質で薄暗い通路に振動と重い金属音が規則的に響いている。その通路は幅と高さが30メートル近くもあり、およそ人のために造られた物ではないと思える。実際その通路の音と振動を発する主は、20メートルに届こうかというダークグレーの巨人である。その者は人類でウォリアーと称されていた。
ウォリアーが向かう先には通路に見合った大扉があり、それはその大きさにそぐわないほどスムーズに開いて巨人を招き入れた。
通路よりもさらに暗い部屋の奥に置かれたぼんやりと光る巨大なケース。そのケースの傍らには同じく20メートルほどの全高の巨人が立っている。それはロングコートの上にマントを纏ったような姿が特徴的な巨人だ。その巨人が部屋に入ってきたウォリアーに声を掛けた。
「(ゴルン、修復が終わったのだね。これでまた勝負が楽しめるじゃない)」
「(確かに奇妙なバドルに受けた損傷の修復は済んだが、劣化したこの体では力が発揮できぬ。ヴィーショッグ、貴殿の体はどうなのだ?)」
ヴィーショッグと呼ばれたマントのセガロイドは腕を広げマント状の外装を持ち上げた。
「(私の居た空間は時間圧縮強度が高かったようで、恐らく200から300年といったところでしょう。貴方ほどの年月の経過がなく大きな不具合はありません。ゴルンはおよそ3000ほど経っているようですから、さすがの我々の体もその年月では劣化は免れませんな)」
2度のガイファルドとの戦闘は、どちらも体の脆さによって痛手を被り退却に至っていた。
「(我らが故郷の完全稼働はいつになるのやら。このざまではこの体の修復もままならん)」
「(愚痴が多いなゴルン。ワタクシに比べればまだ良い方ですよ)」
そう話すのはゴルンでもヴィーショッグでもない別の者だった。暗がりで良く見えないが透明なケースの中にある物が喋っている。
「(確かに。グゥイン、貴方に比べればな)」
ケースの中の物体は2体のセガロイドに比べてかなり小さい。表面は歪んでおり、外部から大きな衝撃や高熱を受けたような状態だ。
「(口惜しい。オルガマーダの卑劣な罠によってこの体はもはや動かん)」
それは胸像のように頭部と胸部だけとなったセガロイドだった。ケースの裏側には多数のケーブルが繋がれ、それによって会話ができる状態に保たれているだけの残骸と言っているありさまだ。
「(ゴルンとヴィーショッグを助け出すために大量のビストールを失ってしまった。ここの動力炉を始動させるために莫大なエネルギーが必要なのだ)」
「(あの者の力を借りるのか?)」
怪訝な感情を含んだ言葉で問うゴルン。
「(あの者は言った。我らを利用させてもらうと。あの者の目的はわからぬが、我々の復活もその目的のひとつだという。ならばそれまでは利用されてやろうぞ)」
今ひとつ納得いかないゴルンにヴィーショッグは言った。
「(でも彼のおかげでわたしらは復活できたのだし、今も仲間のために動いてくれていることは確かです。信用せずともこちらに利があることならばやってもらった方がお得ですから)」
軽いノリで言うヴィーショッグの言葉にもゴルンは納得することはできなかった。
「(ともかくこれからも引き続きエネルギーの収集です。1体でも多くビストールを放ちましょう)」
「(俺はこの時代のオルガマーダについて学ぶことにする。その間にこの体の復元強化プランを立てる)」
ゴルンはそう告げてこの部屋をあとにした。
「(そうですね。敵を知ることは大事です。あの頃の我らはそれを怠り、オルガマーダはそれに力を注いでいました。二度同じ失敗はしません)」
静かな声だがその言葉には憎しみや悔しさの感情を含んでいる。
太古の昔に起こったセガロイドと人間の争い。その結末はセガロイドが封印されたことで終結を迎えたのだった。
「(我らの復讐はこの時代のオルガマーダどもで晴らさせてもらおう。恩を仇で返した奴らに恐怖を与えて、その上で再び我々が奴らを管理する世界を創る)」
「(それにはやはりバドルが障害となりますね。確認したのは3体。ゴルンはその3体ともギソーン(第二位)だと言ってます。その割には3体でようやくゴルンと渡り合える強さだっていうので、この時代のオルガマーダではバドルを上手く使えないのかもしれません)」
「それでも我々だけでは少々戦力不足だ。ビストールが検知した場所を順々に解放していくしかない。さて、いったどれだけのレグナが無事でいるのか)」
「(次に向かう場所はどこなのだ?)」
グゥインの問いにヴィーショッグは即答した。
「(この小さな島国だよ)」
見上げた空間に映し出された立体映像をビーショッグは指さす。
その小さな島国とはガイファルドたちの居る日本だった。




