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Scene11 -3-

  勢いでエマの部屋にやって来てそのまま招き入れられたアクトは、着崩れたタンクトップ姿の彼女を直視できずに彼は目を泳がせていた。


  彼女は身長150センチ程度と小柄で、茶色掛かった短い髪が似合う女性だ。一般的な美的感性を持った者ならばかなり可愛い容姿と思うだろう。


  そんなエマではあったが額に埋まるダブルハートの力により超人的な運動神経と射撃センスを持つ。


  隊のリーダーの彼女は冷静に状況を判断し、的確な指示を出す能力がある。一見クールそうな印象はあれど偉そうな態度はとらない。負けず嫌いな一面もあり自分より先に場の空気を持っていくルークに対してよくツッコミを入れている。


  ガーディアンズの中でも男女ともに隠れファンが多い少女? 女性?


  そういえば彼女の年齢を知らないことに気が付きアクトは尋ねた。


  「内緒……」


  彼女は視線をそらしてそう言った。


  「ごめん、女性に年齢を訪ねるのは失礼だったか」


  と半笑いで謝ったが二十歳前後の女性に年齢を聞くのはそんなに失礼か? と自問する。


  そんなアクトに今度はエマが質問した。


  「まだ怖い?」


  アクトは直球の質問に言葉を詰まらせてしまう。


  「死ぬような思いをしたんだからそれは当然。本当はそのまま合身できない方が良かったのかもしれない」


  「え?」


  少し憂いを含んだ言葉。


  「でもわたしはまたアクトが合身できるようになって良かったとも思う。せっかく仲間になったのだから」


  「それはどういう……?」


  ドキッとする言い回しではあるが、感情が読めない表情からでは発せられた言葉の真意は図れない。


  「アクトが来てからルークも博士も剛田さんも楽しそう。オペレーターの人たちも一生懸命なのがわかる。ガーディアンズの士気も上がってる。空気が変わった、良い意味で」


  『あぁそういうことね』


  個人的にではなくガーディアンズ的にということのようだ。


  ミュージックも生活音もない静かな部屋での一瞬の間。


  まだまだぎこちないふたりという状況がアクトをソワソワさせていた。さらに見慣れない部屋着姿のエマにドギマギして直視できない。


  「ごめんなさい」


  そんなアクトにエマの突然の謝罪。


  「なんだよ急に。何を謝っているんだ?」


  謝罪の意味がわからずに、もっと慌ててしまっているアクトにエマは説明する。


  「わたしと話すのつまらないだろうと思って」


  「そんなことない。ふたりで話すなんてことあまりないから。つまらないなんてこともないし、エマには戦いでいつもフォローしてもらって感謝してるよ」


  本心ではあったが慌てていたので若干無理やりフォローしたみたいになっていた。


  「わたしは日本語がルークみたいに上手じゃない」


  「エマはハーフ?」


  「ハーフじゃない、クォーター。母が日本人。病気で亡くなってしまったからイギリスで父と暮らしていた。だから日本語はまだまだ苦手。それに……」


  「それに?」


  エマは目を伏してゆっくりと話す。


  「わかってると思うけど、わたしは感情の起伏が小さい。何事に対しても感受性があまり働かない。それには理由があるけど。今は言えない」


  エマがぶっきらぼうな物言いなのは何か理由があるらしい。


  「言いづらいならそれは構わないよ。無理に知りたいとも思わないから。『今は』ってことは『いつか』は言えるかもしれないんだろ? だったらそのときが来たら教えてくれ」


  「ごめんなさい」


  「オレの方こそ寝ているところに押しかけてごめん。どしてるのか気になっただけだから。またこの戦いが終わったらカフェでもな」


  無神経なのかと勘繰ってしまったことへの罪悪感を抱えて、いそいそと部屋を出る。


  「まだ時間はあるからアクトも休んだ方がいい。横になるだけでも少しは休まるはず」


  「ありがとう、そうするよ」


  小さく手を振るエマにアクトも応えて自室に戻った。


  部屋に戻ったアクトは言われた通りベッドに横になる。そして改めて考えた。


  『エマは無神経とか無関心とかそういった人じゃない。気遣いもあるし怒ったりもする。慣れない日本語で表現が下手なのと、けっこうな神経の太さを持っているんだ。それと、今は言えないっていうあれだな。過去に何かあったことで……』


  「トラウマか」


  アクトが一時期合身不能になったのと同じで、精神面に傷を負っているのだろう。そんな彼女を心配するフリををして、彼女に会いにいったことをアクトは後悔していた。


  そう、アクトは自分よりも弱っている人を見て安心したかったのだ。


  もしエマがセガロイドとの戦闘に不安を感じていたのなら、それに共感して励まして自分がしっかりしなければという暗示かけることが目的だった。


  結果的に戦いとは関係ないエマの人間らしい悩みと女性らしさが気になってしまい、戦いの不安さを忘れてしまった。そのおかげでいつの間にか眠ってしまうのだった。

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