Scene11 -2-
A国のエリア132に進行する機械虫群の討伐に向かうガーディアンズは、超速機動揚陸艦イカロスの中でミーティングをおこなっていた。
「今までならアクトはセイバーと待機してろと言っただろうけど、もし奴が現れたら持てるすべてをぶつけなけりゃならない」
普段と違い真剣に話すルークを見て、みんなは更に気を引き締めた。
「例えA国に砲撃されても機械虫は殲滅する。わたしたちは人類の味方」
先にリーダーっぽいことを言われてしまったので、真のリーダーも負けじと気合を入れる発言をする。
セイバーのプログラムインストールによるシステムアップはあと数時間かかる予定だ。なので、戦地に到着してもすぐには戦闘に参加できない。
今のところセガロイドが現れたという情報はない。
もし出現したのならガイファルド三体で相手にするのが最善だが、あわよくば今回は現れないで欲しいとすべての隊員が思っていた。
しかし、それを口に出す者はひとりもいなかった。
そんなことを口にすると俗にいう”フラグ”が立ってしまう気がしたからである。
ミーティングを終えた共命者の三人はそれぞれの待機ルームに入って高ぶった感情をそれぞれの方法でコントロールする。
今までは勝つことが当たり前であり、街や施設の被害をどれだけ抑えられるかといった戦いだったのだが今度は違う。負けるかもしれない、負けたら死ぬかもしれないという相手に対してどう勝つかという問題だ。
あの日以来、常にギリギリのラインで恐怖という感情と共存してるアクト。
ルークとエマのメンタルは自分よりも強いだろうとは思っていたが、実際ははどうなのかと気になっていた。
どうしても気になったアクトはエマの様子を見に彼女の部屋に向かったのだった。
ルークは黒い侵入者を装ったパートナル=ロイド三世にも恐れることなく戦いを挑んでいたので、そういう気質なのだということはわかる。だが、エマは元々は考古学者を目指す学生だった。少なくともルークのように戦いに関して何かしらの経験があるわけではない。
普段から感情の振れ幅が小さく読み取れないが、もしアクトの思う通りならば、今受けているプレッシャーは相当なモノじゃないのかと心配していた。
そう考えると居ても立ってもいられなくなり、部屋を出てエマの部屋の前にやってきていた。
その勢いのままに部屋の呼び鈴を鳴らすのだが、押した直後に自分が女性の部屋にやってきたという事実に気が付く。
彼にはそういう経験はあまりなく、ましてや家ではなく部屋ということがよりアクトを緊張させた。
呼び鈴を押してから10秒が経過したが反応が無い。きっとエマは部屋には居ないのだろうと考える。
自分にしては割と大胆と思える行動に後悔していたので、部屋に居ないことを幸いにこの行動はなかったことにして扉に背を向ける。
仲間を心配するのは当然のことだが、自分のことですらおぼつかない身であるアクトが、ガーディアンズのリーダーを心配するなどおこがましい。アクトはわかっていた。この行動の本当の意味を。
テンションが下がり恥ずかしさと後悔の波が襲ってきたそのとき、アクトの背後で静かに扉が開きアクトを呼び止めた。
「どうした、アクト?」
ギクリとしつつ振り向くと、そこには隊員服を脱いで薄着をした少し眠たげな眼のエマがいた。
寝ていたのだ。アクトが悩み苦しみ数時間後に戦いを控えたこのときに。これは楽観……ではなく無神経なのだろうかとそういった意味での驚き顔のアクトに、エマは不思議そうな表情で返す。
「もうすぐ戦いだろ。またあいつが出てきたらって思たら落ち着かなくて。そしたらエマがどうしているか気になってさ」
アクトは思わず本心を正直に話してしまった。
「ありがとう、わたしのことを気にしてくれて」
いつもと変わらず無表情っぽいのだが口元が平時より五パーセントくらいほころんだようにアクトは感じた。
そんな風に考えていた彼を、エマは出入口の横に体を移動させて言った。
「入って」
促されるままにエマの部屋へと足を踏み入れ、差し出された椅子にアクトが座る。
部屋はアクトと同じ作りのワンルーム。戦地に向かうまでの待機室と考えれば十分過ぎる部屋だ。
エマはアクトの目の前のベッドの端にちょこんと座った。
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