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Scene4 -5-

  「広い」


  テストグラウンドを見たアクトの感想はその一言に尽きるものだった。20メートルに迫ろうかというセイバーにして、その広さに感嘆の声を上げるほどに、その場所はあまりに広かった。


  「幅は1キロメートル、奥行き1・3キロメートルで高さ120メートルの広さがある。ここでガイファルドたちの訓練や兵装の試験をおこなっているんだ」


  壁に囲われた何もない空間を天井に敷き詰められた照明が昼間のように照らしていた。


  「早速テストを始めよう。メニューを消化していくうちにセイバーとの合身も馴染んでいくことだろう」


  「了解です。で、最初は何ですか?」


  「まずは走力テストだ」


  「走力……ですか?」


  学生の体力テストみたいで拍子抜けしたアクト。


  「格闘や射撃なんかのテストをすると思ったかね。まぁそれは後々やる予定だけど、まずは基礎能力だよ。そこの赤く光るラインから向こうにある赤いラインまでだ。距離は一キロ。人間にしたら100メートル走と同じだ」


  「よーし、やってやる!」


  気合を入れなおしてラインの前で構える。生身での百メートル走のタイムは学生のときに13・02秒とそこそこの速さだ。


  「よーい、スタート!」


  博士の号令と同時に鋼鉄の床を蹴り飛ばして全力で走りだすセイバー。「うおぉぉぉぉ」という掛け声の末に出したタイムは……、


  「19・01秒、ですか?」


  思っていたよりも遅いのタイムだった。


  「参考までにレオンは18・04秒でノエルは17・97だ」


  セイバーより速いとは言え、ふたりのタイムもセイバーとそう変わらない。100メートルでこのタイムは人間にしためっぽう遅い。


  「もっとめちゃめちゃ早いのかと思ったのになぁ」


  「人間の体積の1000倍、100トンを超えるほどの重量の巨人の走力が時速200キロに迫る速さだぞ。防衛機動重機たちは100キロも出ないことを考えればとてつもない速さだと思わないか?」


  「時速200キロに近いって確かに早いけど、人間で言う100メートルのタイムにしたらなんかちょっと期待外れで」


  「巨大な物は動きが遅い。知ってるだろ? あとは自分の頑張り次第だ。では次は垂直跳び」


  両足を踏ん張り2回、3回と屈伸したセイバーは掛け声を発して跳び上がった。


  ズシーン


  着地と同時に振り返り博士を見る。


  「どうだ?!」


  「これはすごい、9・8メートルだぞ」


  「それって人間い換算したらだいたい98センチメートルってことか」


  自身の垂直跳びが70センチほどと考えるとこの記録は喜ぶべきなのだが、アニメのヒーローたちが人間サイズで10メートルも飛び上がることと比べるとこれも普通に感じてしまう。


  「セイバースゲーな、俺たちなんて8メートルくらいだったんだぜ」


  レオンやノエルよりも良い結果だったのにもかかわらず、いまいち納得のいかないアクト。


  「ついでだからレオンとノエルも一緒に測定をしちゃおう。前回から3ヶ月でどのくらい能力がアップしたか見てみよう」


  博士の提案を受けてルークはすくっと立ち上がり、その横でエマはゆっくりと立ち上がる。見下ろすルークと見上げるエマの視線はぶつかりバチバチと火花を散らしいるように見えた。


  「いくぜ!」「ノエル!」


  それぞれの気合の入った掛け声を受けて2体の巨人は体を屈ませる。


  レオンとノエルの参加により、セイバーの能力テストは互いの共命体の有能さを比べ合う、ピリピリとした空気を漂わせながら進んでいった。


  その後のテストは走り幅跳び、反復横跳び、鉄球投げ、重量上げ、ブロックの積み上げ、槍や球体の投擲による的当てなどなど続いた。セイバーの記録はレオンとノエルの記録に比べて大きく劣るものではないが、勝るものは垂直ジャンプだけであった。


  結果わかったことは、人間に比べるとガイファルドはスピードよりもパワー型だということ。

  「物理法則から考えてこの巨体で人間に近い動きができるってのは凄いことなんだよ」


  レオンやノエルがセイバーに比べて良い動きをする理由は後日知ることになる。


  「もう14時か、今日はこれくらいにしておいた方がいいだろう。なんせ初の合身だからな」


  「もう終わりですか?」


  少し物足りないアクトだったが早めに切り上げる理由はこのあとすぐにわかった。合身解除してセイバーから降りると。めまいによってフラフラし、立っていられなくなってしまったのだ。立ち上がろうにも体に力が入らない。


  監視室から出てきた博士がアクトに手を差し伸べる。


  「合身している間はわからないだろうが合身中はかなりの消耗がある。慣れてくればもう少しましになるし、戦わなければそんなに消耗しなくなるはずだ」


  「今はもう慣れたけど体力に自信がある俺でも同じような感じだったしな」


  「ソウルリアクターのエネルギーはその名の通りソウル、魂なのかもしれん。だが、この辺りのことは残念ながらまったく解明できていない。いったいどんなシステムなのか、これからも解析を続けていくがね。その協力もよろしく頼むぞ、アクト君」


  博士はいやらしい目でアクトに笑いかけた。


  魂をエネルギーにしていると言われてアクトは背中にゾクリと冷たいモノが走るのを感じた。しかしながら、未知のテクノロジーは魂までも解析してエネルギーへと転換し、ガイファルドと言う意思を持つ巨人をも作ってしまったという信じがたい事実を前に、ロボット好きエンジニアのアクトの心をくすぐったのもまた事実。多少の不安はあるものの、半年も戦っているルークは元気そうにしているのを見れば、現状では露見した大きなリスクはないのだろうと安堵する。


  「よし、今日のテストはここまで、明日も九時から同じ項目のテストをおこなうから今日はゆっくり休んでくれたまえ」


  このあとアクトはルークらと食事をしてから肩の治療を受けると部屋に戻ってベッドに横たわる。このあとは朝までほとんど寝て過ごすほどアクトの消耗は大きなものであった。


  それから3日間は同じようにセイバーの能力テストが行われ、それが終わると朝まで寝るといった日々が続いた。そして、4日目はセイバーだけでテストをおこなったので11時にはテストは終了した。


  「やはり5日目の結果は初日と比べて随分と伸びているな。アクト君とセイバーの同調処理が完了しつつあるのだろう。しかし、記録のバラつきも大きい。垂直跳びは初日が1番良かったな」


 アクトがセイバーの力を安定して発揮するにはまだまだ時間がかかりそうであった。


  「では明日からは模擬戦もおこなっていくので、今日はレオンとノエルの模擬戦を見学してみよう。君らもずっと座りっぱなしじゃ暇だろ?」


  「暇ってほどじゃなけどさ。まぁアクトに数値ではわからないレオンの強さを見せてやろうかな」


  横になってすっかりくつろいでいたルークはひょいっと立ち上がり、膝を抱えて体育座りしていたエマを見下ろした。


  「隊長の威厳をアクトに見せる」


  エマもすくりと立ち上がってルークに顔を突き付ける。


  能力テストのときからかなりライバル視しているとアクトは思ってはいたが、直接対決する模擬戦ともなるとそれが顕著に表れた。


  ルークは壁際に立っていたレオンに向かって走り出す。


  「やるぞレオン!」


  「おう!」


  レオンは片膝を付いてしゃがみ、手をルークに向かって伸ばすと、ルークは飛び上がって手の平に乗りそのまま更に立て膝に向かってジャンプ。


  「合身!」


  叫びながらレオンの膝を踏み台にして1回転し、レオンのソウルリアクターに飛び込んだ。合身が完了して立ち上がるレオンの額のダブルハートが輝く。


  続いてエマがノエルに歩み寄る。


  「ノエル、合身する」


  「了解しましたー!」


  エマの指示に明るく応えたノエルも女性の身体ラインのように膨らんだ胸部を広げ、リアクターの一部を露出させ、差し出した手の指にエマが捕まると立ち上がりながら手を胸部へと持ち上げた。


  「合身」


  抑揚の少ない掛け声を受けて光を放ったリアクターがエマを内部に取り込んでゆく。


 合身を完了させたレオンとノエルは十数歩ほど歩いて博士の居る監視室から離れ、お互い向き直って構えを取った。

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