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Scene4 -4-

  セイバーと名付けたアクトの共命体は、アクトたちがガイファルドたちのハンガーに到着する少し前から体が発光して形態を変えていったという。そのときは丁度名前についての話をルークたちとしていた頃だ。柳生博士によると、


  「強くて明確なイメージによってガイファルドは共命者の思いを反映する。アクト君がセイバーという名前について話したことで、イメージが明確になり、名前と姿の思い入れの強さが彼に伝わったのだろう」


  ということだ。

  セイバーの基本戦闘形態は命名と共に完了した。ちなみにレオンとノエルは一ヶ月近く掛けてようやく今の基本戦闘形態が定着したという。一度合身を成せば共命者の許可によって形態変化プログラムを流すことができるようになるのだが、その合身が上手くいかず彼らは合身訓練をしつつイメージによって形態変化をおこなっていた。成される形態変化に納得のいかない博士と剛田は、自分らの趣味が盛り込まれたデザインを起こし、機能美を追求し、3Dプリンターで立体物にした物をふたりに渡した。それを四六時中眺めていじくり回させて、どうにかレオンとノエルは今の形態となったのだった。


  「ガイファルドはイメージ力や強い思い込みは大切な要素だぞ」


  と博士は語る。

  そういった前例があったので、博士たちはすでに3Dプリンターでセイバーの基本戦闘形態候補の立体物を五体も準備のに、アクトが命名しにハンガーに到着する前に形態変化してしまったため非常に残念がっていた。諦めきれない彼らは全五種類のデザインを見せてお勧めしたが、やはり自分のイメージが一番セイバーにしっくりくるとアクトは丁重にお断りをする。

  合身訓練と同時進行の予定だった基本戦闘形態変化の課題は、訓練初日の開始予定の九時を前にしてあっさりとクリアしてしまったので、残るのは最大の難関である合身訓練だけとなった。


  「セイバー、アクト君を胸部へ誘導してやってくれ」


  セイバーは腰を落として手の平を差し出した。アクトは指に捕まって手の平に乗ると、セイバーはゆっくりと立ち上がる。胸部までの高さは地上から十メートル強。三階建てのビルくらいはあるだろう。その高さにアクトは少々ビクついていた。


  「合身準備の指示して」


  「セイバー、合身準備」


  博士に言われた通り指示をすると、セイバーの胸部が開いて中から赤い大きな石っぽい物が現れた。大半は胸部に埋まっているが恐らく球形だろう。


  「それはガイファルドたちの心臓部、ソールリアクター。そこに共命者が合身することで共命者自体がリアクターの装置の一部となって莫大なエネルギーを生み出す」


  「オレ自身が装置の一部にかぁ……」


  仰々しい事態にアクトは少々尻込みする。自分でデザインしたセイバーは胸部にコックピットがある設定にしていたが、今実在するセイバーは未知のシステムによって生まれた謎の存在だ。


  「緊張するのはわかるけど、最初から上手くいくとは思ってないよ。先輩たちのアドバイスを受けながら色々試行錯誤してやっていこう。できれば二週間以内に合身を成功させたいけど機械虫たちの対処はレオンやノエルがやるから焦る必要はない。なあルーク?」


  「合身てなんかイメージが湧かなかったから俺は二ヶ月近く掛かったんだけどな」


  十メートル下方の床であぐらをかいているルークがアクトに向かって叫んだ。


  「まぁ強くイメージできればなんでもいいさ。戸惑うのは最初の一回だけだ、なぁエマ?」


 ルークの隣で膝を抱えて頭をもたげていたエマが上を見上げた。


  「私が一ヶ月も掛かったことを一瞬でできたんだからきっと平気」


  そう言ってまた頭を膝にもたげた。


  「なんか機嫌悪い?」


  「自分よりあっさりクリアされたから隊長として立場がないって思ってるんだよ。気にすることない」


  『いや、すごい気になるから!』


  「ちなみにエマが合身できるようになった期間は三ヶ月だ」


  「わざわざ言わなくていい」


  声は静かだが不機嫌そうな表情で博士に言い返した。


  『なんか話を聞いたら余計やりづらくなったな』


  そう思いつつもアクトは気を落ち着けてゆっくり手のひらをソールリアクターに置いた。心躍るその胸に空気を取り込んで「合身」と叫ぼうと気合を入れた途端、セイバーのリアクターがファッと光ってアクトがリアクターへと沈んでいく。


  「うおぁぁぁぁぁ」


  驚くアクトを更に大きな驚きをもって眺める一同。口を半開きにして合身していくアクトを見送った。


  「annbiri-baburu」


  「ずるい」


  先輩共命者がそれぞれの感想を述べる中で、ソールリアクターに取り込まれたアクトは、上下のわからない真っ暗な空間に浮かんでいるた。


  『何も見えないし何も聞こえない、それに何も感じない』


  そう考えていると額に小さな波動が感じられ、最初にダブルハートがハマったときと同じようにその波動が全身に広がっていった。すると徐々に視界が広がり地を踏みしめる重量感や空気が肌に触れる感覚が沸き上り、セイバーの体にあるスリット部分に黄色いラインが走り、額のダブルハートがより強く輝くた。


  『体が動く。力がみなぎる。これが合身か』と、アクトは自分の体となったセイバーの手の平を見つめてワキワキと動かした。


  「ヒュー、そのイエローラインが引かれる演出カッコいいな」


  「あぁ、それはセイバーが起動した時の演出だよ。そんなことまで再現されているのか」


 自分が考えたロボット(ではない)が実際に存在して自分が動かしている。その感動にセイバーの顔は喜色があらわになっていた。


  さきほどセイバーの胸部の高さにビクついてたが、セイバーの目線である約十七メートルの高さの眺めには、不思議となんの恐怖も感じることはなかった。


  「どうだい、合身した具合は」


  メガホンで叫ぶ博士が小さく感じる。


  「痛いとか苦しいとかはないです。でもなんか少しボヤっとした変な感じで感覚が薄いんですけど、これって共命度が低いからとかなんですか?」」


  「最初のうちはそんな感じだがすぐ馴染んでくる」


  先輩共命者の言葉をもらい、『なるほど』と思いながら首や肩など軽く動かしたアクトはふと思う。


  「なぁセイバー、おまえはどんな感じなんだ?」


  気になって聞いてみるがセイバーからの応答はない。その代わりに博士が答えた。


  「今、君とセイバーの意識はひとつになっているんだ。君はアクトでありセイバーでもある。元々自分の潜在意識から生まれたんだから違和感なくひとつになっていてその自覚もないだろう」


  「そうなの? でも俺は合身すると血圧が上がったように興奮状態になるんだよな」


  ルークが疑問を口にするとエマが横から冷静に横やりを入れる。


  「合身に関する調査資料ナンバー4に共命者と共命体の意識について記述がある」


  「そうだっけ?」


  ルークの言葉にやれやれという表情を返す。


  「ルーク、もっと共命体に興味を持った方がいいぞ。そうすればもっと強くなれる」


  「すでに十分過ぎるほど強いじゃん。ゴジラにだって負ける気がしないね」


  博士の忠告におどけて返すルークだがアクトも同感だった。防衛機動重機最強のライゼインと比べても、ガイファルドの強さは圧倒的で機械虫に後れを取るとは考え難い。


  「それで、その調査資料にはなんて書いてあったの?」


  合身に関する調査資料の記述内容が気になり話を戻す。


  「潜在意識は活動はしていても自覚されていない部分で、意識の大部分はその潜在意識だと言われている。その潜在意識から形作られたのが共命体の人格である。その大部分から生まれたセイバーは君の脳の普段使っていない部分だとした場合、眠っている能力を解放した君自身でもあると考えられる。だから合身してその意識と再びひとつになったときには、より潜在意識が前面に出た自分となり、超人的な力を発揮することができるというわけだ」


  「つまり、ルークはこんなに飄々としているけど本来は粗雑で好戦的な性格ということ」


  「おい、レオン。お前粗雑で好戦的って言われてるぜ」


  「いや、エマはルークのことを言っているんだよ」


  「ついでに言えば潜在的な部分が有利に働くことで人間の眠っていると言われる能力が使われる。それは合身することで今の自分以上の能力が発揮できるということだが、それを左右するのが共命度だ」


  自分とセイバーの共命度はB1でS3やS2のルークとエマに比べ実戦でどれほどの差が出るのか、アクトにとって気になるところだった。


  「合身による異常は無し。脳波もリアクターも安定しているな。まさか一発で合身できてしまうとは驚きだが嬉しい誤算だ。よし、ではこのまま次の課題といってみようじゃないか」


  タブレット端末を操作して博士はそう言った。


  「次は何ですか?」


  「次は基本能力測定の試験だ、ハンガーの隣に訓練やテストするためのグラウンドがあるからそっちに移動する」


  一同はガイファルド用のハンガーに隣接する分厚い三重のシャッターで隔たれたテストグラウンドに場所を移動した。


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