はじまり
すると、階段を下りていくところで、ふと声をかけられた。
「あれ?國木今帰り?」
振り向くと、そこには祇園寺さんがいた。クラスの人気者だ。見た目は派手でクラスの男子の憧れの的だ。髪は金髪に染めている。人当たりもよく派手な見た目とは裏腹に多くの友達を持っている。朗らかで誰にもいい顔をする。そんなイメージだ。一言で言えば、「姉御」って感じの子だ。使っている一人称も「俺」なわけだし。少し男勝りなところがある子なのだ。
「そうだけど?」
「ふーん。そうなんだ。てっきりもう帰ったのかと思ってた。いや、声かけたけど、特に用事はないんだよね。いや、見かけたから、つい、声をかけちゃった感じよ。じゃね、國木。」
なんか早口だな。なんか変だなと思いつつも
「おう。そうか。じゃあな。祇園寺。」
俺は前を向きながら手を振り階段を下りていく。しかし、一、二段下りたところでまた声をかけられる。
「やっぱ待って國木。」
「何だよ?」
「俺もちょうど帰るところだから、一緒に帰らねえか?」
不思議なことに祇園寺さんは少しもじもじしながら恥ずかしそうに俺にそう告げた。
「しかし、祇園寺さんって俺と帰り道同じ方向だったんだな。知らなかったよ。」
そうなのだ。これまでで一回も見た記憶がない。それはそれで妙な話である。
「でも、俺は國木のことたまに見かけてたけどな。」
「え?そうなの?それなら声をかけてくれればいいのに。」
話しかけづらい雰囲気でもあったのだろうか。自分にはそんな遠慮をしなくてもよいのに。
「いや、いつも遠くから見てたというかなんというか。」
「何だそれ。」
俺は少し笑いながら答える。
しかし、町一番の中心部の方で祇園寺さんと一緒に歩くことになるとは、なんか少し前までの自分だと想像できない。普段からいろんな男子と恋仲なんじゃないか?といううわさが広まるような子だし、それも相手は全部クラスの中心人物のような奴が多かった。顔もいいし、男子との距離感も近い子だ。惹かれる男がいるのも無理はない。事実、顔もいいし、性格もさっぱりしていて、誰でも近づきやすい。「女の子」を意識させずに、いい意味で気疲れしない相手だ。
「そういえば、祇園寺さんって小学校一緒だったよね?」
「そういや、そうだな。」
「あの頃とは変わったよね。」
「そうか?どんな風に?」
「うーん。なんだろ・・・。あの頃は喋ったこともないし、クラスも一緒になったこともないけど、今よりも地味だったかな?」
「えー?それってなんかひどくない?」
「気を悪くしないでよ。でも今よりも活発っじゃなかったでしょ?」
「まあ、確かに。あの頃は少し遠慮してたし。」
「今じゃ、遠慮なんて言葉いらないもんね。祇園寺さん。」
「なんかそれはそれで俺の女子としての気持ちとしてはあまり気持ちのいいものじゃないんだけど?」
「えー?でも、この前、国立の弁当箱か堂々と唐揚げ奪ってたよね?」
「!?」
祇園寺さんは驚いて一方後ろに下がる。いやいや驚きすぎだろ・・・。
「見てたの?」
「見てたよ。あの後の国立の悲しげな顔を見てたら俺はさすがに忘れることはできないかな?」
「うわー最悪。思いがけず見られた思ったらなんかあんあまりいい気分じゃねえな。気をつけよ。変態がこんな近くにいたなんて。」
酷い言われようだ。
「ま。今からじゃそんなの意味ないけどな。見たもんはしゃーない。」
「ひでーな。この鬼。悪魔。ヒキガエル。」
「おい?何気に最後のヒキガエルはひでーな。」
「いやいや、お前ちが見てる方が気分悪いな。」
どうやらヒキガエルよりも俺は見てられないらしい。へこむ。へこむ。
「そりゃ、また理不尽な・・・・。」
ふと、俺は視界に妙なものを見つけた気がした。何かそこにいてはいけない何かがいたような?
「ん?どうした?」
俺の様子に気が付いた祇園寺さんが反応をする。
「いや、ちょっと急用を思い出してね。悪いんだけど先に帰ってくれないかな?学校に戻らないといけなくなっちゃった。」
「ん?俺も一緒に行こうか?」
「いや、一人で行くよ。ちょっと個人的なことだから。」
「そ、そうなのか?わかった。まあ、俺も家近いしな。それじゃあな。」
「うん、また学校で。」
俺は来た道を引き返す。ちょっと気になることがあった。少し長くなるかもしれないし、先に祇園寺さんにはかえってもらったわけだが。
「さてと・・・・。」
どうやら、俺の違和感は正しかったようだ。俺は目標物をじっと見た。




