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はじまり

俺は掃除にしろ、勉強にしろ細部にこだわる。自分はどうも細かいところが気になる人間らしい。母に聞くところによると自分がまだ小さいころからそうだったらしいから、百歳まで生きれば三つ子の魂百までを体現するかもしれない。確かに自分は細部に神は宿ると本気で思っているし細部に関しては手は抜きたくないのだ。それが災いしてか俺は何時間か経った今でも掃除をしているわけだが。自分のことながらご苦労なことだとは思う。しかし、こればっかしはしょうがない。自分はやりたくてやっているのだから。

汚いところが気になっていつの間にか廊下以外のところまでやる始末。例えばトイレ、階段、教室、目につくところはとりあえず手を出していた。

ふと窓の外を見ると、いつの間にか日が暮れそうだ。お天道様ももうお疲れらしい。少し肌寒い。掃除をするにはつらい時間帯だが、まだ終わりではない。あともう少しだ。あと一時間もあれば終わるだろう。


「はい、お疲れさま。ありがとね。國木君。お礼としてこのジュースあげる。」

ちょうど、掃除が終わるころに左京さんが現れた。にしてもタイミングがよろしいな。この時間までいるということは委員長のお仕事でもあったのだろうか?

「おう、ありがとう。」

「今日はもう帰っていいんじゃない?晩飯を食べてないといけないくらいの時間なんだし。」

「そうか。って本当は俺はもうとっくに家に帰ってたはずなんだけど?」

「あはは。」

「いや、左京さん笑ってごまかさないでいいから。かえって印象悪いから。」

「そう?お礼にジュースあげたんだし、笑うくらい許してよ。器が小さいよ?」

「いやいや。というか左京さん帰ってなかったんだね。」

「うん。ちょっと仕事が残ってたし。それになんか頼んだこと以上のことを頑張ってしてくれる男の子がいたから、先に帰るのは悪いかなって。まあ、そんなにしなくてもいいのにって少し呆れたけどね。」

「うっ申し訳ない。待っててくれんだ。ありがと。」

「別にありがたがる必要なんてないよ。私が好きで待ってただけなんだから。だから本当に気にしなくいいから。」

「やさしいんだな。左京は。」

「ん?口説いてるの國木君?」

「ちげーよ。」

「うわっ。すぐ否定しちゃうんだー。それはそれでなんか嫌だな。かわいい女の子に失礼じゃないかな。」

「俺にどうしろっていうんだよ。」

「それもそうだね。あはは。國木君だし。」

「何それどういう意味だよ?」

「あはは。」

左京さんは笑ってごまかす。どうにも食えない子だ。ふてくされるぞ。

「そうだ。私もう帰るから。じゃあね。」

「俺も帰るかな。そんじゃ、また明日。」

俺は教室に掃除道具を返しに行こうとしていたが呼び止められた。

「ああそうだ。言わないと。忘れそうだった。」

俺は立ちどまり、後ろを振り返る。

「ん?何?」

「あなたは任した仕事を放りだすような人じゃないって知ってたから任せたのよ?別に誰でもいいってわけじゃないんだから。」

少し面食らう。少し動揺してしまった。

「そうかい。じゃあね、左京さん。また明日。」

「また、明日。國木君。」

俺はもらったオレンジジュースを開けて飲んでみた。やけに甘く感じた。

教室に戻り時計を確認すると、時計の短い針は一番下をさすところだった。そして、掃除道具を片付け、校舎を後にする頃にはもう日は落ちてしまっていた。

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