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羞恥心の限界に挑まされている  作者: 山口はな
第27章 2年生の夏期休暇

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743.お披露目

前話ラスト少々変更しました。


 それぞれが秘蔵の酒を持ち込んでいたので、どう考えても余興扱いだった気がする。出立が遅れたせいで、これまでにも増してひどい裏技移動となったのである。

  ↓

 それぞれが秘蔵の酒を持ち込んでいるのは、宴と勘違いしているのか。これでは出立が遅れてしまう…。

 これまでにも増して、ひどい裏技移動となる予感に脱力する稜真であった。



そんな訳で、今回は変身のお披露目です。

(……くっ。瑠璃がいてくれたら、もう少しましだっただろうに)


 王都へ旅をしているエドウィン一行は、朝から移動しているだろうから抜けられる訳がない。アリアは何度でも稜真の勇姿を見たがるので、全くストッパーにはならないのだ。




 湖の家に押しかけて来たのはシュリ、シャリウにティヨルを含めたシャリウの妻全員。知らせに回ったシプレとセイレンは言うまでもなく、ソルにセードゥルとイヴェールとチプレもいる。


「わしは猫になったリョウマが見たいのぅ」

「我は狼になったリョウマが見たい!」

「九本も尾がある狐…。精霊獣にもおりませんでしたわ」

「見たいよね~」

「リョウマ様なら、きっとどんな姿になっても可愛いと思う」

「猫…狼…狐…。迷ってしまいます」

「ティヨル様。全部やって貰えば良いのです」

「そうですね!」


 ドラゴンも精霊も人も好き放題言っている。やらされる方はたまったものではない。


 稜真が湖の家に戻ったのを知られただけなら料理でも振る舞って終わりだったのに、どうして変身を見せる事態になったのか。ソルに説得されたからだが、それだけが理由ではなかった。


 そもそも、王都の猫騒動で土の精霊と水の精霊から報告が行き、稜真が猫に姿を変えるのは知られていた。だが、アリアが引き受けた依頼で安倍晴明に意識を変えた事件では、呪物を嫌ってか精霊の姿はなかったし、呪力解放をした時は邪霊だらけだったからこれも知られていなかったはず。


 ならばどこから変身がもれたのか。


「あのねお母さん。お父さん、きれいだったの! ふさふさのしっぽが9本もあって、頭の上にこ~んなおみみがはえてね!」

 シプレに抱っこされたチプレが、興奮冷めやらない様子で語っている。


 チプレが犯人では責められない。


 アリアと頭をごっんこして大泣きしたチプレは、稜真とアリアに──主に稜真になだめられて眠ってしまった。夜にも起きて来なかったので検証時にはいなかったのだが、家はチプレなのだから、中で起こっている出来事は知られている。前に夢を見ている感じだと聞いたことがあった。


 目が覚めたチプレはまだ眠っている稜真を起こさずに、シプレに感動を話に行った。

 愉快犯精霊には時間など関係ない。面白い出来事に目がないシプレとセイレンは、真夜中にチプレの話を聞いて、即座に伝えに回ったのである。


 そんな訳で、稜真は変身をお披露目する羽目になってしまった。


 無難に猫の変身だけで終わらせようとしたが、当然それだけで終わる訳がない。しかも、これだけの人数は家に入らないので外でやっているから、大量の精霊が集まっている。

 いっそ狼に変身したまま逃げてしまおうかとも思ったが、何の解決にもならないので断念する。


 冒頭で稜真が愚痴ったのは、瑠璃ならばドラゴンや精霊でも止めてくれただろうから。アリアでは全く抑止力にならない上に、反対に次をリクエストしてくる始末。

 瑠璃も稜真好きに変わりないが、自分の萌えよりも稜真を優先してくれる。きっと瑠璃がいたならば、変身は減らしてくれたと思うのだ。


 それでも、1番やりたくなかった呪力解放からの変身シーンは乗り越えた。アリアと手を取り合って感激し頬を染めるティヨルはいつもの事だが、他の面々も目を輝かせて見つめていた。


 この世界にはない変身なのだ。

 稜真は、異質な物を見る目を向けられないか不安だったが、誰からもそんな目を向けなかったのでホッとしたところで、「毛並みの素晴らしさを味わうなら巨大狐なんだよ~」とアリアが余計な事をぬかしてくれた。


 そして完全な獣体の巨大九尾の狐になった稜真は、しっぽの重みにため息をもらす。


 変身して伏せた稜真の尾に最初にしがみついたのはアリアで、それを真似ようとしたシャリウとセードゥルに対し、『男にしがみつかれるのはごめんだ』と言ったら、セードゥルが女性化。ついでに幼女化もした。

 見た目はいたいけな幼女を振り払う事も出来ずにいたら、ティヨルとセイレン、おまけにイヴェールまで幼女化してしまった。元々幼女のチプレを加えて、九尾には幼女が鈴なりになっている。

 他の妻達ははしたないと思ったのかアリアのようにしがみついては来ないが、さわりたそうにしている。同じくさわりたそうなソルと妻達にしっぽを伸ばしてやった。


 1人離れているのはシャリウだ。恨めしそうに稜真を見ている。

 恨みの原因は妻が稜真にしがみついているからなのか、それとも自分はしがみつくのを拒否されたからなのか。ちなみに完全狐体では人の言葉は話せないが、ドラゴンと精霊には関係ない。


 前に稜真は竜体のシャリウにもたれた事がある。稜真は借りを返そうと前足でシャリウを引き寄せ、腹にもたれるように移動させた。シャリウは感動の余り泣きだしたので、恨めしい顔の理由は稜真に触れなかったから、の方だったらしい。

 泣いているシャリウが、腹毛で涙を拭かないか心配になる。


「あなたったら」

 妻のティヨルが気づいてくれて、タオルを渡したので安心だ。渡し終えた幼女は、すぐにしっぽに戻ってしまったが。


 ちなみに従魔達は、仲良く稜真の背中に乗って遊んでいる。きさらだけは、伏せている稜真の顔にくっついていた。


 変身はかまいたち以外を全て見せた。

 かまいたちだけは、迅雷が嫉妬するので封印すると決めたからだ。2度とやらないのだから、お披露目しなくても良いだろう。




 ──と。


「リョウマよ」

 ふわり、と飛んで来たイヴェールが稜真の頭上に乗って、耳の所で話をする。


『え? いや…それは…はぁ…』

「私の夫は皆、知識が豊富だぞ?」

『それはそうでしょうけど』


 イヴェールは、知識と経験豊富な人間に知恵を借りる未来があるとしたら、今の内に自分の夫と交流を深めておくべきと言うのだ。しかも夫達は、稜真の様々な事情を知っていると言うではないか。

 いつ知ったのかと思ったら、「──エリー様の上映会だ」と言われて、稜真は思わずずっこけた。そう言えば、人外サイドにも上映会を行ったと後で聞かされていたのだった。


 上映会のショックのせいで、稜真はイヴェールの申し出を受けてしまった。


 申し出とは。

 冬になったらイヴェールの館に招くから、子等に歌ってやってくれ。代わりに夫達が知恵を授けるだろうと言うものだった。

 イヴェールの夫達は、何故か自分の事を子供のように思って可愛がってくれる。信頼できる方々だとは思っているし、人生経験豊富な方々なのも分かっている。滞在を決めてしまったなら、貪欲に知識を吸収しようと稜真は決めた。──決して、珍しい食材と珍しい料理で心が揺れたのではない。




「つ…疲れた…」

「お疲れ様~」


 疲れ果てた稜真に対して、アリアは元気いっぱいである。この2日で何度も変身を見られたのだから、大満足なのだ。顔が緩みきっている。


「ねぇ稜真! あ~んなに何回も変身シーンやったら、実写版晴明様番組が作れそうだよね!」

「恐ろしいことを言うなっ!?」

「あの時の依頼を編集して、オープニングとエンディングつけたら、30分番組になりそうじゃない? と言うか、私の脳内では完成してる!!」

「させるんじゃない!!」

「エリー様なら作りそう」

「だから! 恐ろしいことを言うなと言っているっ!!」


 遊戯の神ならやりかねないのだ。製作したあげく関係者に公開されたら…と考えた稜真は身震いした。





 アリアの言葉を聞いたエリファレットが、乗りに乗って実際に製作。次の担当者上映会で見せようと準備をしている所をエドウィナに見つかった。


「余りにも気の毒でしょう。お止めなさい」

「えー? でもウィナ姉様、僕一生懸命作ったんだよ? 絶対母様、大喜びしてくれるのにぃ」

「………公開するのは神界だけになさい」

「さすが姉様! 分かってるー!」


 神界での上映会は大盛況となった。




前話を変更してお披露目回を入れたのは、しっぽに鈴なりの幼女を書きたくなったからだったりして(^_^;)

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