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第3話「お前が寝た後の話をしてる」

松田が閉じた帳簿に、五郎の手が載った。


「いくら足りない」


「今、確認できた分で四百八十万。まだ、これで決まりじゃないよ」


翔太は、電卓の数字を見つめていた。


昨日までなら、入るはずの金があった。今日になっても、まだ入っていない。


今朝は、データさえ戻れば払えると思っていた。


蓮も、ついさっきまでは、その顔を信じかけていた。


「予備がある」


五郎が言った。


「機材の更新用に取ってある口座。千二百万」


翔太が父を見た。


「それを使ったら、次の機械は」


「買う時期を、考え直す」


五郎は、松田の方へ椅子を寄せた。


「まず、明日払う金を出してくれ」


松田は帳簿を開き直した。挟んであった細長い紙を裏へ返し、脇へ揃える。


蓮は、銀行の明細に残る《保守調整費》を見た。


この金がどこへ行ったかは、まだ分からない。


真野が会社の資料を確認する間にも、五十人分の給料日は来る。


「石渡さんのところも」


松田が言った。


「社員とは別。明日動かすための分も。それから、二人への報酬」


五郎が蓮を見る。


「初動三百万。成功報酬は、別」


蓮は答えた。


寧に靴を軽く押されたが、引っ込めなかった。そこを忘れられると、今度はこっちの飯が止まる。


五郎は支払いの紙へ、自分の名前を書いた。


「両方、入れてくれ」


*


六時の通知が鳴った。


翔太は端末へ手を伸ばした。さっきまで何度も掛かってきていた石渡の名前を、今度は自分から押す。


『どうなった?』


「まだ、再開できません」


その一言を出すまで、少し時間がかかった。


「給料は、会社の予備資金を使うことになりました。安全の確認は残ってるんで、明日、確認できた場所だけ連絡します」


『分かった。五人、今日は帰すよ』


翔太の肩が下がった。


待たせていた人が、ようやく帰れる。


それなのに、明日の仕事はまだ用意できていなかった。


「石渡さんへの支払いも、社長が確認してます。俺が、まとめて大丈夫って言える話じゃなかったです」


『明日は、何時?』


ミン・アンが七時半と書いたメモを見せた。検査の担当者へ確かめる予定だという。


「八時に、俺から。確認が終わってなくても掛けます」


『じゃ、待ってる』


電話が切れた。


翔太はすぐ、八時の通知を入れた。それから椅子へ座り、顔を両手でこすった。


隣で、佐藤も椅子へ座ろうとしていた。


膝が折れ、机の端へ手をつく。


寧が立った。


「佐藤さん、水は?」


「え。あ、飲んで――」


彼は机の後ろに倒れたペットボトルを見た。


底に、少しだけ残っている。


「……昼より、前に」


寧は自分の予備の一本を渡した。


「まず飲んでください。話はそれからです」


佐藤は両手で蓋を開けた。一口飲み、もう一口飲む。


五郎は、その間、何も頼まなかった。


*


夜の連絡先を決めるために、佐藤が移行作業のファイルを出した。


蓮はその角を押さえた。


付箋が三つ、めくれたままになっていた。


試験用の機材。旧システムを止めて確かめる時間。引継ぎと、二人で確認するための人員。


どれも、欲しいと書いただけではなかった。申請した日と、返事が残っている。


保留。来期。現状で対応。


「この返事、社長?」


五郎がうなずいた。


「俺だ」


翔太が、すぐに顔を上げた。


「先に切り替えればいいって言ったのは、俺です。止めずにできるって、父さんに」


「それは聞いた」


蓮は、次の紙をめくった。


安本の字でも、同じことが書いてあった。


このままでは移せない。二人では夜間まで受けられない。


「言ってたんだな。二人とも」


五郎は紙を見ていた。


「仕事が詰まっていた。次の現場が決まれば、まとめてやるつもりだった」


「決まったら、次も詰まるだろ」


返事はなかった。


廊下で、袋を擦る音がした。瀬戸たちが、壊れた作業腕を運び出そうとしている。


裂けた保護膜の下に、切れた人工筋が見えた。


寧は赤い指を、冷却材から離した。蓮の頬も、まだ口を動かすと痛む。


五郎は、報酬の紙へ視線を落とした。


「三百万に、成功報酬まで、か」


払わないとは言っていない。


それでも、その金額に顔をしかめるまでの速さが、蓮には引っかかった。


「壊れてから払う金は、出せるんだな」


五郎が顔を上げる。


「今と、普段は違う」


「この人たちは、普段から言ってた」


蓮は、三枚の申請を五郎の前へ揃えた。


「給料が止まって、現場が止まって、寧の手袋が焼けてからなら分かる?」


寧が蓮を見た。


彼は、五郎から目を離さなかった。


「社長、あんた、怠惰だな」


電話が鳴った。


松田が取り、声を落として廊下へ出た。部屋には、空調の音だけが残った。


五郎の眉の間に、深い線が寄った。


「俺が、手を動かせばよかったか」


「人をつける。予算を出す。止める日を決める」


蓮は机の紙を指した。


「その仕事は、この人たちじゃできない」


佐藤は、空になったペットボトルを両手で持っていた。


「大事なことまで、サボんなよ」


五郎は、しばらく蓮を見ていた。


「それで、安本がやったことも――」


「鍵を渡したのは、あの人だよ」


蓮は答えた。


「それと、社長がこの返事をしたのは、別だ」


五郎は視線を、申請へ戻した。


何度も開かれた紙だった。端の折れを指で伸ばす。


「佐藤。今夜の当番から、決め直す」


佐藤は、ようやくボトルを置いた。


「僕が、手順をまとめます。古い方も、見ながらなら――」


「お前が寝た後の話をしてる」


佐藤の口が、開いたまま止まった。


五郎は、自分の端末を引き寄せた。


「起きていないと回らんのを、変える。今夜、誰が電話を取るか。そこからだ」


端末には、担当者を選ぶ欄が開いていた。


五郎の指が止まる。いつも通りなら、佐藤の名前を入れて、任せた、と言えば済む。


「社長、僕なら――」


「それを、やめるんだ」


五郎は佐藤の名前から指を離した。代わりに、契約している保守会社の番号を探す。


受けてくれるかも、今夜いくら掛かるかも、まだ分からない。


今度は五郎が、電話がつながるのを待つ側になった。


佐藤は手帳へ目を落とした。


ペンを取らなかった。


代わりに、翔太が自分の手帳を開いた。


蓮は椅子の背へ、ゆっくり体を戻した。


*


保守会社への電話は、五郎が掛けた。


朝から連絡していた正規の窓口だった。今夜受けられる仕事と、止めたままにする機械を決める。


佐藤にしか分からない部分は、その場で無理に動かさなかった。


当面の保守と試験機材の予算、翌朝の引継ぎを、五郎が決めた。残る移行と復旧は二日後の見積りで詰める。今夜中に全部やれとは、言わなかった。


翔太は夜間の連絡先を紙へ書いた。


「まず俺が取ります。分からない時は、保守の担当へ。設定は、勝手に変えない」


佐藤がうなずくと、翔太は紙だけを見て、掛け直す番号を探した。


指が止まった。


「……ちょい待ち。俺が迷うところ、佐藤だけ分かってるやつだ」


佐藤は少し笑い、番号の位置を直した。


蓮は受付用のカードを一枚出した。


沼野情報調査事務所。


出かける前には、一枚も減っていなかった。


「俺たちが要る時は、ここ。ただ、夜の当番は今決めた人に」


翔太がカードを受け取った。


「ずっと、見てくれるわけじゃ」


「俺も、寝ないともたないんで」


「ですよね。……佐藤も、俺もか」


寧が頷き、手袋を修理用の袋へしまった。冷えても、縮んだ人工筋の一本は戻らない。測った値の札も、一緒に入れる。


「直すまで、使わない」


蓮の視線に、先回りして答えた。


奥ではミン・アンが、明朝に確かめる図面を揃えていた。端末に街路樹の写真が届くと、短く返事を打つ。戻ってきた顔は、少し柔らかかった。


蓮の端末にも、母から連絡が来た。


『帰り、遅くなる?』


『もう帰る』


返して、まだ開いている機材鞄を見た。


『片づけたら』


一行足した。


帰る前にやることが、ようやく数えられる量になっていた。


*


翌朝の渋谷は、路面が濡れていた。


二階へ上がると、松田が最後の紙を机へ揃えていた。


昨日と同じ電卓。昨日と同じ窓際。


けれど、五十人の名前の横には、会社が確認した印が並んでいる。


「昨日のうちに、合わせたよ。間に合わなかった手当は、あとで精算する日を決めて、本人にも伝えた」


分からなかった時間を、働かなかったことにはしていなかった。


五郎が最後に承認し、松田が送金した。


会社の人が、会社の金を払う。


蓮はその横で、寧と接続の状態を見ていた。


少し待つと、翔太の電話が鳴った。


「はい。……来た? 入りました? よかった、はい!」


切る前に、隣で別の端末も鳴る。


ミン・アンが画面を見た。


「僕のも、来てます」


小さな声だったが、松田は聞き逃さなかった。


「待たせたね。追加の確認、昼までにお願い」


「はい」


送った五十人分は、処理完了になっていた。


翔太は画面を見たまま、鼻の下をこすった。


「……よかった」


最後だけ、声が裏返った。


蓮は窓際へ寄った。昨日削れた机の角には、透明な覆いが掛かっている。


白く立った木の繊維は、まだそのままだった。


隣で袋が開く音がした。


寧が米粉パンをちぎり、半分を口へ入れる。


「朝も食っただろ」


「これは補給」


残りの袋を、蓮へ渡してきた。


「レンのもあるんだよっ」


パンは少し、袋の形に潰れていた。


蓮も一口かじった。ようやく、自分も空腹だったと分かった。


*


八時の通知より先に、石渡へ連絡がついた。


現場ではミン・アンの記録と改訂日を照合し、担当者が検査の確認をしていた。


『南は、まだ。北の搬入口と、確認できた範囲だけ動かす』


石渡の声の向こうで、人を呼ぶ声がした。


昨日は、待て、と何度も言っていた声だった。


「うちからの支払いも、松田さんが送った控えの通りで」


翔太が言う。


『そっちは届いた。次、ずれるなら先に言って』


翔太がうなずくと、石渡の声が少しほどけた。


『今日は、頼もしかったじゃない』


「え。……今の、もう一回言ってもらっていいですか」


翔太は背筋を伸ばした。髪を直そうとした手が、通話に映像がないと気づいて止まる。


『北の搬入口、再開』


「そっちですか!」


『聞こえてるね。じゃあ、動くから』


電話が切れた。


翔太は、端末を握り直した。


「北、再開です」


ミン・アンは南側の欄を、空けたままにした。


朝から来ていた保守会社の担当者は、佐藤の説明を受けた後、一人で連絡の手順をたどっていた。


途中で迷うと、佐藤が教えた。


教えた場所を、担当者が自分の紙へ書く。


蓮は、そのやりとりが終わるのを待った。


「佐藤さんが帰っても、ここまでは回せますか」


「受けられます。先の復旧は、資料をいただいてから」


担当者が答える。


五郎も、止めたままの仕事を確認していた。


佐藤は、担当者が自分でたどった紙を、もう一度見た。自分が脇から指を出さなくても、最後の連絡先まで届いている。


その紙を返し、自分の名前ばかりだった予定表を開いた。


「今日は、僕、何時までですか」


翔太が父を見るより先に、五郎が答えた。


「午前で上がれ。明日の分も、今決める」


佐藤は鞄を手元へ引いた。それから時計を見て、まだ少し早いと気づいたらしい。


鞄は、もう机の下へ戻さなかった。


会社の電話が鳴った。


佐藤の肩が上がる。受話器へ伸びた手より先に、翔太が取った。


「大門です。はい、北側の件ですね」


佐藤は出しかけた手を、鞄の持ち手へ戻した。


電話の声は続いている。会社も止まっていない。


蓮はそれを見届け、机へ置いていたケースを閉めた。


*


初動三百万円と、成功報酬百八万円。


請求書は二枚だった。


受任時に会社が示した被害見込み三千六百万円。その三パーセントが成功報酬だ。止まる工程の損失と復旧外注費から合意した額へ、後から見つかった別出金は足していない。


五郎は、給与の送金と再開、引継ぎを確かめ、松田へ二枚を渡した。


少しして、蓮の端末が震えた。


入金の表示が、二つ。


三百万円。


百八万円。


蓮は椅子の上で、背筋を伸ばした。


寧が横から覗き込む。


「来たんだよっ」


「……ああ、来たなぁ……」


「両方。ね、見た?」


「んー……見てる。今、ちゃんと」


彼女は、蓮より先に笑った。


蓮は金額をもう一度見て、ようやく画面を閉じた。


社員も協力会社も、二人の報酬も。五郎は予備資金の使い道を決め、その通りに払った。


五郎が立ち上がる。


「助かった」


今度は蓮も、すぐには軽口を返さなかった。


「復旧は、まだ残ってます。次の人たちへ渡してあるので」


「分かってる。昨日の予算の話も、聞いた」


松田は、次に払うものをもう並べ始めていた。


蓮は、銀色のキーボードをケースへしまった。


階段の下で、真野に会った。


「帰る?」


「帰ります。……相手は?」


「追っています。安本さんから聞いたことも、別の出金も。それぞれ、調べてる」


蓮の端末には、まだ〈Morrow〉の綴りが残っている。


名乗りは分かった。顔は、遠いままだった。


「記録の確認を頼むかもしれない。連絡するね」


真野が言うと、蓮はうなずいた。


寧の機材鞄へ、手を伸ばす。


寧は少し迷い、重い方を渡してきた。


*


尾崎の店から、昼の仕込みの匂いがした。


勝手口にいた店主が、二人へ手を上げる。


「佐藤から、連絡来たよ」


「何て」


「今日は帰って寝るって。そういう連絡、初めてもらった」


蓮は、持っていた鞄を少し下げた。


「食べてく?」


寧の足が止まった。


同時に、蓮の端末が鳴った。母からだった。


『事務所の前にいる。お昼、ある?』


「……あるらしい」


蓮が画面を見せると、寧は店の中と端末を見比べた。


「じゃあ、そっちが先だね」


尾崎は笑い、また来て、と手を振った。


事務所の階段の下で、朋子が待っていた。


弁当の袋と、赤い付箋の出た校正紙を抱えている。雨の残る手すりから遠ざけたのは、原稿の方だった。


「遅かったわね」


「仕事」


「聞いてる。頬、まだ痛む?」


「んー……ちょっとなぁ……」


母が見ようとするので、蓮は顔を少し逸らした。


寧が横から、昨日手当てしたことを説明した。朋子は彼女の手も見て、二人ともひどくなる前に診てもらってね、と言った。


それから袋を渡す。


「お昼、食べて。あと、箱」


「箱?」


「昨日の。返してもらってない」


朋子は校正紙の間から、小さな紙を抜いた。


弁当箱。


下に、赤字で「今日中」。


「箱まで、督促かぁ……」


「締切は、大事でしょう」


母は、さも当然のように言った。


「……ありがと。箱は、今日返すよ」


朋子は一度だけ、息子の顔を見た。


寧が袋を抱え直す。


「明日のぶんも借りたいから、洗って」


「お前のためか」


「レンのもあるよ」


朋子は校正紙を脇へ挟み直した。


「私は原稿を戻してくる。箱は、あとでね。ちゃんと寝なさいよ」


階段へは上がらず、通りへ歩いていく。


蓮は母の背を見送ってから、事務所の鍵を出した。


寧はもう、袋の中を見ていた。


*


窓際の椅子は、昨日と同じ場所にあった。


蓮は鞄を下ろし、普段使いの無刻印のHHKBを手元へ寄せた。


新しい依頼は、来ていない。


請求先を直した印刷店から、今月は宛先が戻らなかった、と連絡が一件あった。


よかったです、と打って、消す。


結局、了解、とだけ返した。


画面の隅に、小さな通知が出た。


《Ryo/夜間点検レポートの作成を完了》


父が残したサーバーで動くAgentだった。二人が出かけていても、こういう細々した仕事を拾っている。


報告を開くと、点検の結果が短い一覧にまとまっていた。止めておいた処理は、止まったまま。


「助かる」


蓮は一つ、開く予定だった窓を減らした。


後ろで、弁当の蓋が開いた。


「レン、先に食べるよ」


「俺は、洗ってから」


流しには、昨日の箱が三つ重なっていた。袖をまくり、蛇口をひねる。管の奥で一度音がしてから、水が出た。


「四百八万」


寧が、向こうで言った。


「声に出すと減るぞ」


「減らないよ。振込だから」


「これから減る。食費とサーバーで、月二百万くらい。他に家賃。修理も」


「サーバー、よく食べるね」


「お前もな」


「私は、おいしいから食べる分もある」


蓮は箱の角へ、スポンジを押し込んだ。


父を追うために回している処理も、自分で増やした検証用の機械もある。


寧だけの皿に載せるには、重すぎる勘定だった。


「使ってない処理は、もう少し止める」


「私も、手袋が戻ったら冷却を見直す」


寧は箸を置き、赤みの残る手を開いた。それから、部品箱へ目をやる。


「それまでは、端末の台の続き。あれ、作ってる時も楽しいんだよっ」


「もう次のやること、見つけたのかぁ……」


「好きで作ってるんだもん。仕事と一緒にしないで」


「でも、次の分が残るね」


蓮はすすいだ箱を、水切りへ置いた。


三つ。重ねずに並べても、置く場所があった。


「まあな」


窓の外を、配送の小さな車が通った。背中の放熱膜が開き、残った雨粒を振り落とした。


「レンの分、減らしていい?」


「何を」


「唐揚げ」


「駄目」


「半分だけ」


「半分でも減るだろ」


寧が身を寄せてきた。


「じゃ、こっち向いて」


蓮は箸を止めた。寧の顔が近い。


指が頬へ来て、口の端の米粒をつまんだ。傷とは反対側だった。


「取れた。これ、私がもらっていい?」


「……それは、いいけどなぁ……」


蓮は弁当へ目を戻した。耳が少し熱い。寧はもう、自分の唐揚げを二つに割っていた。


「小さくしたら、数は増えるんだよっ」


「俺の、増やしに来てくれぇ……」


蓮は手を拭き、ようやく椅子へ座った。課題の通知が出ている。締切は、今日だった。


少しくらい、ぼうっとしてからでも――。


隣に開いていた友人一覧が、短く揺れた。


名前が上へ詰まる。


一人分。


蓮は手を止めた。


さっきまで、そこにいた。


検索欄に名前を打つ。出てこない。つづりを確かめ、もう一度。


寧の箸が止まった。


「どうしたの」


蓮は、空いた場所を指した。


「……こいつ、消えた」


寧が自分の端末を開く。


彼女の友人一覧にも、もう、その名前はなかった。


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