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6話 冒険者になった

 さすがに98がそのままアレジェリータに入ることはできないだろうな…そう思って少し離れたところで着地した。丘がちょうどよく僕たちを隠してくれていた。

「本当にあっという間だったわね…」

 98の移動速度に、イアさんは驚いていた。

「え~と、どこかに縮小させるボタンが…」

「普通に『縮まって』って声をかければいいんじゃないですか?」

「それで出来るとは思わないけど…縮まって!」

 すると、98はキーホルダーサイズまで縮小した。音声認識でも入ってるの?

「あ、うん、これでなんとかなった」

「これで怪しまれずに済みますね」


「ちょっと待った」

 かなでさん、さっき何て言ってたっけ?『怪しまれずに済む』?

 ばっちりアレジェリータの関所で止められた。怪しまれとるやんけ。まさか本当に指名手配されて…。

「身分証の提示を」

「…身分証?」

「冒険者協会のギルドカードや商業協会のギルドカードだ。所持していない場合は通行料を支払ってもらう」

 僕とかなでさんは困り果てて、最終的にイアさんへ視線を向けた。

 僕らの意図が伝わったようで、イアさんは呆れた様子で茶色のコインを四枚取り出し、門番に支払ってくれた。

「助かったよ、イアさん」

「ありがとうございます」

 門をくぐり抜けた後、僕らはイアさんにお礼を言った。

「せめて冒険者協会か商業協会に所属しておくべきね…ついてきて」


 門から少し歩いたところに噴水が置かれた広場があった。そこから道沿いに進んでいくと冒険者協会が見えた。公民館くらいのサイズだ。

 イアさんは建物の扉を勢いよく開けて、カウンターへ真っ先に向かった。

「新規登録を二人分、お願いね」

「イ、イアさん……今まで何をしていたのですか!?」

 イアさんの顔を見た受付嬢が叫んでいた。

「まあ、色々ね。その時にあの二人に助けてもらったの」

「ど、どうも」

「よろしくお願いします」

「……で、では、書類を用意しますね」

 受付嬢はカウンターの奥へと向かって行った。身分証の件はなんとかなりそうだ。

「それでは、氏名と使用武器を書いてください」

 武器……あれ、僕武器持ってないじゃん。『なし』って書いた方がいいのか…いや、さすがに怒られてしまうよね。

「あの~、武器じゃなくて魔法で戦うんですけど」

「ま、魔法ですか…」

 かなでさんは僕の隣で受付嬢を困らせている。

「…何か問題でもありますか?」

「いえ、滅多に現れないものでして。では、武器は『魔法』と書いておいてください」

「分かりました」

「あの、僕もいいですか?」

 タイミングを見計らって僕も便乗した。

「はい、何でしょう?」

「実は僕、武器持ってないんです」

「……」

 受付嬢は笑顔のまま固まってしまった。そりゃそんな反応されるよね。すみません…。

「ち、ちなみに魔法は」

「才能があるかさえ知りません」

「従魔などは…」

 従魔と言われて思ってしまった。

『98ってさすがに従魔じゃないよね?』

「従魔…なんですかねえ、あれは。見てもらった方が早いかと」

「わ、分かりました」

 冒険者協会の建物から出て、さっき通り過ぎた広場までやってきた。

 僕は小さくなっている98を地面に置いた。

「え~と、元のサイズになって。20,100×2,950×3,690のサイズだからね」

 すると、98は一瞬で元のサイズに戻った。寸法を言わなくてもよかったかも。

 受付嬢や広場にいた人々は驚きのあまり腰を抜かしていた。

「…どうですかね?」

「……」

「あの、大丈夫ですか?」

「……ッ! す、すみません! 従魔というよりも魔道具に近そうなので、武器は『魔道具』と書きましょうか…」

「了解です」

 98には悪いけど、すぐにキーホルダーサイズに縮小してもらった。


 冒険者協会に所属している冒険者たちはランクで分けられている。下から順に『ブロンズ』、『シルバー』、『ゴールド』、『プラチナ』、『レジェンド』の5つである。

 そのランクの基準は『レート』が変動することによって決まる。


  ブロンズ:100ポイント以上150ポイント未満

  シルバー:150ポイント以上250ポイント未満

  ゴールド:250ポイント以上350ポイント未満

  プラチナ:350ポイント以上500ポイント未満

 レジェンド:500ポイント以上


 ちなみに上記は『個人』の場合である。しっかりと『パーティー』のランクやレートも定められている。


  ブロンズ:1,000ポイント以上2,000ポイント未満

  シルバー:2,000ポイント以上3,000ポイント未満

  ゴールド:3,000ポイント以上5,000ポイント未満

  プラチナ:5,000ポイント以上10,000ポイント未満

 レジェンド:10,000ポイント以上

(パーティーに所属しておきながら何もしない、所謂『お荷物』状態の冒険者は3日以内に個人・パーティーの依頼を受けないと追放らしい。…『追放』って怖っ)

 

 さて、レートを上げる方法は主に二つある。


コレクション(採取)> 街を出て素材を取ってくる依頼である。

・個人:1ポイント

・パーティー:50ポイント


ハンチング(狩猟)> 指定された魔物を狩る依頼である。

・個人:5ポイント

・パーティー:250ポイント

 依頼に推奨ランクが記載されているけれど、『そんなの関係ねえ!』と言って無視する冒険者もいるのだとか…おバカだね。

 ちなみに、個人は100ポイント、パーティーは1,000ポイントを下回ると登録が抹消される。つまりは再登録が必要となるのだ。面倒だから下回らないようにしたい。

 さらに、レートは日が変わるたびに個人は1ポイント、パーティーは5ポイント下がっていく。依頼をたくさんこなしたからといって一生サボることはできないのだ。


「翫さん、覚えましたか? 冒険者協会の規約」

「いや~、自分の好きなことって覚えられるんだけどなぁ」

 ボカロ、鉄道、小説の内容…。

「別に気にしなくていいわよ。ちょっと緩いところがあるから」

 イアさんはコレクションの依頼を手に取りながら言った。それでいいのか冒険者協会。

「ほら、これが冒険者になったばかりのあなたたちにピッタリよ」

 内容は『ラフローデリリオ』という花を10輪採取してくる、という依頼だった。花の採取なら簡単だろう。

「じゃあ、これにしようか」

「いよいよ冒険者デビューですか…腕が鳴りますね!」

 かなでさんは自信満々なようだ。

 ところで…もし日本に帰ることができたら、このギルドカードはどうするべきなのか。

「…転生林檎みたいにゴミ箱に捨てられたらいいんだけどなぁ」

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