25話 出発
前にも話したとは思うけど、521系には「運転台選択」スイッチがある。「前」「中」「後」を選択するレバーだ。
今回はEF81に引っ張られる形となるため「中」に設定する。
「ミズハ、準備は?」
流れ弾に当たらないように注意しながらEF81に向かった。
「問題ありません」
「了解。ドア閉めるから」
「ちょ、ちょいと待っとくだせぇ! あの人らどうするんですかい!?」
春風くんが指さした先には、まだ戦闘中のPUPAさんとラナドールさんがいた。
でも僕は全てのドアを閉めた。
「大丈夫。完全に入れなくなったわけじゃないから」
「どこが!」
「ほら、これ」
僕は側面の窓を指さした。実はいくつかの窓は換気で開けられるようになっている。…普段は閉めてるけど。
「あ、なるほど…」
「それで、車内に異常は?」
「なかったぞ。どこも壊れちゃあいないし、この世界のものもない」
「も、もちろん、私たちが持っていた武器も置いてきました…」
代わりにフォールさんと福本さんが答えてくれた。
「了解しました…かなでさん?」
運転室ではかなでさんが計器に食いついていた。
「……何してるの」
「ブレーキに使う空気…若干足りないような」
計器を見つめると、基準にほんの少し届いていなかった。
「ブレーキはEF81側でするから。98はただ引っ張られるだけ」
「…そうでした」
しかし、空気が足りないのか……今まではそんなことなかったのに。
「……吹田行きかな」
『マスター、整いました』
無線でミズハの声が飛んできた。僕は返事を返し、かなでさんたちを一か所に集めた。
「これから動き出しますんで、席からは立たないようにお願いします。あと、はぐれないように手も繋いでおいた方がいいかと」
さて、残るは……。
僕は窓を開けた。そして叫ぶ。
「新世界にじゃあねバイバイ」
フィ————ッ!!
僕の声とEF81の警笛で、ホームにいた全員が振り返った。
真っ先に動いたのはラナドールさんだった。
「ボケっとするでない!」
「っ…そうだね!」
つられてPUPAさんも動き出す。
「待ってください! 私も乗客です!」
ユミカまで駆け出し始めた。アンタはお呼びじゃない…!
「どこへ行こうというのかね?」
「かはっ…」
一坂さんがユミカの背後から締め上げた。背中を見せたらそうなるわな。
その間にも二人は接近してくる。
「……何とか間に合ったのう」
「ギリギリだったね…」
二人が車内に飛び込んだのを確認し、素早く窓を閉めた。それと同時にEF81が加速する。
10キロ、20キロ…EF81はまだ加速をやめない。
「離せぇ!!」
「大人しく離すと思うかね?」
ユミカの絶叫が聞こえても止まらない。
『メタステイサス』
言葉じゃ語りきれないような光が、僕らを包んだ。
揺れる世界線を越え向かえば、そこは僕らのいた世界___




