24話 メタステイサス
僕らにしかできないことといえば、帰る準備くらいだろうか。
しかし、日本に帰るための術はラナドールさんしか使えない。でも今は交戦中。
「帰れないじゃん…」
「マスター、その胸ポケットにある装置は何でしょうか?」
「……あ」
思い出した。一坂さんから転移装置もらってるんだった。
確か、魔素を浴びせろだとか言われてたっけ。
「かなでさーん!」
僕はすぐにかなでさんを呼んだ。
「はーい。お呼びですか?」
「みんなに伝えておいてほしいんだけど、98の車内チェックをお願いしたい。異世界のものがあったら大変だし」
「分かりました…翫さんは?」
「屋根に登る」
「……大丈夫なんですか?」
「私がいますので」
ミズハがいるから大丈夫…だと思いたい。
「あ、それとあと一つ」
「はい?」
「今日だけ、運転室への入室を許可するから。警告灯が点灯したら教えて」
そう言うと、かなでさんの表情が一気に明るくなった。
「分かりました!」
「…マスター、本当に大丈夫なのですか?」
ミズハの反応は至極真っ当なものだった。でも。
「今は猫の手でも借りたい状況だからさ」
「……そうですか」
「さ、ミズハ。屋根登ろう」
こんなに至近距離で水素を貯めているタンクを見たのは初めてかもしれない。いつもは下から見上げることしかできなかったし、98が他の運転士に運転されることもあんまりなかった。
こうやって近くで見ると、けっこう頑丈になっている。…まあ、水素(ここだと魔素)が漏れ出て引火したら大☆爆☆発だからね…。
「マスター、ここからなら…」
ミズハが指さした先に、こぶし大の蓋があった。確かに、転移装置のサイズなら入る。
「……あ~、緊張してきた」
「大丈夫です。魔素に触れれば起動するのでしょう?」
「一坂さん曰くね……じゃあミズハ、お願い」
「分かりました」
ミズハが蓋を開けた。
無臭。そりゃそうだ。水素なんだし。
『メタステイサス、スタンバイ』
転移装置からそんな声がした。メタ……何て?
「おそらく準備が出来たかと」
「…じゃあ戻ろっか」
「すまん!遅れたぁ!」
98よりも奥の階段から声がした。
階段から、拳銃を所持したコウサカさんとレイピアを腰に提げたイアさんが走ってきていた。
「アンタたち大丈夫!?」
「僕らのことはいいから! あの人を止めることに専念してもらえば!」
PUPAさんたちは今も交戦中…というか若干エスカレートしている。もしかしたら押されてるのかもしれない。
「……分かったわ!」
イアさんの視線が値踏みするように向いたが、すぐに状況を理解してくれたらしい。
「ミズハ、降りるよ」
「いよいよ準備ですね」
「EF81側、任せてもいい?」
「了解しました」
さあ、仕上げといこう。
モチベーションが上がらない……。




