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22話 平和は長く続かないもの

 ミズハたちがこっちに来てから三日が経過した。そんな日のこと、僕は一坂さんに呼び出された。

 不思議に思いながら向かうと、一坂さんが小さな緑色の基盤を持って座っていた。この世界の素材で…いや、異世界だからかな?

「…何ですかそれ」

「転移装置だよ」

「……え?」

「転移装置」

 二度目でようやく頭に入ってきた。

「か、帰れるようになる代物ですか?」

「そうとも。まだ試験すら行っていないがね」

 聞きたくなかった、そんな言葉。

 もしかしたら海の底に沈む可能性だってゼロじゃないのかもしれない。

「起動にはそれなりの魔素が必要でね。ちょうど521系のタンクに溜まっているのだろう?」

「は、はい。多分」

「なら早速向かって——」

 バンッ、と扉が開いた。そこにはあの時の初老の執事が立っていた。

「魔王様、見知らぬ少女が単身で乗り込んできました!」

「少女?」

「『私が勇者』だの何だの、まるで狂ったように剣を振っています!」

「…調査資料をまとめる」

 一坂さんが腰を浮かせた。目の奥がギラついている。

「これを持って521系のもとへ向かいたまえ」

「え…」

 唐突に基盤を投げ渡された。近くで見れば見るほど、かなり細かく精巧にできている。

「で、でも」

「早くしなさい」

「…はい。一坂さん、いい歳なんで無理はしないでくださいよ」


 98はトーキョー駅の一番線に置かれていた。既に僕以外の地球出身者(?)が集まっていた。

 …妙なことに、98とEF81が連結されていた。

「え、ちょ、はあっ!?」

「マスター、無事でしたか!」

 即座にEF81からミズハが駆け下りてきた。

「ぼ、僕は大丈夫だけど…」

「今すぐ退避しましょう。あの女狐がすでに向こう側と接続してくれています」

 ミズハの視線を辿ると、100 mくらい先に『ひずみ』があった。転移ゲート的なものだろう。

 …あれ、転移装置の必要ない?

「これこれ、口が悪いぞ」

 僕の背後にラナドールさんが立っていた。いつの間に…いや、今はそれどころじゃない。

「ラナドールさん、今の話は本当なんですか」

「本当じゃ。あとは発車するのみ」


「させるわけないでしょう?」


 その声が聞こえた瞬間、僕の頬を何かが掠めた。

ガンッ!

 振り返ってみれば、背後の壁に剣が突き刺さっていた。先端に少しだけ血がついている。

「いっ…!」

 痛みがして手で押さえると、指先に血が付着していた。間違いなく、今ので頬が切れたんだ。

 じゃあ、どこから? 辺りを見回すと、見覚えのあるセーラー服が視界に入ってきた。

「…あ」

 あの時、狂気を感じ取った——『ユミカ』

「全く、血気盛んだねえ」

「あ、PUPAさん…!」

 またいつの間にか、今度はPUPAさんが真横に立っていた。

「ラナドール、あいつの気配感じるよね」

「ああ、それもかなりヤバいやつじゃな」

 この二人がヤバいと言い切っている。ならあの少女は本気でヤバい。

「あなた、覚えてますよね? 城を電車でぶち抜きましたよね? あれで思ったんですよ!」

『壊したい』

 背筋が凍った。

 どこぞの魔法少女と同じこと言ってらぁ。

「……ラナドール、二人で抑え込むよ」

「分かっとるわい。運転士殿」

「は、はいっ」

「準備ができたら合図を出しとくれ」

「わ、分かりました!」

 共同作戦開始。

 さてと、まずは相手の動きを読むことから始めよう。

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