20話 帰宅志願者
「ここだよ」
一坂さんに案内されたのは、駅の待合室のような場所だった。そんな待合室がビルの二階にあるのはおかしいけどね。その中に入ると人影が二つあった。
「コーローさん、その人は?」
「だ、誰?」
ソファに金髪の青年と、黄色いレインコートを着た少女がいた。…ん?
「紹介しよう。新しい転移者だ」
「えっと…初めまして、翫かなでです」
軽く自己紹介をすると、金髪の青年が立ち上がった。
「俺は『ルーア・フォール』だ。よろしくな」
こうやって近くで見ると、明らかに外国人だ。体格がガッチリとしている。
「えっと、アメリカ国籍で…?」
「そうだ。分かるのか?」
「すいません勘でした」
あてずっぽうでも当たるものなんだな…。
フォールさんの服はラフなもので、襟付きの水色シャツに黒のハーフパンツを着用していた。ゴルファーなのかも?
フォールさんに続いて、レインコートの少女も近づいてきた。
「え、えっと、私は『福本 音葉』です…よろしくお願いします…」
福本さんはもじもじしながら名乗った。人によっては『守護りてぇ…』となるんじゃないかな。
でもこの少女…。
「あの、一ついいかな?」
「は、はい! 何でしょうか…」
「…長岡駅で会ったことある?」
「長岡駅…?」
まだ98やミズハに出会って数時間の頃、窓にべったり張り付いて見ていた気がする。
「多分、春ぐらいのことだと思うんだけど」
「…すみません、ここに来る前の記憶が曖昧で」
「そっか。ごめんね。無理に聞こうとしてた」
分からないのならそれでも別にいい。大したことでもない…だろう。
そんな時、窓の外で何かが反射した気がした。
ガシャンッッ!
思わず目を瞑った。パラパラとガラスが散らばる音がする。
「アンタ、ずっと探したわよ!」
「…イアさん?」
目を開けると、金髪と息を乱したイアさんが僕の肩を掴んでいた。…痛い。
「そうですよ! 何十分も街を駆け巡ってようやく辿り着きました!」
今度は背後の扉が勢いよく開いた。そこにはかなでさんが仁王立ちしていた。
イアさんは一坂さんたちそっちのけで話しかけてきた。
「で、何してたの」
「…人助け」
嘘はついていない。
「何で人助けしただけで、この魔王のところにいるの。寝返り?」
「そうじゃない! 今はここの帰宅志願者の人たちと会っていただけだから!」
僕はフォールさんや福本さんを見た。案の定、二人とも困惑していた。そりゃそうだ。
「嘘なら貫くわよ」
「怖っ…」
すると、一坂さんが僕とイアさんの間に割り込んできた。
「まあ落ち着きたまえ。これでも飲んでリラックスしなさい」
一坂さんの手元にはラムネ瓶があった。中身はサイダー。
と思ったら、イアさんはその手を払いのけた。
「そんな簡単に飲むわけないでしょう? どうせ罠よ」
「フッ、優しさを踏みにじるのかね?」
い、一触即発。『ゴゴゴ…』みたいなオノマトペが見えてきそうだ。
「なんだ、聞き覚えのある声がしたんだが…」
登場人物がまた一人増えた。今度はかなでさんの横に青年が現れた。
「…っ!」
イアさんの目が大きく見開かれた。
「リク…」
「お、やっぱりイアだったか」
『リク』、すなわち『コウサカ リクミチ』さんだ。
Gospel




